[1] 獣医学教育の現状と課題

近年、獣医学を取り巻く環境は大きく変貌している。食の安全確保、人獣共通感染症への対策、小動物を主体とする獣医療サービスの高度化などに対する社会ニーズの増大、公務員として行政に従事する獣医師ならびに産業動物(大動物)獣医師数の減少など、様々な問題が存在する。したがって、これに対応した新しい時代の獣医学教育とは何かが問われている。一方、我が国の獣医学教育と欧米先進国で行われている獣医学教育とを比べると、応用獣医学教育および臨床教育が極めて不十分であること、さらに大学の教育体制が小規模で、スケールメリットに欠けることが指摘され、抜本的な改革をせまれている。
  獣医学教育は、基礎獣医学、病態獣医学、応用獣医学、臨床獣医学の4分野から構成されている。この中で、特に臨床分野さらに公衆衛生学を主体とする応用分野の教育スタッフの数の不足が指摘されている。獣医師の偏在に関しても、この様な獣医学教育内容の教育の質およびアンバランスや教員の絶対数の不足が一因であるとされ、学生に十分な教育がなされていないのではないかと指摘されている。
  これまで、各大学では教育充実のためにそれぞれが独自の創意工夫を重ねてきたが、個別の大学の対応では克服できない状況に追い込まれている。以前から、国公立大学にあっては、機能的な再編・集約という形で教育改革を進めようという運動が行われてきたが成功しなかった。平成20年度に文部科学省に「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」が設置されたのを契機に、議論が再び高まろうとしている。

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