第16回東北緩和医療研究会宮城大会 開催にあたって

 平成24年度の東北緩和医療研究会は16回目となり、東北6県それぞれが持ち回りで開催するようになってから、いよいよ3巡目に入ります。平成9年に本会が設立された当時は緩和医療・緩和ケアという言葉は、がんの終末期に限られた、いわば特殊な状況における医療のあり方を提案するものであったように思われます。そしてその主な舞台はごく普通の病院のがん診療を行う一般病棟と、当時まだ全国でも約40ケ所、東北地方では郡山の坪井病院しか認可されていなかったいわゆる緩和ケア病棟でした。本研究会の揺籃期の開催テーマを振り返ってみると、痛みの治療や麻薬管理に関することが多く、モルヒネと神経ブロックを組み合わせることによる職人的技術に頼らざるを得ない時代で、今思えばがん症状の苦痛緩和に関心を持つ臨床医にとっても中々手を出しにくい分野であったと思われます。

 今世紀に入り症状コントロールのための薬剤が次々に市販されるようになり、在宅医療の可能性も次第に広がるようになりました。さらにがん対策基本法の成立という後押しを得て、緩和医療・緩和ケアの必要性が強調されるようにもなりました。また、がん治療に携わる医師の依頼を受ける形で、医師・看護師・薬剤師がチームを組んで、疾患の早期段階から苦痛を軽減する努力を行うことが拠点病院を中心にして目指されるようになりました。このように緩和医療・ケアの概念はより幅広い層の患者さんとそのご家族をカバーすることが求められており、この流れはこれからも続くと見込まれます。

 そこで本大会では、開催テーマを「さらなる広がりを求めて」とし、「非悪性疾患の緩和ケア」「早期からの緩和ケア」「介護施設における看取り」に関して要望演題を募集することに致しました。その結果多数の応募があり、時間と会場の都合から、査読の上35題の口演を採用させていただきました。特別講演は午後からの時間をすべて使い、著名なおふたりの先生のお話を心ゆくまで拝聴したいと考えました。まずは国立がん研究センター中央病院緩和医療科の的場元弘先生に「がんの痛みの治療と緩和ケアを定着させるために」、そして北海道医療大学の石垣靖子先生には「より自由であることを目指してー緩和ケアにおけるQOLを考えるー」と題してお話し戴く予定です。ランチョンセミナーでは東北大学大学院緩和ケア看護学分野の宮下光令先生が、「看取りのケアを考える」というテーマで最新のエビデンスとクリニカルパスについてご紹介下さいます。

 昨年は東日本大震災に見舞われ、全国から東北地方を気遣っていただくことになりました。大変な状況からもゆっくりと立ち上がり、一歩ずつ復興への歩みを進めていることを、お世話になった方々に感謝の気持ちを込めてお示しする意味でも、この大会を着実に運営したいと考えております。会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

            平成24年10月吉日

                 宮城大会当番世話人 大会長

          東北大学大学院医学系研究科 緩和医療学分野 中保 利通