[ Since 02/27/2011  th;

ライフサイエンスシンポジウム2011 ポスター発表演題一覧

P-1
放線菌Streptomyces atroolivaceusから単離された抗菌物質berninamycin類縁体の単離と構造決定
*1二宮彰紀,1小谷真也
1静岡大・農・応生科

我々の放線菌由来の抗菌物質探索の過程において、S. atroolivaceusからberninamycinの新規類縁体を単離したので報告する。S. atroolivaceus NBRC12741株をISP2寒天培地で培養した。寒天培養菌体をアセトン抽出し、抽出液を減圧濃縮後、ODSカラムを用いたHPLC分取によって活性物質を単離した。その後、NMRおよびMSスペクトルの解析を行い、構造決定を試みた。その結果、既知化合物であるberninamycinAおよびBと共に、berninamycin EおよびFと命名した新規類縁体が得られた。ポジティブモードのESI-MSスペクトルの解析の結果、bernynamycin Eはm/z 1162にFは1148にイオンピークを与え、berninamycin A-Dとは異なる分子量であることが示唆された。さらに詳細な構造解析を行うため、NMRスペクトラムを用いた分析を現在行いその結果を発表する予定である。


P-2
放線菌Streptomyces sp. TM-59株からの新しい抗菌物質の単離と部分構造の決定
*1肥田木道生、1小谷真也
1静岡大・農・応生科

Streptomyces sp.TM-59株において抽出物から抗菌活性が見られたので、抗菌物質の単離と構造決定を目的に行った。TM-59株寒天培養菌体をアセトン抽出し、抽出液を減圧濃縮後、逆相オープンカラムを用い含水メタノールによって溶媒分画した。活性の見られた100%メタノール溶出画分からODSカラムを用いたHPLC分取によって活性物質を単離した。この成分はポジティブイオンモードのESI-MS測定でm/z 2185にイオンピークを与えた。加水分解後のアミノ酸分析の結果Ser、Cys、Val、Leuが1mol、Asp、Ala、Pheが2mol、Glyが4mol検出された。、さらに各種NMRスペクトルを用いて構造解析を進めたところ糖が2mol、インドール環が含まれていることが明らかとなった。重MeOH中においてNMRスペクトルの解析を行い、部分化学構造を決定した。


P-3
真核生物の染色体DNA複製開始におけるSld3-Sld7複合体の役割
*1牧野仁志穂, 2遠藤静子, #2荒木弘之
1総合研究大学院大学・生命科学・遺伝学, 2国立遺伝学研究所・細胞遺伝研究系・微生物遺伝研究部門

真核生物はDNA上に複数の複製開始点をもち、開始点への複製因子構築の機構の多くが明らかにされている。しかし、何が複製開始の引き金になるかは明らかになっていない。そこで私は、複製開始に必要な出芽酵母Sld3と、それに細胞周期を通じて結合するSld7の相互作用に注目した。Sld3は別の複製因子Cdc45とも結合し、複製開始を促進するが、Sld7欠損株ではSld3-Cdc45の結合が強くなり、またDNA複製が遅延する。このことから複合体中のSld3とSld7の比が細胞周期依存的に変化し、それによりDNA複製開始が促進されるのではないかと考え、Sld3-Sld7複合体の構成を調べている。密度勾配遠心法及びゲルろ過によりSld3とSld7は2対2で結合していることが示唆され、実際、CoIPによりSld3同士の結合が確かめられた。今後、Sld3:Sld7の比が細胞周期依存的に変化するかを解析していく。


P-4
α-リポ酸の体内運搬に関与する血液成分の探索:善玉コレステロールの関与
*宮嶋孝太,石井剛志,#中山 勉
静岡県大・食栄

 α-リポ酸(LA)は、ミトコンドリア内でエネルギー産生に関与するクエン酸回路の補酵素として機能する。細胞内で産生されるLAの量は、疲労、ストレス、老化などによって減少するため、その減少量を補うことを目的としてサプリメントが利用されている。腸管より吸収され血中へ移行したLAは、主に肝細胞のミトコンドリアに蓄積することが報告されているが、その運搬メカニズムは解明されていない。本研究ではLAと相互作用しその体内運搬に関与する血中成分を探索し、善玉コレステロールとして知られる高比重リポ蛋白質(HDL)が、LAと親和性の高い血液成分であることを見出した。HDLは、脂溶性ビタミンと相互作用し、体内運搬や肝細胞への取り込みに関与する。疎水性の高いLAも脂溶性ビタミンと同様にHDLに相互作用し、肝細胞へ運搬されると考えられる。小腸や血中のHDL量は、LAの体内動態や生体利用効率に影響する可能性がある。


P-5
分裂酵母におけるAPCの基質認識機構の解明
*松永あや乃、日原大輔、#山本歩
静岡大、理、化学

減数分裂ではDNA複製後に2回の染色体分配が起こる。この分配はAnaphase Promoting Complex(APC)によって制御されており、APCの活性および基質特異性はAPC活性化因子によって制御されている。分裂酵母にはSlp1、Ste9、Fzr1という複数のAPC活性化因子が存在するが、その機能の違いの詳細は不明である。そこで本研究では減数分裂の染色体分配機構の解明をめざし、これらAPC活性化因子の基質認識機構を解析した。APC活性化因子とAPCの基質であるCut2およびMes1との結合を酵母-2-ハイブリッドアッセイ法を用いて解析したところ、APC活性化因子はD-boxやKEN-boxと呼ばれる共通配列を介して基質と結合すること、またその共通配列の結合への関与は活性化因子ごとに異なるだけでなく、基質ごとにも異なることが示唆された。


P-6
リファンピシン耐性変異とストレプトマイシン耐性変異の活用による抗生物質非生産性放線菌の潜在能力開発
1吉田龍右, *1田川遼, 1千菊夫, 2越智幸三, #3保坂毅
1信州大・農, 2広工大・情報, 3信州大・若手拠点

【目的】放線菌に特定のリファンピシン耐性(rif )変異あるいはストレプトマイシン耐性(str )変異を付与すると, 潜在的な抗生物質生産力が活性化されることが実証されている. 本研究では, この原理を活用して, 通常の培養では抗生物質を生産しないと判定された放線菌を抗生物質生産菌へと改変できるか否かを検証した.【結果】国内各地の土壌より分離した 249 菌株の放線菌から 16 菌株の抗生物質非生産性放線菌を選抜した. これらのうち 8 菌株を用いて潜在的な抗生物質生産力の活性化実験を行ったところ, 実に 5 割もの菌株を抗生物質生産菌へと改変することに成功した. 興味深いことに, rif 変異により活性化菌株が極めて高い頻度で出現すること, さらには str 変異を活用することで, 活性化が難しいとされてきた Nocardia属放線菌からも活性化菌株を取得できることが明らかになった.


P-7
新規遺伝子Doctorはツメガエルの初期発生において頭部形成と体軸形成を調節する
*1森山侑輝, #1黒田裕樹
1静岡大学創造科学大学院自然科学系教育部バイオサイエンス専攻

地球上には何百万を超える生物種が存在しているが、ひとつひとつの生物はどのようにつくられているのであろうか。生物は高等になるにつれて背腹、前後、そして、左右の3つの軸から構成され、その中でも特にBMPとその阻害因子によって調節されている背腹軸に関する研究は発生生物学の分野において非常に注目を集めている。例えばChordinはCR (Cysteine -rich)ドメインを用いてBMPの働きを阻害することにより胚の背腹軸の予定運命を決めることが知られている。本発表では、データベース解析によって新規に発見したCRドメインを持つ遺伝子Doctorのクローニングをおこない、分子生物学的手法を用いた発現・機能解析によりから明らかになったツメガエル胚の初期発生における役割を報告する。さらに、胚の中において起こっている同遺伝子と他の分子とのダイナミックな相互作用(ハーモニー)について考える。




P-8
FGFシグナルは活性化する時期によって異なる働きをもつ
1長野紘樹, *2守翔子, #1,2黒田裕樹
1静岡大・教育・理科, 2創造科学技術大院・教育部・バイオサイエンス

多くの種で高度に保存されているFGF (fibroblast growth factor)は細胞の分化などの生命活動に関わる因子として知られているが、非常に複雑なシグナル経路をもつため不明瞭な点が多い。特に、発生過程の時期によってその働きが異なると言われているが定かではない。そこで、本研究室ではFGFシグナルを時期特異的に制御することで、その働きを明らかにできると考えツメガエル胚を用いて解析を行った。FGFシグナルの下流に位置するMEKの常時活性型DNAとmRNA、そして、TOR (Target of rapamycin)の特性を生かしたFRB/FKBP12 binding assayを用い、胚に作用させたところ卵割期では細胞分裂の停止、St. 9以降では胚の後方化、または神経化が観られた。以上より、FGFシグナルには活性化する時期により、3つ働きがあることが明らかとなった。


P-9
マウス動脈硬化症発症に対するカテキンとカフェインの組み合わせ投与の効果
*高穎,#茶山和敏
静岡大・院農・応生化

以前の研究で、我々は、カテキンとカフェインの組み合わせ投与が、各単独投与と比較して、より強い動脈硬化症抑制作用を有することを明らかにしている。そこで、本研究では、動脈硬化症を最も強く抑制するカテキンとカフェインの最適配合比率を検討した。その結果、通常の緑茶含有量を基準にしたカテキンとカフェインの混合比率の組み合わせである0.3%カテキン+0.05%カフェイン、あるいは2倍量のカテキンと通常のカフェイン量の混合比率である0.6%カテキン+0.05%カフェインが最適であることが明らかになった。さらに、0.6%カテキン+0.05%カフェイン混合飼料の投与群では体重増加も抑制されていたことから、通常の緑茶含有量の2倍のカテキンと同量のカフェインの比率で両者を混合することで、肥満と動脈硬化症の両方をより強く抑制できる可能性が示唆された。


P-10
Microtubule motor-dependent MTOC aggregation induces meiotic telomere clustering.
*1吉田昌史, 1勝山聡, 1中村博人, 2三木双葉, 2岡崎孝映, 3原口徳子, 2丹波修身, 3平岡泰, #1山本歩1
1静岡大・院理・化学, 2かずさDNA研究所, 3情報機構・バイオICT

減数第一分裂時の相同染色体の分配には相同染色体の対合が必要である。対合形成には多くの真核生物においてテロメアが集合することが必要である。近年、この集合には核膜と細胞骨格をつなぎ止める働きをしているSUN/KASHファミリー核膜タンパク質が関与することが明らかとなっているが、この集合機構の詳細は不明である。我々はこれまで分裂酵母のテロメア集合に微小管モーターである細胞質ダイニン、またいくつかのキネシンモーターが関与することを見出している。テロメア集合の起こる前に一過的にテロメアにSUNタンパク質が局在するが、我々はさらにSUNタンパク質と共同して働くKASHタンパク質、ダイニン、γ-テューブリン複合体が局在し、テロメアが微小管形成中心として機能することを見出した。これらの結果から、テロメアに中心体類似構造体(テロセントロゾーム)が形成され、その後微小管モーターによってテロメア集合が起こると考えている。


P-11
富士山、愛鷹山、毛無山の山地帯における種子植物相の比較
*1西村雄太,1徳岡徹
1静岡大・院理・生物

富士山周辺地域には静岡県に分布する植物の約半分が見られるが、植物相の研究は証拠標本がないなど不完全である。本研究では富士山、愛鷹山越前岳、毛無山の山地帯の一部(標高1,200〜1,500m)を調査地とし、種子植物を対象に調査を行い、植物相にどのような違いが表れるのかを明らかにすることを目的とした。現在3地点で585個体を同定し、260種の出現が見られた。このうち3地点に共通する種は約13%(33種)しかなかった。全体の約69%(179種)が富士山で見られ、富士山にのみ見られた種は全体の34.6%(90種)となったことから、富士山が多様性に富む山だと分かった。愛鷹山のみ見られた種は9.6%(25種)で、その中には絶滅危惧種が4種見られた。毛無山はクリのような2次遷移によって出現する種が確認された。このように各山に異なった特徴が確認されたが、採集した種はまだ少なくより多くの調査が必要である。


P-12
分裂酵母のtor2ラパマイシン感受性株のマルチコピーサプレッサー遺伝子の解析
*1伊藤健悟,1石川優,1一杉篤,2丑丸敬史,3登田隆,#1瓜谷眞裕
1静大院・理・化学,2静大・理学・生物,3Cell regulation, Cancer Research UK

TORは免疫抑制剤ラパマイシンの標的となる進化的に保存されたタンパク質リン酸化酵素である。分裂酵母にはTor1とTor2があり、Tor2は生育に必須なタンパク質で、詳しい機能や機構は未知である。私たちはTor2の機能を知るために、tor2+温度感受性(tor2ts)の取得、解析が行われた。tor2tsは制限温度下にて細胞増殖停止、性分化など窒素源飢餓時に起きる事象に良く似た挙動を示した。より詳しいTor2の解析を行うため、tor2+ラパマイシン感受性株(tor2rs-2131)の作製・解析が行われ、制限温度下でのtor2tsと同様の挙動を示し、窒素源飢餓で誘導される遺伝子の発現が見られた。Tor2の機能の詳細を知るため、この株のマルチコピーサプレッサー遺伝子の取得、解析が行われた。これにより機能未知の遺伝子(mtt1)が取得され、機能の解析が行われた。Mtt1はZinc-finger motifをもつ核タンパク質であり、アルギナーゼであるcar1遺伝子の発現を抑制することがわかった。これらのことから、Tor2が代謝経路に関わる新たな経路の発見を示唆する。


P-13
暗期の光暴露により上昇する血栓症の発症リスクについて
*1青島 良輝、1榊原 啓之、2鈴木敬明、1山崎 隼輔、1原 のりこ、1小柳 顯陽、3高林 ふみ代、#1下位 香代子
1静岡県立大院・生活健康、2静岡県工業技術研究所、3静岡県大・短大部

【目的】24時間型社会の到来により、夜間に光を浴びることが避けられない社会となっている。近年、生体リズムを調節する主要因子である光に夜間曝されると、生体リズムが乱れ、様々な疾患が誘発する可能性が示唆されている。本研究では、暗期の光暴露が生体に及ぼす影響を評価するために、生体リズムを調節する時計遺伝子およびその制御下にある血栓溶解阻害因子(PAI-1)の発現量変化に着目し、マウスを用いた実験系にて検討を行った。【方法】4週齢のC3Hマウスを12時間周期の明暗サイクル下で4週間順化後、暗期に1時間の光暴露を行い、その後の遺伝子発現量の経時変化を定量的RT-PCRにて測定した。【結果】暗期の光暴露により、時計遺伝子およびPAI-1の発現量が増加した。また、PAI-1の発現は時計遺伝子の変化よりも早く増加したことから、時計遺伝子以外の制御機構の存在が示唆され、現在、その機序解明を行うと共に、PAI-1のタンパク質レベルでの変化を追跡している。


P-14
RGG領域のグアニン四重鎖認識機構の解明
*1高田麻美, 2高濱謙太朗, #3大吉崇文
1静岡大・院理・化学, 2静岡大・院創造・バイオ, 3静岡大・理・化学

最近の研究において、HeLa細胞のテロメア複合体内に核酸結合タンパク質TLS (Translocated in liposarcoma)が含まれている事が報告された。このことからTLSはテロメアに関わる重要な役割を果たしていると予想されるが、TLSのテロメアに局在する機構は明らかになっていない。これまでに我々は、TLSが核酸結合領域中のC末端側にあるアルギニン−グリシン−グリシンアミノ酸配列に富んだ領域(RGG領域)でヒトテロメア配列の形成するグアニン四重鎖に構造特異的に結合することを見出している。しかしRGG領域によるグアニン四重鎖認識機構は不明である。そこで本研究ではRGG領域のグアニン四重鎖認識機構を解析した。その結果、TLSのRGG領域はハイブリッド型やパラレル型などのグアニン四重鎖の構造の違いを認識して結合しているのではなく四重鎖構造のループ部分を認識して結合することが示唆された。


P-15
高脂肪食摂取による膵β細胞の加齢老化と緑茶成分による予防効果
#*1宮崎英明 1海野けい子 1山本博之 2原真奈美 1星野稔
1静岡県立大・薬・生物薬品 2シカゴ大・医

高齢者における糖尿病の増加は、膵β細胞の加齢に伴う機能変化の他、食生活の変化に伴う脂質の過剰摂取などが関与していると考えられている。そこで本研究では、長期にわたる高脂肪食の摂取が膵β細胞に及ぼす影響、および雌雄での応答性について、β細胞特異的にGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現させたトランスジェニックマウスを用いて検討した。その結果、高脂肪食を摂取していた中高齢のマウスにおいて、肥満した雌マウスでは膵島の面積およびβ細胞量が、普通食を摂取していたマウスに比べ有意に増大していた。一方高脂肪食を摂取していたにも関わらず肥満しなかった雄マウスの場合は、β細胞量が減少する傾向がみられた。しかし、高脂肪食と一緒に緑茶カテキンとカフェインを摂取していたマウスではそれらの変化が有意に抑制された。このことから緑茶カテキンとカフェインの摂取は、糖尿病発症の予防につながることが示唆された。


P-16
高脂肪食摂取による脳の老化促進に対する緑茶成分の抑制作用
*#1前田健一,1海野けい子,2小西智一,1山本博之,1星野稔
1静岡県立大・薬・生物薬品,2秋田県立大・生物資源科・基礎生命化学G

脂質摂取量の増加は肥満や2型糖尿病の重要なリスクファクターであるが、近年、脳機能の低下を引き起こす可能性も示唆されている。我々は、老化促進モデルマウス(SAMP10)および正常老化を示すC57BL/6マウスに対して高脂肪食とともに緑茶カテキン・カフェインを摂取させ、脳機能に及ぼす影響を検討した。
その結果、両系統のマウスにおいて高脂肪食の摂取は老齢時に空間作業記憶能の低下と神経細胞の低下を引き起こし、緑茶成分を高脂肪食と同時に摂取させると、それらの低下が抑制された。また、インスリンと脳機能との関連の報告がされているため、海馬でのインスリン受容体を比較したところ発現量が高脂肪食摂取により減少しており、脳内でインスリン抵抗性が生じている可能性が示唆された。また、緑茶の摂取は受容体の減少を抑制していた。これらのことから長期にわたる高脂肪食摂取は脳に悪影響を及ぼし、緑茶摂取はそれを改善する作用があると考えられた。



P-17
マウス脂肪細胞の脂肪蓄積に対するカテキン及びカフェインの影響
*1・2杉浦千佳子,2茶山和敏
1浜松大・健康栄養学科,2静岡大・創造大学院

【目的】これまでの研究で、緑茶および緑茶成分はマウスの体重増加および脂肪蓄積を顕著に抑制し、特に、カフェインとカテキンの組み合わせ投与が最も強い脂肪蓄積抑制作用を示すことを明らかにしている。しかし、生体内における主な脂肪蓄積の場である脂肪細胞に対するカフェインとカテキンの組み合わせ投与の効果については明らかにされていない。そこで、マウス脂肪前駆細胞株である3T3-L1細胞を用いて、分化誘導後の脂肪蓄積に対するカテキンとカフェインの影響について検討した。【方法】12wellの培養用プレートに各well当たり2×104個/ml播種し、播種60時間後、インスリン、デキサメタゾンおよびイソブチルメチルキサンチン含有分化誘導液を用いて分化誘導した。分化誘導48時間後、カテキン濃度1・2.5・5・10μg/ml、カフェイン濃度50・100μg/mlと各組み合わせ濃度の培養液を作成し、各培養液内で8日間培養後、細胞内脂肪蓄積量と脂肪酸合成酵素活性を測定した。【結果】カテキンとカフェインを組合せ添加群はコントロール群に比較して脂肪蓄積が減少していた。特に、カテキン濃度10μg/ml+カフェイン濃度100μg/ml添加群が最も脂肪蓄積を抑制した。


P-18
う蝕病原因子グルカンスクラーゼの立体構造解析
*1伊藤圭祐, 1河原崎泰昌, #2伊藤創平
1静岡県立大・食品・生物分子工, 2静岡県立大・食品・食品蛋白質工

う蝕(虫歯)は世界人口の7割が患っている最も身近な生活習慣病であり、その病原因子として、プラーク形成の原因酵素であるグルカンスクラーゼ(GSase)が同定されている。本研究では抗う蝕剤開発への分子基盤を整備することを目的とし、X線結晶構造解析によりGSaseの立体構造を解明した。
 結果、GSaseの触媒ドメインの立体構造は既知アミラーゼと類似していたが、そのバレル構造には順列置換が起きていた。また、触媒残基を含むサブサイト-1のアミノ酸残基は既知アミラーゼと比較的保存されていた一方、サブサイト+側の構造は大きく異なっていた。触媒反応におけるアクセプター糖はサブサイト+側に結合することから、これは阻害剤開発の分子基盤として重要な新知見である。
 本研究において、世界で初めてう蝕病原因子の立体構造を明らかとした。得られた構造情報を基にさらに効果的なう蝕阻害剤の開発が進むことが期待される。


P-19
KDELモチーフを利用したジスルフィド結合型二量体タンパク質の分泌阻害法
*1松川晋也, 2西村美津樹, 2御宿翼, 2佐々木悠, 2齊藤那奈 #1,2黒田裕樹
1静岡大・院教・理教, 2静岡大・教育・総科

細胞内で合成された分泌タンパク質は小胞体-ゴルジ体を経由し、細胞外へ放出される。分泌タンパク質の中でも例外としてKDEL配列をC末端に持つものは、KDEL受容体に捕捉され、半永久的に小胞体-ゴルジ体を循環する事が近年の研究で明らかになった。本研究では、KDEL配列に依存する分子メカニズムを利用し、TGF-beta superfamilyの分泌阻害が有効であるか検証した。初期胚の背腹を決定するBMP4の終始コドンの直前にKDELをコードする塩基配列を付加し、BMP4-KDEL mRNAを作成し、ツメガエル胚へ顕微注入した。その結果、セメント腺の肥大、BMPシグナル標的遺伝子の発現量が低下するなど、BMP4本来の働きと逆の機能を持つことがわかった。これはBMP4-KDELが内在性のBMP4と二量体を形成し、anti-BMPとして機能していることを示唆させる。また、中胚葉誘導因子であるXnr5においても同様の実験を行い、Xnr5-KDELがXnr5を阻害している事がわかった。以上の結果からTGF-beta superfamilyにおけるKDEL配列付加が分泌阻害法として機能することを示す。


P-20
テロメア結合タンパク質TLSによるグアニン四重鎖認識機構の解明
1*高濱謙太朗, 2高田麻美, 3#大吉崇文
1静岡大・院創造, 2静岡大・院理, 3静岡大・理

生物の寿命やガン化に関係する染色体末端部位テロメアは、テロメアDNA、テロメアRNA及び様々なタンパク質からなる複合体であることが知られている。これらの複合体により、テロメアは安定に維持されていると考えられている。しかし、この複合体が形成される機構やその機能については不明な点が多い。当研究室ではこれまでに、テロメアに存在することが報告されているタンパク質TLSとテロメアDNAまたはRNAとの結合性を解析した。その結果、その結果、TLSのC末端側核酸結合領域中に存在しているアルギニン・グリシン・グリシンアミノ酸配列豊富なRGG領域が、グアニン四重鎖構造特異的にテロメアDNA・RNAと結合していることが明らかになった。更に、TLSとテロメアDNA・RNAは三分子複合体を形成し得ることが明らかになった。これらの知見は、テロメア複合体の形成にTLSが関与する可能性を示している。


P-21
ラパマイシン処理はツメガエルの初期発生において発生の遅れ、色素沈着の阻害、内臓形成の奇形を引き起こす
1森山侑輝, 2大畑佳久, 1守翔子, 2松川晋也, 1,2,黒田裕樹
1静岡大・創造科学技術大学院・バイオサイエンス, 2静岡大・院教・生物

 TOR (target of rapamycin)というタンパク質は、全ての真核生物に高度に保存されたセリン/スレオニンキナーゼである。TORは細胞成長や細胞増殖など様々な生命現象に密接に関係する働きを持つことから、細胞分裂と細胞成長の連続である初期発生においても非常に重要な役割を担っていると考えられている。そして本実験で使用しているラパマイシンはTORシグナルを阻害する働きを持ち、真核生物の細胞成長や細胞増殖の遅延、寿命の伸展といった様々な生命現象に影響を与えることが知られている。
 私の研究ではアフリカツメガエルに対してラパマイシンやTORシグナルに関するコンポーネントのいくつかを用い、TORシグナルが発生に及ぼす影響を解明することを目的としている。これは動物における初期発生は似た成長過程をたどることから、アフリカツメガエルの初期発生におけるTORシグナルを解明することは人間などの初期発生におけるTORシグナルの解明につながることが期待できるためである。
 そこでアフリカツメガエルの初期発生に対し、ラパマイシン処理を行いTORの働きを阻害したところ、TORの下流のS6Kのリン酸化が阻害された。さらに、ラパマイシンの濃度依存的に発生速度の遅れが生じ、他にもラパマイシン処理によって側面および背側の色素沈着の阻害と重篤な胃腸奇形が引き起こされた。これらの結果から、ラパマイシンを用いたTOR阻害は初期発生に大きな変化を与えると言える。そしてラパマイシンによるTOR阻害がどのような遺伝子の発現に影響を与えることでこれらの変化を引き起こすのか調べるために、マイクロアレイ法を用いてラパマイシン処理胚の遺伝子発現を解析した。その結果、ラパマイシンによるTOR阻害が様々な遺伝子発現に影響を与えることが明らかにされた。
 これらの結果から、医薬品であるラパマイシンはTORを阻害することで下流の遺伝子発現を制御し、初期発生に大きなダメージを与えると言える。


P-22
ニワトリ胚肝臓及び肝外胆管系の新規マーカー分子の探索
*1櫻井みなみ,2塩尻信義,#2小池亨
1静大・院理・生物,2静大・理・生物

 ニワトリ胚孵卵3日頃の前腸門域の組織からは、肝臓や肝外胆管系、膵臓など様々な器官が発生する。また胚発生過程における器官形成にはダイナミックな細胞運動が伴い、多くの場合、細胞間接着分子の発現パターンの変化が生じる。今回私たちは、Ca2+依存性の接着分子であるN-カドヘリンに着目し、前腸門域での発現についてタイムコースを追って解析を行った。その結果、ニワトリ胚においてN-カドヘリンは肝外胆管系で強く発現していることが分かり、今後N-カドヘリンが肝外胆管系のマーカー分子になる可能性を示した。さらに、抗C3H系統マウス特異抗原(CSA)抗体を用いた免疫染色により、ニワトリ胚肝臓で抗CSA抗体認識抗原が強く発現していることが明らかとなった。今回、ニワトリ胚前腸門域でのN-カドヘリンと抗CSA抗体認識抗原の発現パターンについて報告する。


P-23
EWSによるグアニン四重鎖構造認識機構の解明
*1杉本知恵莉, 2高濱謙太朗, #3大吉嵩文
1静岡大・院理・化学, 2静岡大・院創造・バイオ, 3静岡大・理・化学

ガン化や寿命に関わるとされる染色体末端部のテロメアや、ガン遺伝子の転写調節領域の配列は、試験管内で異なるグアニン四重鎖構造を形成し、生体内で重要な機能を有する事が予想されている。そのため、核酸構造と機能の関係を解明するツールとして、グアニン四重鎖構造の違いを認識できる分子開発が求められている。当研究室では、グアニン四重鎖結合タンパク質Ewing’s Sarcoma (EWS) のアルギニン-グリシン-グリシン (RGG3) 領域がグアニン四重鎖構造特異的に結合し安定化する事を報告している。しかし、RGG3 がグアニン四重鎖構造の違いを認識できるかは不明である。そこで、RGG3のグアニン四重鎖結合性について解析した結果、RGG領域はグアニン四重鎖中のループ数とループ中の塩基数に依存した結合性を示し、588から610アミノ酸領域とそのC末端側がグアニン四重鎖構造特異的な結合に重要である事が示唆された。


P-24
化学物質に対する生体応答は投与時間によって異なるか?
*1原のりこ,1榊原啓之,1小柳顯陽,1青島良輝,1山崎隼輔,#2下位香代子
1静岡県立大・院・生活健康,2静岡県立大・GCOE

化学物質の代謝経路を制御している様々な遺伝子に、約24時間周期の日内発現リズムがあることが報告されている。これは、化学物質を投与する時間によって生体応答が異なる可能性を示唆している。そこで我々は、環境中の化学物質である多環芳香族炭化水素類のベンゾ[a]ピレン(BaP)をモデル化合物として用い、投与時間の違いによる毒性影響の変化について検討を行うことにした。まず、BaPの主要な代謝部位である肝臓に着目して、異物代謝と細胞周期に関与している遺伝子の日内発現リズムを経時的に追跡した。4週間順化した8週齢の雄性C3Hマウスの肝臓を、3時間間隔で摘出し、標的となる遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより測定したところ、Cyp1a2AhRGadd45β等の発現が顕著な日内発現リズムを示すことが判明した。一方、Cyp1a1の発現量には、日内リズムは見られなかった。現在、BaPの投与時間帯を考えて染色体異常の指標である小核誘発能について検討中である。


P-25
RNA ポリメラーゼ変異やリボソーム変異による放線菌の抗生物質生産活性化機構の解明
*1渡邉健,1岩川千紘,1千菊夫,2越智幸三,#3保坂毅
1信州大・農,2広工大・情報,3信州大・若手拠点

 放線菌は,抗生物質に代表される二次代謝産物の宝庫として,微生物産業上極めて魅力的な微生物群である.従って,放線菌の潜在的な二次代謝産物生産能,すなわち抗生物質生産力を最大限に引き出し活用することは,放線菌の高度利用化において重要な課題である.
 放線菌に特定の RNA ポリメラーゼ (RNAP) 変異やリボソーム変異を持たせると,潜在的な抗生物質生産力が著しく活性化されることが判っている.最近我々は,抗生物質生産の活性化が認められた放線菌の RNAP 変異株やリボソーム変異株での増殖定常期では, RNAP やリボソームが活発に働いていることを見出した.さらに,これらの変異株では,抗生物質生合成遺伝子のみならず様々な遺伝子の発現が野生株に比べて大幅に上昇していることも突き止めた.現在,これらの知見をもとに RNAP 変異やリボソーム変異による放線菌の抗生物質生産活性化機構の詳細を解明することに取り組んでいる.



P-26
隣接地域に棲息するハシブトガラスとハシボソガラスの行動生態学的比較
*1池谷純輝,#2竹内浩昭
静岡大・院理・生物

一般的に日本で見られるカラスの種類は、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種類であり、様々な場所で見ることができる。静岡市内は農耕地と山林、海辺が隣接しており、両種が入り交じって棲息している。静岡市内で、繁殖期に営巣場所を調査し、ヒナへ接近する敵(観察者)に対して親鳥が威嚇行動を取り始める最小接近距離を測定した。また、非繁殖期において、止まっている個体に敵(観察者)が接近したときの逃げ出す最小接近距離と逃げる際の発声の有無を調べ、種間で比較した。結果、ハシブトガラスはハシボソガラスに比べ、繁殖期、非繁殖期ともに最小接近距離が長かった。また、逃げる際には、ハシブトガラスはハシボソガラスに比べ発声率が高くなっており、2個体以上の集団に限ってみても高くなっていた。これは、ハシブトガラスはハシボソガラスに比べ攻撃性と警戒性が高く、コミュニケーション能力が高い可能性を示唆している。


P-27
音声行動が性的2型を示すジュウシマツ脳の雌雄比較(AchE組織化学法による検索)
*1三浦慎也, #2,3奥村哲
1 静岡理工科大・理工・物質生命科, 2 静岡理工科大・総合情報, 3 理研・脳センター

多くの鳴禽類の雄は求愛のために囀るが、この行動には性的2型が知られている。そこで、歌を囀るジュウシマツの雄とそれを聴く雌の脳にどのような違いがあるのかを明らかにするべく、両者の脳切片に、哺乳類において聴覚情報を処理する系との関わりが指摘されているコリン作動系を標識するAChE組織化学法を施し、光学顕微鏡下でAChE陽性細胞の分布と形態とを比較した。雄の脳では、歌神経核として知られるHVC, RA, Area X, LMANに多くのニューロンが強く標識されており、HVC, Area X, RAは境界がほぼ全周にわたって明瞭であった。雌のHVCに相当する部位には明瞭な神経核様構造は確認できず、またRAの境界も雄と比べて不明瞭であった。また雄のHVCと雌の相当部位のAChE陽性細胞はオスの方が高密度に分布していた。更に、いくつかの脳部位で、細胞外基質の染色態度が雌雄で大きく異なることを確認した。今後は確認された雌雄差が、どのような脳機能の違いを反映しているのか検討したい。


P-28
ジュウシマツのオスの音声行動の他個体の地鳴きによる変化
*1長田 翠,#1,2奥村 哲
1静岡理工科大・理工・情報システム

小鳥の音声行動は短い地鳴きと長い囀りに大別される。それらの行動文脈や状況による変化を観察する目的で、録音システムが整備された防音箱内のオスにメスの動画と地鳴きを呈示し、オスが発する音声を録音した。呈示刺激としては、オスもしくはメスが地鳴きを行っている最中の動画と発声行動を伴わない動画を用意し、非呈示の期間と交代で、合計9時間にわたって30分毎、繰り返し呈示した。そして、囀りと地鳴きの発声数をカウントし、地鳴きについてはさらにフォルマントや音圧などの特徴を解析した。囀りの頻度については、動画・音声の非呈示中が最も多く、音声なしの動画呈示中、音声ありのメスの動画呈示中の順に少なくなった。地鳴きについてはオスの動画呈示時よりメスの呈示時のほうが一度の発声継続時間が長くなり、頻度も増加した。また、フォルマントによって複数のクラスターに分類ができ、状況依存的に、その割合に変化がみられた。


P-29
減数分裂のセントロメア構造制御における細胞周期制御因子の働き
*1板橋裕太、1大羽辰典、2村上浩士、#1山本歩
1静岡大・理・化学, 2名市大・院医

減数分裂では、DNA複製後に二回の分裂が起こる。減数第一分裂では相同染色体が両極へ分配される。この分配にはDNA複製を経た減数分裂特異的なセントロメア構造形成が必要であると考えられている。これまでの解析から、分裂酵母ではこの構造制御機構には接合フェロモン応答によってWee1およびMik1キナーゼの不活性化することが必要であると考えられた。そこでWee1キナーゼを抑制するCdr1およびCdr2キナーゼの働きを解析した。その結果、Cdr1およびCdr2キナーゼは減数分裂特異的なセントロメア構造形成に関与しないと考えられた。しかしながら、この欠損株では多くの細胞においてDNA複製を経ないで分裂が進行することから、減数分裂特異的なセントロメア構造形成にDNA複製が必要ないことが示唆された。今後はセントロメア構造制御におけるWee1およびMik1キナーゼの働き、およびDNA複製の役割をさらに解析していく予定である。


P-30
光合成膜主要糖脂質合成酵素遺伝子MGD1の組織化学的発現解析
*1山崎尭嗣,#2粟井光一郎
1静岡大・理・生物,静岡大・GRL

植物細胞の膜脂質組成は組織により大きく異なり、種子や根などでは主にリン脂質で構築されているのに対し、葉で発達した葉緑体チラコイド膜ではMGDGやDGDGなどの糖脂質が利用されている。これらの糖脂質はチラコイド膜の機能発現に必須であると考えられ、実際にチラコイド膜の50%を占めるMGDGの合成酵素遺伝子MGD1欠損は、光合成機能に多大な損害を与えることが知られている。そこで本研究では、このMGD1遺伝子のプロモーター領域に存在する制御機構を明らかにすることを目的とし、GUS遺伝子を用いたレポーター解析を行った。まず、様々な長さのプロモーター領域をGUS遺伝子と融合し、モデル植物であるシロイヌナズナに導入後、薬剤選抜により形質転換体を得た。また、MGD1は400bp以上の非常に長い5’非翻訳領域を持つが、この領域の長さを変えたプロモーター領域もGUS遺伝子と融合し、シロイヌナズナに導入した。これらの形質転換体を用いた組織化学的発現解析について報告する。


P-31
グアニン四重鎖構造に結合するペプチドの開発
1田出朋也, 2湯川新菜, 3道羅秀夫, 2大吉崇文
1静岡大・院理・化学, 2静岡大・理・化学, 3静岡大・遺伝子実験施設

グアニン豊富な核酸配列が形成する高次構造にグアニン四重鎖構造がある。グアニン四重鎖構造はテロメアやガン遺伝子に存在し生物学的に重要な存在であるが、その機能の多くは不明である。グアニン四重鎖構造の機能を調べるためにはグアニン四重鎖結合性分子が有用である。転写調節領域にグアニン四重鎖構造を形成する配列をもつガン遺伝子c-mycでは、カチオン性ポルフィリン誘導体TMPyP4によりグアニン四重鎖構造を安定化することでグアニン四重鎖構造が転写抑制を行うことがわかった。当研究室ではこれまでに転写やRNA輸送に関係するタンパク質Translocated in liposarcoma (TLS)のアルギニン-グリシン-グリシン配列に富んだRGG領域がグアニン四重鎖構造に特異的に結合し安定化することを見出してきた。このTLSのアミノ酸配列を元にグアニン四重鎖構造に結合する分子の設計と評価を行った。


P-32
Anabaena sp. PCC 7120の窒素欠乏応答におけるゲノムDNAのメチル化
*1田中裕二,#2粟井光一郎
1静岡大・理・生物,2静岡大・GRL

原核生物であるシアノバクテリアAnabaena sp. PCC 7120(以降Anabaena)は,窒素欠乏条件下において,一部の栄養細胞が窒素固定を行うヘテロシストに分化する.この栄養細胞とヘテロシストにおけるゲノムDNAのメチル化の度合いを比較したところ,明らかな違いが観察された.このことは,原核生物のゲノムDNAも環境に応答してメチル化の程度を調節している可能性を示しており,今まで原核生物では確認されてこなかった,遺伝子発現調節を目的としたゲノムのメチル化が行われていることが期待される.そこで本研究では,野生型栄養細胞と単離したヘテロシストにおけるゲノムのメチル化の程度やメチル基転移酵素(MTase)の発現量を比べ,窒素欠乏に応答したメチル化が行われるかを解析した.また,現在MTaseの遺伝子破壊株作製をしており,これらを用いた解析結果についても報告したい.


P-33
光合成膜機能に必須な糖脂質構造の解析
*1舞田江里 #2粟井光一郎
1静岡大・理・生物,2静岡大・GRL

 ラン藻を含む酸素発生型光合成を行う生物のチラコイド膜には、多量の糖脂質が含まれている。そのうちの一つ、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)は、その合成酵素遺伝子変異株を用いた解析から、光合成における役割が明らかとなってきている。しかし、DGDGのどの構造が重要であるかはわかっていない。そこで、DGDGの機能に必須な構造を明らかにするため、DGDGを他の糖脂質と置き換えることを試みた。まず、単細胞ラン藻Synechococcus sp. PCC 7942に枯草菌由来の糖脂質合成酵素ypfPを導入した。ypfPは、ジアシルグリセロールにグルコースを付加する反応を触媒する。ypfP導入株の膜脂質組成を解析したところ、野生株では見られない新たな脂質の蓄積が確認できた。これは、導入したypfPが合成したジグルコシルジアシルグリセロール(DGlcDG)と考えられた。現在、得られた形質転換体でDGDG合成酵素遺伝子を破壊し、DGlcDGがDGDGの機能を相補できるかを調べている。


P-34
大量培養したAnabaena sp. PCC 7120を用いた有機化合物の解析
*1馬渕剛志,#2粟井光一郎
1静岡大・院理・生物,2静岡大・GRL

糸状性ラン藻であるAnabaena sp. PCC 7120(以下Anabaena)は、窒素源を含む培地で培養すると複数の栄養細胞が連なった形態となるが、培地を窒素欠乏条件にすると一部の栄養細胞が窒素固定能を持つヘテロシスト細胞に分化し、大気中の窒素を利用出来るようになることが知られている。この様な細胞形態の違いは、様々な代謝経路が制御されることによって生じるため、各条件での細胞内代謝産物に違いがあると考えられる。本研究では、窒素源含有および欠乏条件でAnabaenaを大量培養し、栄養条件による成長速度と、細胞内に蓄積する有機化合物の違いを比較した。ファーメンターを用いた培養の結果、どちらの条件でも成長速度の違いは見られず、10ℓあたり湿重量約50gの菌体が得られた。ここから有機化合物を抽出し、高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)で分離したところ、栄養条件の違いによっていくつかの違いがみられた。本発表ではその詳細について報告する。


P-35
テロメア領域におけるTLSの機能解明
*1 多田将太, 2 清水麻衣, 3 茶山和敏, # 4 大吉崇文
1静岡大・院理・化学, 2静岡大・理・化学, 3静岡大・農・応用生物, #4静岡大・理・化学

近年テロメア領域でTelomeric repeat-containing RNA(TERRA)が転写されていることが報告されており、TERRAはヒストンのメチル化による転写抑制や、テロメラーゼ中のRNAと結合することによってテロメア伸長を阻害し、細胞の老化やガン化に関わっていると予想されている。近年、網羅的解析によりテロメア領域内にTranslocated in liposarcoma(TLS)が存在していることが報告された。当研究室の研究によってテロメアDNAの形成するグアニン四重鎖構造と、TLSが結合することが明らかになったが、テロメア領域におけるTLSの機能は未だ不明である。そこで我々はTLSがTERRAの転写制御に関与しているかをヒト細胞を用いて解析した。細胞内にTLSを過剰発現させそのときのTERRAの発現量を検証した結果、過剰発現させてもTERRAの転写は活性化されなかった。


P-36
TERRAの発現機構の解明
*1清水麻衣,2多田将太,3渡辺裕美,4茶山和敏,#5大吉崇文
1静岡大・理・化学,2静岡大・院理・化学,3静岡大・院理・化学,4静岡大・農・応用生物,5静岡大・理・化学

テロメア領域に存在するTERRA(Telomeric repeat-containing RNA)はテロメアの構造を安定化することや、テロメラーゼの働きを抑えることが予想されている。TERRAはRNAポリメラーゼUによりテロメアDNAから合成されるが、その転写機構は不明である。核酸結合タンパク質EWS(Ewing’s sarcoma)は、試験管内においてテロメアDNAが形成するグアニン四重鎖構造に結合することが明らかとなっている。
本研究ではTERRAの発現におけるEWSの機能を調べるため、ヒト細胞中にEWSを過剰発現し、TERRAの発現量の変化を解析した。その結果、EWSを過剰発現させるとTERRAの発現量が増加した。この結果から、EWSはテロメア領域のグアニン四重鎖に結合し、RNAポリメラーゼUがテロメア領域に局在することでTERRAの発現量が増加したと考えられる。



P-37
TLSとhnRNP A1存在下のグアニン四重鎖構造の解析
*1岡崎元樹, 2高濱謙太朗, #3大吉崇文
1静岡大・理・化学,2静岡大・院創造・バイオ,3静岡大・理・化学

がんに密接に関わるテロメア伸長に対して、テロメアDNAが形成するグアニン四重鎖構造はテロメア伸長に阻害的に働く。核酸結合タンパク質hnRNP A1は試験管内でグアニン四重鎖に結合し不安定化させ、生体内でテロメア伸長を促進する。また、これまでに我々はテロメア領域に局在するタンパク質TLSがアルギニンーグリシンーグリシン豊富な領域(TLS RGG3)でグアニン四重鎖に結合し安定化することを見出している。最近hnRNP A1とTLSが生体内で複合体を形成することが明らかとなった。そこで本研究ではTLSとhnRNP A1共存下におけるグアニン四重鎖構造を解析した。その結果、hnRNP A1、TLS RGG3とグアニン四重鎖DNAは複合体を形成することが示唆された。また、このときのグアニン四重鎖構造をCDスペクトルにより解析した結果、アンチパラレル型に類似するスペクトルを示すことが明らかとなった。


P-38
ノルアドレナリンの乳がん発症過程に及ぼす効果
*1山崎 隼輔、1榊原 啓之、2竹村、ひとみ、1豊岡 達士、1伊吹 裕子、#1, 3下位 香代子
1静岡県大・院・生活健康、2松本大・人間健康・健康栄養学、3静県大・GCOE 

 エストロゲン代謝物である4-OHE2は、生体内で不安定なキノン体に酸化され、DNAのプリン塩基と、DNA付加体を生成後、脱プリン部位(AP sites)を生じる。また、キノン体生成過程で生成した活性酸素により8-oxodGも生じる。これらのDNA損傷が原因となって遺伝子に変異が生じると、がん化へと進展する。一方、日常生活の中で晒されるストレスが乳がんの発症率を増加させる可能性が示唆されている。本研究では、ストレスの乳がんの発症増加機序の解明を目指して、ストレス負荷時に上昇するノルアドレナリン(NA)の、4-OHE2によるAP sites生成および、DNAの二本鎖切断(DSBs)の指標であるγ-H2AXの誘導に対する影響について、ヒト乳がん細胞MCF-7を用いて検討した。NAは4-OHE2によるAP sites生成に対して増加を示さなかったが、γ-H2AXの誘導を増加させたことからDSBsが生じた可能性が示唆された。また、本誘導は、α2-アドレナリン受容体(AR)を介しておきたものと考えられた。現在、H2AXリン酸化酵素であるATMを介してγ-H2AXが誘導されるかどうか検討中である。


P-39
短鎖RNAによる転写因子活性化機構の解明
*1齋藤悠 2高濱謙太朗 3丑丸敬史 #4大吉崇文
1静岡大・院理・化学,2静岡大・院創造・バイオ,3静岡大・理・生物,4静岡大・理・化学

転写因子であるEwing' sarcoma(EWS)はガン遺伝子である。悪性腫瘍中でEWSの融合タンパク質が見出されており、この融合タンパク質がガン化に関わることが報告されている。しかし、EWSの生体内における機能は詳しく解明されていない。そこで本研究ではEWSの転写制御機構の解明を目的とした。EWSはN末端側に転写活性化領域(EAD)、C末端側にRNA結合領域(RBD)を有しており、RBDはEADを抑制している事がこれまでに知られている。また、当研究室ではRBDにグアニン四重鎖構造を形成するヒトテロメアRNA(rHtelo)が構造特異的にin vitroにおいて結合する事を見出している。モデル生物として使用したSaccharomyces cerevisiaeで、EWSの転写活性を測定できるシステムを細胞内に構築したところ、EADには転写活性があり、RBDがEADの転写活性を抑制している事が示された。さらにEWS全長にrHteloを発現させるとEWSの転写活性が促進した。また、このrHteloによるEWSの転写の促進は、rHteloのグアニン四重鎖構造依存的であり転写量依存的であることが示唆された。


P-40
韓国済州島産プロポリスの成分研究
*1下村幸佑, 1杉山靖正, 2中村純, 3安木蓮, #1熊澤茂則
1静岡県立大・食品栄養・食品分析, 2玉川大・ミツバチ科学研究センター, 3東亜大・食品栄養

【目的】プロポリスは、ミツバチが植物(起源植物)の樹脂状物質を集めたものであり、機能性食品素材として注目されているが、その成分や機能性は起源植物の種類に大きく影響を受ける。我々は、これまでに韓国済州島産プロポリスが特異な成分組成であることを見出した。そこで、プロポリスの新たな有用性を見出すことを目的に済州島産プロポリスの成分分析を行った。
【方法】済州島産プロポリスのエタノール抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーや分取HPLCに供し、含有成分を単離した。単離化合物の構造は、NMRやMSを用いた機器分析を行い決定した。
【結果】済州島産プロポリスから、19個の既知化合物と8個の新規カルコンを単離した。同定した化合物の多くが明日葉(Angelica keiskei)から単離されていた。済州島産プロポリスと明日葉抽出物のHPLC分析結果から、明日葉が済州島産プロポリスの起源植物である可能性が示唆された。



P-41
APC/CおよびSCFによる酵母Cdh1の分解
*永井正義、柴田篤子、#丑丸敬史
静岡大学・理学部・生物

APC/CおよびSCFは細胞周期制御に重要なユビキチンリガーゼE3複合体である。APC/Cの基質認識サブユニットCdh1は、出芽酵母では分裂終期後からG1にかけて活性化しサイクリンClb2などの分解に関与する。当研究室では、Cdh1が寿命の短いタンパク質であることを見出した。興味深いことに、Cdh1はAPC/C-Cdh1およびSCF-Cdc4によりユビキチン化を受けることが示唆された。Cdh1はCDKによるリン酸化を受けることで細胞質に局在し、それが脱リン酸化されると核内に局在する。強制的に核内局在化させたCDKは分解が促進されたが、核内局在するCDKによるリン酸化を受けない変異体Cdh1-cdk11Aの分解は核局在にもかかわらず促進されなかった。このことは、CDKによるリン酸化がCdh1の核局在を阻害するとともに、分解を促進することが明らかとなった。


P-42
寿命延伸物質ラパマイシンの標的結合活性を擬態するペプチド断片の大規模探索
*大石章司、杉本佳乃子、伊藤圭介、#河原崎泰昌
静岡県立大・食栄・生物分子工学

【背景と目的】超高齢社会を目前に控え、免疫抑制剤ラパマイシンの寿命延伸効果が注目されている。しかしながら免疫抑制のほか腎炎などの副作用が生じるため、安易な摂取は問題である。そこで、ラパマイシンの細胞内機能を擬態し、Tor-FKBP12間相互作用によるTORC1不活性化を引き起こすペプチド断片の創製を目的として研究を行った。
【方法および結果】出芽酵母Tor1およびFpr1(FKBP12オーソログ)をプレイおよびベイトとして発現する酵母2ハイブリッド系を構築し、Tor1のFpr1結合ドメイン(FRBドメイン)を精密同定した。次にFRBドメインのC末端領域に10アミノ酸からなるランダムペプチド配列を融合させ(3x104クローン)、ラパマイシン非依存的に相互作用シグナルを与えるペプチド配列を探索した。その結果、微弱な活性を示す4コロニー(3クローン)が得られ、いずれも2-4位に親水性アミノ酸、9-10位にPheを有していた。



P-43
転写因子TAF15の核酸結合性の解析
*1湯川新菜, 2高濱謙太朗, #3大吉崇文
1静岡大・理・化学, 2静岡大・院創造・バイオ, 3静岡大・理・化学

近年、転写調節領域中に存在するグアニン四重鎖とグアニン四重鎖結合タンパク質との相互作用による遺伝子発現制御機構が報告された。しかし、グアニン四重鎖結合タンパク質はほとんど解明されていない。よって、遺伝子発現制御機構を解明する上でグアニン四重鎖結合タンパク質の解明は重要である。タンパク質のアルギニン-グリシン-グリシン繰り返し配列が豊富なRGG領域がグアニン四重鎖との結合に重要であることを当研究室で見いだした。細胞分化などに働く遺伝子の転写制御への関与が示唆されている転写因子TATA-box binding protein associated factor 15 (TAF15)もRGG領域を有する。しかし、その核酸結合性については未だ不明である。よって、TAF15のRGG領域の核酸結合性を調べた結果、グアニン四重鎖のループの塩基数もしくは他の構造の特徴を認識していることが示唆された。


P-44
課題の難易度の違いや慣れた操作の抑制を反映した前頭葉活動の変化
*1大塚長,#1,2奥村哲
1静岡理工科大・理工・情報システム,2理研・脳センター

本研究では簡単な論理操作課題遂行中の前頭葉の脳活動を、簡易NIRS装置を用いて解析した。まず1桁の足し算と2桁の足し算を遂行中のNIRS信号の変化を比較した(実験1:足し算課題)。次に後出しじゃんけんで勝つ課題と負ける課題とで、同様の比較を行った(実験2:じゃんけん課題)。どちらの課題でも、前頭部の広い領域で課題遂行時に休息時と比較して有意な脳活動量(を反映すると考えられるヘモグロビン量)の変化を観測した。実験1では、簡単な1桁足し算遂行時の方が、2桁足し算時よりも、脳の活動量の変化は大きかったが、実験2ではより困難な「わざと負ける」課題を遂行中に、前頭部の複数領域でより大きな変化量を観測した。じゃんけん課題では、勝つのも負けるのも論理的複雑さは同等であるが、わざと負けるためには勝つという慣れた操作を抑制する必要がある。実験間でみられたパラドキシカルな違いはその抑制の有無を反映している可能性がある。


P-45
複製チェックポイント因子Mrc1は減数第一分裂において姉妹染色分体の紡錘体との結合を制御する
1日野原裕美、1大羽辰典、1鈴木廉、2村上浩士、1山本歩
1静大・理・化学、2名古屋市立大・医

減数第一分裂では相同染色体が分配され、このとき姉妹染色分体のキネトコアは同じ方向を向き、一方の極と結合する。我々は、この減数分裂特異的なセントロメア構造制御にDNA複製関連因子であるMrc1が関与することを見出している。本研究では、Mrc1の減数分裂におけるセントロメア制御機構の解析を行った。その結果、Mrc1の欠損は第一分裂および第二分裂の染色体分配や胞子形成に大きな影響を与えなかった。しかし、Mrc1が欠損するとキアズマ形成しない細胞においては、第一分裂において姉妹染色分体と両極との結合が高頻度で起こることを見出した。本結果およびMrc1が姉妹染色分体の結合に関与するという報告より、我々はMrc1破壊株ではセントロメア間の結合に異常が生じ、姉妹染色分体の2つのキネトコアの向きが可動的となるのではないかと予想している。


P-46
植物病原細菌の発病に関わる宿主テロメラーゼの役割
*石山佳幸,露無慎二,#平田久笑 
静岡大学 農学研究科 植物病理学研究室

細胞分裂が活発に行われる生殖細胞や頂端分裂組織では,染色体末端のテロメア配列の伸長を担うテロメラーゼと呼ばれる酵素の高い活性が認められる.また,カンキツかいよう病の病原細菌Xanthomonas axonopodis pv. citri (Xac) の感染葉においても発病に先立ち,宿主テロメラーゼの活性上昇が確認された.そこで,本酵素活性と病徴発現の関係を調べることを目的として,テロメラーゼの活性サブユニットのひとつTERT(Telomerase-reverse transcriptase)遺伝子のRNAi誘導した後にXacを接種し,発病への影響を調査した.その結果,感染初期に観察される水浸状病斑の形成が遅延し,宿主細胞の肥大と異常分裂により形成される「かいよう」症状も抑制され,宿主のテロメラーゼ活性がXacの病徴発現に重要な役割を担うことが示された.


P-47
分裂酵母の減数分裂における染色体制御因子の探索と解析
*1松原 央達,#1,2山本 歩
1静岡大・院創造・バイオ,2静岡大・理

減数第一分裂では相同染色体の分配が起こるが、その分配機構はまだ多くが解明されていない。この分配機構を理解するためにはこの機構に関与している因子を同定することが必要である。本研究では分裂酵母を用いて染色体分配に異常のある新規変異株の取得を行いこれら因子の同定を試みた。変異誘発物質によって変異を導入した細胞から減数分裂により形成される胞子の生存率を指標として減数分裂期の染色体形状に異常のある6株の変異株を単離した。これらのうち4株は類似した表現型を示し、これまでに報告例のない繊維状の染色体形状が見られた。4株は3つの相補グループに分類され、このような表現型を引き起こしている原因遺伝子が複数存在すると考えられた。また、変異株では減数分裂期における組換頻度が低下しており核膜の局在にも異常が見られた。これらのことから変異株は染色体構造に関連する因子に変異が入っている可能性が示唆される。


P-48
Thermus kawarayensis由来β-glucosidaseの基質得意丙の改変
*1西本朗子,2伊藤創平,#3酒井坦
1静岡県立大・食品・食蛋工

【目的・方法】Thermus kawarayensis由来のβ-glucosidaseは、広い基質特異性を持ち、大豆イソフラボン配糖体も基質とすることができる。本実験では部位指定変異により基質特異性を改変することを目的とした。E392D、A、S、F401W、Y、L、A、S、Vという変異体を作成し、合成基質と大豆イソフラボン配糖体に対する活性を測定した。
【結果、考察】E392A、S、Dは活性が大幅に減少したため、E392は基質結合に大きな役割をしている可能性が示唆された。F401Yでマロニル型、アセチル型大豆イソフラボン配糖体に対する活性がwildの1.3~2.1倍に増加した。また、kcatは低下したがF401L、S、A、Vにおいてガラクトースの配糖体に対するKmが改善されたため、F401の変異により4位のOHの向き、6位の置換基に対する特異性を改変できる可能性が示唆された。



P-49
Thermus kawarayensis由来β-glucosidaseの基質特異性の改変
*1西本朗子,1伊藤創平,#1酒井坦
1静岡県立大・食品・食蛋工

【目的・方法】Thermus kawarayensis由来のβ-glucosidaseは、広い基質特異性を持ち、大豆イソフラボン配糖体も基質とすることができる。本実験では部位指定変異により基質特異性を改変することを目的とした。E392D、A、S、F401W、Y、L、A、S、Vという変異体を作成し、合成基質と大豆イソフラボン配糖体に対する活性を測定した。
【結果、考察】E392A、S、Dは活性が大幅に減少したため、E392は基質結合に大きな役割をしている可能性が示唆された。F401Yでマロニル型、アセチル型大豆イソフラボン配糖体に対する活性がwildの1.3~2.1倍に増加した。また、kcatは低下したがF401L、S、A、Vにおいてガラクトースの配糖体に対するKmが改善されたため、F401の変異により4位のOHの向き、6位の置換基に対する特異性を改変できる可能性が示唆された。



P-50
Backhousia citriodoraのCinnamyl alcohol脱水素酵素群に関する研究
1斉藤瑛介,*#1伊藤創平,2Anna M. Koltnow、1酒井坦
1静岡県立大・食品・食蛋工 2 CSIRO Plant Industry

Cinnamyl alcohol脱水素酵素(CAD)ファミリーは、植物においてリグニン合成の鍵となる酵素である。多くの植物には、遺伝子重複により多数のCADのホモログが存在し、非ストレス条件下においてリグニン合成に関与するClassIと、機能があまり特定されていないClassIIに分類される。B. citriodora はシトラールを多く含有する植物で、その精油は強いレモン様の香りを持つ。我々は、葉だけでなく若い茎の表面にシトラールを貯蔵する器官があり、茎の木化と共にシトラールが消失することを見出している。今回、B.citriodoraにおけるCAD酵素群とリグニン合成・シトラール合成の関連性を明らかとするため、CAD遺伝子を網羅的にクローニングを行った。CAD遺伝子の生理学的役割解明のために発現量の解析、大腸菌にて発現させたCADの基質特異性を解析したので報告する。