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2007年01月10日

東京公園


小路 幸也 / 新潮社

 この表紙の絵のように、爽やかな物語だった。非現実と現実とが切れ目なく繋がっているような、流れるような主人公の生活に引き込まれ、清々しい気持ちで読み終わった。

 同じ場所にいなくても、一緒に生きる。自分の好きな人みんなが幸せになる方向へ。時折ずーんと突き刺さるそういった言葉たちもまた、青い空に導いてくれた。

2007年12月29日

込められた想いを感じて

呼吸器内科を回っていた時、担当していた患者さんが再び入院したと聞き、別の科に異動した身分ながら、御見舞いに病室を訪れた。

その方は、いつもベッドの上で正座をして話をする。自分のことを、丁寧に丁寧に話される姿も、心配事を、はばかりながらも尋ねる姿勢も相変わらずだった。

だいぶ病状も回復し、退院間近となったその方が帰りがけた私に、また少しはばかりながら「先生は本を読まれますか?」と話を切り出された。「是非先生に読んでいただきたいと思って」と教えてくださったのが、東野圭吾の『使命と魂のリミット』。

心臓血管外科を回る女性研修医を主人公としたミステリー小説。
久し振りにミステリーを読んだけれど、交錯する登場人物の繋がりに引き込まれていった。そして時折、正に同じ立場である研修医の気持ちに大きく頷き、「著者はどうやってこの思いを知ったのかな」と考えたりした。
最後に主人公である女性研修医は、一歩も二歩も前に進む。人としても医者としても。その話だけでも多分感動に値するのだけど、私はそれ以上に、この本を薦めてくれたあの患者さんの思いを感じて胸がいっぱいだった。もしかしたらこの研修医に私を重ねて、私の気持ちを想像してくれたのかなあ、とか、自分を患者さんの思いに重ねて何か思ったのかな、とか。

夢中で駆け抜ける毎日の中で、こういう温かさを感じる瞬間が、私に立ち上がり、走り続ける追い風になる。

2011年05月23日

明日が来ると思えること

その本に挟んであったレシートを見ると、1年前の3月に買っていた。
新しい職場にまだ慣れることができずに、すっかり塞ぎ込んでいた気持ちを持ち上げようと本棚からとったこの本の最初の章を読んで、今絶妙のタイミングで読み始めたことに気づいた。
それまで何度かこの本を開いて、でも主人公の女性の意図が掴めずに、北へ向かう列車の場面で挫折していたのが嘘みたいに、今回はすーっとページを繰っていた。

全てを終わりにしたいと思うきっかけというのは本当に些細なことで、そこから抜け出すのもまた些細なことに依るのだ。まったくもって同感だ。

田村さんは都会暮らしをしていたのが嘘みたいに、自然のなかでの暮らしが染み付いている人だ。包み隠さない無愛想の奥に、御両親を失った悲しみや神に祈る気持ちが見え隠れして、割り切れない気持ちを抱えている人なのかな、と思う。そういうのを乗り越えて今の田村さんがあって、彼が言葉少なに彼女に見せて伝えていたのは、そうして田村さんが辿った軌跡だったのではないかと思う。

皮肉にも?それとも予想通りに?街の暮らしへ彼女は戻っていく。自然をいただく過程を目の当たりにして、ものへの愛着も自分の見苦しさも理解したのかもしれない。田舎にはいられないことを自覚する旅だったのかもしれない。田村さんの大雑把なところに引っ張られるように率直な自分になって「長生き」できるようになったのかもしれない。マッチのお守りを得て。


温かい4月の風にふかれて、堰を切ったように涙が溢れてきて、明日がくるのか本気で希望が持てない夜を過ごしても、その翌日には笑って職場の人と話せる自分がいて、「日常」というのは実際はそういう日々が連綿と続いているものなんだと思う。

私のお守りはその時々で、変化していく。
音楽、誰かにもらった言葉、写真、人との繋がり。

大丈夫、まだ明日が来ると思える。
 
 
天国はまだ遠く (新潮文庫)
天国はまだ遠く (新潮文庫)

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