笹井ラボ 研究ノート,卒業論文および計画書の作成手引き;sasai-lab's guide of writing research notes, mini-theses & experimental planing

 当ゼミでの卒業研究にかかわる「研究ノート,卒業論文および計画書の作成ガイド」を以下に示します.
先ずは研究ノートで、ゼミ開始から直ぐに必要です。 他もはじめに理解しておくと,その後の効率・効果的な展開につながります.背景調査や実験計画・立案に役立ちます.
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 【研究ノート】
A. 研究ノートの書き方

 【卒業論文】
B. 研究論文(原著論文)とは
C. 論文作成の手順
       D. 各セクションの作成
 時制   タイトル   抄録
 背景   材料・方法
 結果(図表)   考察
 参考文献
E. 論文や計画書の作成に共通す留意点
        【計画書】
F. 計画書とは
G. 計画書の作成手順

H. 参考文献等



 【研究ノート】

A. 研究ノートの書き方
      卒業研究の概ねにおいて,必ずノートに記録してください. 記録が無ければ,研究は全く進みません.立案,実験,考察,議論,執筆などの過程を想像すれば分かるはずです.こちらも参考ください.北里大学・野島高彦先生の記述が分かりやすいです. ノート作成という点は通常科目に似ていますが,次の点に留意ください
  1. 1人1人が自分のノートを作成する.共同実験・作業であっても,各々が自分のノートに記録する.
  2. 随時・適時の可及的速やかに記録する.ゼミ・ミーティング,背景調査,実験などの前・中・後など,文字どおり随時.
  3. ボールペン(インク)で記入する(消失防止).修正は,当該箇所への二重線付記と,隣接余白への補記で行う.修正液や修正ペンは厳禁!
  4. 背綴じの大学ノート,ルーズ・リーフのどちらでもよい.
    • 何れも専用として,他ノートや記録と共用しない.
    • 頁番号を記す.
    • ルーズリーフの場合は,リング・ファイル等に頁(日付)順に綴り,混乱・紛失を避ける.
    • 横書き・左綴じ
    • サイズはA4もしくはB5がよい.*程よい広さ
  5. 無駄な余白をつくらない.*前回記録の直後に次を記す.
  6. ゼミ仲間や教員が見ても分かるくらに整然,簡潔・明瞭に記す
    • 日付(西暦年月日)を記す.*適宜,時刻も記す.実験の場合は必須.
    • 略号・記号などは,その意味が分かるように但し書きする.
    • 「タイトル」もしくは「小見出し」をつけ,直後の内容を判別しやすくする.
    • 共同者名(共同する場合のみ).
    • 教員や先輩,あるいはその他の方からの指導・助言なども書き留める.
    • 取得した情報,情報源,実験条件,結果,観察記録などは,必ず具体・実際を客観的かつ正確に記したうえで,適宜,考察や主観的コメントも記す.
    • 複写やプリント・アウトを貼付する場合は,剥がれ・紛失しないようにのり付けする.
    • 計算を行った場合は,その過程も記録・明示する.
    • 記入が複数ページにわたる場合は,例えば「XXXX年X月X日の続き」のように、その旨が分かるように記す.
  7. 実験記録での記入事項の例.*成功・失敗に関わらず記す
    • 西暦年月日
    • 共同者名
    • 実験タイトル
    • 実験の目的,計画概略
    • 方法,プロトコール
      対象,  試薬(適宜,カタログ番号,ロット番号,分子量,純度なども),
      緩衝液や反応液の組成・調製法・使用量・濃度,  開始・終了時刻,
      反応・測定に関する時間,  温度,  pH,  強度などの詳細な条件,
      使用器具・容器,  測定機器の設定条件・操作 etc.
      • *同一のプロトコールを繰り返す場合は,別にプロトコール・ノートを作成して,2回目以降は「プロトコール名」を記載する.但し,実験中に気づいたこと,変更点があれば研究ノートに記入する.
      • *プロトコールの作成・変更について,笹井に報告した上で,ラボ・プロトコール集に追加・更新する.
    • 実験結果・データ
      • *計測値等を手書きで記入する他に,適宜,測定器による印刷や写真などをノートに貼る剥がれないように確り貼る
      • 可能な限り,データを電子媒体にも記録する.ただしフォルダやファイル名で,実験日,サンプル種類などが判別できるように工夫する.その上で,実験ノートにはデータ保存先を記す.とくにデータが大量である場合は,ノートにはデータ保存先を記す.
      • *データを整理・解析した図表も,可及的速やかに貼る.
      • *データ(結果)に対する考察・解釈の要点も適宜,簡潔に記す.
    • 次回に対する課題,修正・変更点,気づきなども簡潔に記す.

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 【卒業論文】

B. 研究論文(原著論文)とは
  1. 論文は「問題解決」の過程です 1).  よって次のような構成が必須です.
    • 問題提起:  背景
    • 解答を得るためのアプローチ:  材料・方法,結果(図表も含む)
    • 問題に対する解答:  考察・結論
    *当然このような着眼で,背景調査実験計画の立案もすすめます.
  2. 読み手に分かりやすく表現すべきもの 1-8).  多くのひとに読まれてこそ,研究の意義が高まります.
  3. 図表こそが論文のエッセンス 6).  優れた論文ほど,図表をながめれば概略がわかるように表現されています.

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C. 論文作成の手順 2, 3, 5, 6)
  1. 研究のはじめから,随時,参考文献情報をシリアル番号付きリストに整理しておきます.参考文献を引用する箇所に,その文献番号を挿入しながら論文作成を進めます.
  2. 実験開始とともに材料・方法を作成しはじめ,以降で平行して進めましょう.
  3. 結果の図表化
    • 実験の実際も勘案して適正なデータ処理をおこないます.
    • 結果の要点を考察し,それを表現する適切な図表形式について思案しましょう.
    • 図表形式の思案では,絵コンテのような手書きを活用すると考えやすいです.
  4. 結果考察に関して笹井と議論
    • 大学院や研究者の場合,議論する相手はラボ・ボスの他,ラボ・メイト,他ラボの共同研究者,学会発表の観衆などです.
  5. 論文のアウトライン(ストーリー展開)作成
    • iii-vは同時進行.作成した図表を並び替えながら配置順を思案して,アウトラインを決めましょう!
    • 問題提起(研究目的),アプローチ(結果),解答(考察の要点と結論)のつながり(流れ)が重要です.
    • 問題(目的),仮説,結論,強調したい点などのアイディアをメモして整理します.箇条書きが並び替えしやすいです.アイディア・マップやフローチャートならさらに考えやすく,関係性を可視化できます!
    • 結果が良くても,構成(記載順序)が悪いと論文価値が大きく下がる!と言われています.
  6. 図表の仕上げ図の説明結果の作成.
  7. 考察・結論の作成,タイトル決め
  8. 背景の作成
  9. *結果や考察・結論により背景は替わります
  10. 抄録の作成
  11. 繰り返し推敲します


D. 論文の各セクション作成 1, 3, 5, 6)
  1. 時制 論文では次のように記述します.
  2. 【原則】
    • 過去形 ← 今回の実験法・操作と得られた結果,過去に得た自身の結果
    • 現在形 ← 一般に受け入れられている事実,過去論文で導かれた結論,あるいは今回の結果にもとづく解釈,仮説,結論,論文に示した図表や統計に関すること
    • 現在完了形(英論文) ← 過去に得た自身の結果のうち今回の研究において重要なものについて言及
    【セクション別】
    • 背景:  原則に従い混在
    • 材料・方法:  概ね過去形.論文に示した統計,図表に関することは現在形
    • 結果:   同上
    • 考察:  原則に従い混在
    • 結論:  原則に従い混在
    • 抄録:  上記各セクションに対応して混在. ただし今回明らかにしたことを現在完了形とすることもあります(英論文).
    *いずれも,実際に前後の文章の時制と矛盾が生じないように注意しましょう.
  3. タイトル
    • 結果や結論が伝わるようにつけましょう
    •  悪い例)  〜に対するA薬剤の効果  *どんな効果という点(結論)が不明
    • 多くのひとの興味をひく魅力のあるタイトルをつけましょう
  4. 抄録
    • 研究目的,方法,成果,結論を簡潔に表現します
    • 成果の価値(波及効果,インパクト)を,読み手が分かってくれるように表現します

    *タイトル,抄録とも,読み手が読むべきか否かの判断を敏速・的確にできるように心がけます

  5. 背景 次の順に書いてみます.
    • 主題(問題)とそのインパクト(背景・重要性)を示します.適度・具体的な情報を盛り込みます.
    • knowns:  何が,どこまで分かっていて,
    • unknowns:  何が,どこから分かっていないのか.
    • problem (question):  今回,解決する問題の詳細・具体.
    • approach:  どうやって解決するか(動物実験,臨床研究,検出,評価など)
    • 今回結果の最重要点インパクト(重要性や波及効果)
    *ここにも,読み手が読むべきか否かの判断を敏速・的確にできるだけの材料と,本論の理解に必要な予備知識を盛り込みます.
  6. 材料・方法 対象や倫理,実験手順,サンプル作製,検出,解析,統計などについて,小見出しを付けて記述します. *他者が実験を再現できるくらいの詳しさで記載します.
  7. 例) 動物種・系統・雌雄・週令・体重・匹数
     購入試薬・製造・販売元・製品番号・使用濃度
     調整試薬・組成
     機器・製造・販売元・製品番号 etc
    英論文の数編を参考にすると理解できます.  無料で閲覧しやすい雑誌の例は以下のとおりです.
     The Journal of Physiology
     Journal of Applied Physiology
     The Journal of Cell Biology
     Journal of Cell Science
     The Journal of Biological Chemistry etc.
  8. 結果(図表)
    • 測定・検出データの図表化
    • *目的を念頭に結果の要点を考察し,それを簡潔かつ効果的に表現します.図表形式について思案します.
      *表はデータの詳細表示,グラフは直感的表示に向いています.
      *図表形式の思案では,絵コンテのような手書きを活用すると考えやすい.
      *誤差範囲や有意差も盛り込みます.
      *同じデータを図と表で重複しません.
    • 文章について,先ずは図の説明と結果を区別せずに作成してから後で分けましょう.
    • 図タイトル: 図の内容・意味・重要性を的確に表す名詞句,もしくは完全な文.上記「ii.タイトル」も参照.
      図自体の説明: グラフの縦・横軸,実験群,画像中の矢印表示など,図のつくりについての説明.
      実験法・実験条件・サンプルの説明: 読者が「材料・方法」を度々見返さなくても図中の実験が理解できる程度の簡潔な説明.さらに適宜「材料・方法」に記載しないより詳細な情報を簡潔に記します.
      文章の振り分けでは,"図表をながめれば概略がわかる"を目安に判断しましょう.
       図表の説明(caption, legend)について,英論文の数編を参考にしましょう!
      図表の要点や解釈: この部分の多くを結果に組み入れます.図表の説明と本文・結果で若干の重複もあり得ます.
    • 結果について,展開を図表配置と同順とし,小見出しを付けて整えます.
  9. 考察 先ず,以下の順でパラグラフを改めながら記述してみます.
    • 研究から直接導出された結論
    • その結論を支持する今回のデータ
    • その結論を支持する自身の過去・研究成果や他者の成果の紹介
    • その結論に反する他者の成果に対する議論(自分の方が正しいとする議論)
    • 今回結論の価値・有用性のPR
    • 末尾で結論パラグラフを簡潔に作成します.
    複数の着眼やデータがある場合は,とくに予めアウトライン(構成)を考えるとよい.例えば,幾つかの機能的な括りごとに上記の「今回データ : 支持データー : 反例に関する議論」を記述することもあり得ます.
  10. 参考文献 研究はじめからの随時に,参考文献情報をシリアル番号付きリストに整理しておきます.
    • 参考情報とともに,次のような書誌情報(情報源の情報)を記録してきます.
    •  【情報源が雑誌・投稿論文の場合】 著者名,論文タイトル,雑誌名,巻(号)頁,発表年
       【情報源が書籍の場合】 著者名,章タイトル,書籍タイトル.編者.出版社,版,出版都市,頁,発刊年
       リストの例) 1 は論文の例, 2 は書籍の例
      1. Liang C, Li X, et al. Demonstration of the route of embryo migration in retroperitoneal ectopic pregnancy using contrast-enhanced computed tomography. J Obstet Gynaecol Res. 40(3),849-52:2014.
         参考情報: ○○が××する.
      2. 著者1,著者2 他:章タイトル;書籍タイトル.編者.出版社,出版都市, pp. 195-221,2014.
         参考情報: △△は××しない.
    • 論文作成では,参考文献を引用する箇所に文献番号を挿入しながら執筆を進めます.
    • 引用した参考論文のリストを論文末尾に作成します.形式について指定様式に従いましょう.
    • 論文執筆の最後に,指定様式に従いリスト番号を振り直し,それに応じて文中の番号も修正します.


E. 論文や計画書の作成に共通す留意点 3-9)
  1. 読者を意識して分かりやすい表現に努めましょう
    • 論文作成は,他者に読まれることを目指すものです
    • 計画書は,論文作成のベースに役立ちます
    • 読んだ端から理解できるような構成・語順で表現します
  2. 重要なことから述べます *理系科学における基本です!
  3. 説得力を持たせます *具体的なデータや情報を明示(引用)します
  4. 伝える情報を予め知らせます
    • 見出しの活用
    • 概略から細部への展開
    • 文脈を明確にします → 読み手が期待する情報は提供します
    •          → 例えば,機能や性質ごとに整理して,アウトラインから定めます(作成します).
  5. 必要なことを漏らさず表現して,不要なことは書きません
  6. 情報の流れを意識します;論理展開,過不足ない情報
  7. キーワードや接続語句で文をなめらかにつなぎます
  8. 表現上の一貫性を保ちます
  9. 誤解を招かない,具体的で明確な表現を用います
  10. 説明・表現の詳細さを適正にします
  11. パラグラフを活用します
    • 1つのパラグラフでは1つのトピックだけを述べます
    • パラグラフの構成要素:
    •  トピックセンテンス + トピック・センテンスに関する細部 + 他のパラグラフとの関連
  12. 簡潔な文をつくります
    • 1つの文では1つのポイントだけを述べます.
    • 1つの文の長さを適正にします.
    • 複文の使用を極力避けます.
    • 読んだ端から理解できるような文(構造・語順)をつくります.
    • 主語−述語関係が適正な文をつくります.この関係について,日本語より英語の方が明確に要求されので,英語になぞらえて使用語や構造を検討します
    • 理解でき,なお誤解のない文(一義的理解の文)をつくります.
    • 並記法では,見ために分かりやすい表示を工夫します;記号・番号付け,レイアウトなど
  13. 単位の表記
    • 単位記号は立体(斜体でない)
    • 概ね小文字で,固有名詞由来するものは第1文字が大文字で記します.
       例) Hz, K, ただし単位名では全て小文字
    • 数字と単位の間は半角スペースを入れます. 例外もあります. 例) 1%
  14. 和文についての留意点
    • 句読点
    • 理系文書(計画書,論文,レポート etc)では,「横書き」かつ「,」と「.」を使用するのが一般的です.句読点も全角です.  縦書きでは「,」「.」が使われます.
    • 漢字と平仮名のバランス  漢字が多すぎると読みづらいので調節します
    •   漢字・かな表記を調節する語の例
       及び ⇔ および
       並びに ⇔ ならびに
       乃至 ⇔ ないし
       初めて ⇔ はじめて
       再び ⇔ ふたたび
       或る ⇔ ある
       或いは ⇔ あるいは
       即ち,則ち ⇔ すなわち
       但し ⇔ ただし
       然し,併し ⇔ しかし
       勿論 ⇔ もちろん
       従って ⇔ したがって
       殊に ⇔ ことに
       各々 ⇔ おのおの
       普通 ⇔ ふつう
       沢山の ⇔ たくさんの
       色々の ⇔ いろいろの
       他の ⇔ ほかの
             〜の通り ⇔ 〜のとおり
       〜する時に ⇔ 〜するとき(ただし,時とともに)
       〜である事は ⇔ 〜であること(ただし,事と次第では)
       〜と共に ⇔ 〜とともに
       〜に拘らず ⇔ 〜にかかわらず
       〜と言うことは ⇔ 〜ということは
              (ただし,「〜と言った」とかくことはある)
       出来る ⇔ できる
       分かる,判る ⇔ わかる
       行う ⇔ おこなう
       始める,始まる ⇔ はじめる,はじまる
       決める,決まる ⇔ きめる,きまる
       覚える ⇔ おぼえる
       当然と見える ⇔ 当然とみえる
              (ただし,山が見える)
       我々,吾々 ⇔ われわれ
       私達 ⇔ 私たち
       1つ,2つ ⇔ 一つ,二つ,ひとつ,ふたつ(ただし,2 個)
    • 「書きことばと話しことば」として,話題によくのぼる語の例
    •  書きことば ⇔ 話しことば
       (〜が)よい ⇔ いい
       (〜へ)ゆく ⇔ いく
       (〜)より ⇔ から
       (〜)のみ ⇔ だけ
       しかしながら ⇔ しかし
    • 「しかし」と「しかしながら」
    •  「しかしながら」の方がより強い逆説で,ストーリー展開や文脈を大きく転換するところで使う.それらよりも軽い単純な逆説では,「しかし」でよいと考えます.
       「しかしながら」は,「しかし」の改まった表現であり「簡潔な表現」志向に逆行します.それがゆえに転換の大きさを印象づけると考えます.
       英文では「however」がこれに相当し,和・英文ともに書き言葉として好んで使われることをよく見聞きします.一方,慣習というほかにその根拠を聞いたことがありません.
    • 句読点等の区切り記号 句読点(,.)コロン:,セミコロン;括弧「『』」{[()]} " "
    • 読点(,,)の位置により,読みやすさ(にくさ)が変わります.解釈が変わることもあります.
    • 和文における半角文字の使用
    • *半角語(半角の英数文字・記号など)の前後は,半角スペースを入れて区切ります.
       英文では半角スペースが単語と単語を区切ることは当然です.
      *和文(全角)のなかの半角語も半角語のマナーに従います.
       例) Akt は TGF-β シグナル伝達を調節します.
      *数字・記号について,その全・半角に留意して対処します.
       一方,全文にわたる統一的使用にも留意します.
       例) 全角の数字・記号: あ(12345)え, 半角の数字・記号: あ (12345) え



 【計画書】

F. 計画書とは
     研究は,課題(疑問)に対する結論(解答)を導出する過程といえます.その過程が効率的に実践されるために,要点をまとめたものが計画書です.課題,その解決に必要な実験,材料・方法,手順(含む準備)などについてまとめます.
     計画を立案することで,背景情報および自身の考えが整理されます.また,立案作業や作成した計画書が,適正な実験,材料等の調達や準備,技術習得,日程など,実験を進めるに重要かつ極めて現実的な事項を考える基盤となります.そのため計画書の立案・作成は研究や実験をするうえで必須です.
     また下記の手順から分かるとおり,計画書の立案・作成が実質的に論文執筆の始まりといえます10). *参考文献10に大変参考になる記載があります.


G. 計画書の作成手順
     文献・WEB検索などによる背景調査を進めつつ, 概ね以下の順にしたがって進めるべきです. 実験結果が出始めたところで,修正・改変されことも十分に想定されます.
  1. 【課題】 目的を端的に表現する.
  2. 【背景】 目的に関連した既知のことや,目的のインパクトなど.
  3. 【研究目的】 未知のこと. 具体的かつ明確にする. 現象,メカニズム,細胞,分子,分子シグナル etc.
  4. 【実験材料】 動物種,個体・細胞・分子; 性別,週令,必要数量,サンプリング対象 etc.
  5. 【実験方法】 実験系,対照実験における実験群,実験期間,サンプリング法,サンプル保存法,計測・検出項目とその方法,解析法 etc.
  6. 【予測される結果】 文字どおりです(仮説).
  7. 【準備や調達状況】 実験手順,技術取得,準備(含む材料等の調達)などの現状(充足・不足). 不足がある場合はその対処.
  8. 【スケジューリング】 実験手順,技術取得,準備(含む材料等の調達)をも考慮し,カレンダーに書き込むくらいに具体的な予定・日程.
*様式について,当ラボでは,MS Wordファイル, A4サイズに上記項目を簡潔に記し提出していただいています.
*手順や計測・検出法などプロトコールについては,計画書とは別に,プロトコール集としてまとめるのがよいです.


H. 参考文献等
  1. 「医学・生物学研究者のためのうまい研究発表のコツ」植村研一 著,メジカルビュー社,2005,ISBN 978-4758304108
  2. 「すばらしい論文を書くための秘訣−大学院生と若手研究者への助言」公益社団法人日本動物学会近畿支部 編,BookWay, 2014,ISBN 978-4907439811
  3. 「科学英語論文の赤ペン添削講座―アクセプトされる論文を書くコツと鉄則」山口 雄輝 著,羊土社,2005,ISBN 978-4897064796
  4. 「これから論文を書く若者のために 大改訂増補版」酒井聡樹 著,共立出版,2006,ISBN 978-4320005716,p252,274;  SUMS蔵書
  5. 「理科系の作文技術 (中公新書 (624))」木下 是雄 著,中央公論新社,1981,ISBN 978-4121006240
  6. 「ライフサイエンス論文を書くための英作文&用例500」河本健,大武博 著,羊土社,2009,ISBN 978-4758108386;  SUMS蔵書
  7. 「科学技術文を書くための基礎知識」深尾百合子 教授(東京農工大学 国際センター)*google.co.jpで検索語「科学技術文を書くための基礎知識 pdf」で辿りつけます.
  8. 「論文・レポートの書き方―構成力・表現力を身につける100のポイント」三木正 著,日本実業出版社,1978,ISBN 978-4534004376;  SUMS蔵書
  9. 「保健・医療・福祉のための論文のまとめ方と書き方」鈴木 庄亮,川田智之 著,南江堂,改訂第2版,2006,ISBN 978-4524242726;  SUMS蔵書
  10. 「必ずアクセプトされる医学英語論文 完全攻略50の鉄則」康永秀生 著,金原出版,2016,ISBN ISBN 978-4307004787 *p35-38に計画〜執筆に関わる重要なことが記されています.その他にも文献検索や論文執筆について参考になることが多数です.