地域連携を目的の一つに挙げており、地域との連携企画として各地域のレポートをご紹介します。
【子供から大人まで、メタボでストレス時代の関節炎】阿南医療センター 答島章公
脊椎関節炎(SpA)は決して珍しい疾患では無く、Common Diseaseです。多くの医師が様々な領域に関わる付着部炎の病態に無関心なため、働き盛りに原因の分からない腰背部痛や頸部痛、四肢の関節症状に悩まされ、仕事を続けられなくなっているSpAの患者さんが大勢います。そのような人たちをできる限り早く救って差し上げたいと、いつも念じております。
医員の当直表を作成している還暦前の私は、阿南医療センターの内科系救急当直を月に4回担当していますが、その中で身体所見や過去の病歴により沢山のSpA患者を見付け出しました。休む暇のない救急業務ですが、一晩の当直中に複数の新規SpAを発見することも少なくありません。サイトカインネットワークの乱れた病態を診断されずに放置され、脳、心臓血管系疾患を来している市民が大勢居ると考えられます。[続きはPDFで]
【神戸から多発性付着部炎を考察する】 阿部整形外科リウマチ科クリニック 阿部 修治
私は神戸市東灘区にある六甲アイランドで無床診療所を開設しております。この地域では神戸大学付属病院、神鋼記念病院、神戸海星病院、神戸市立中央市民病院、甲南病院と開業医で構成される東神戸リウマチ性疾患連携の会があり、年に2回集まって症例検討会や講演会を開催しています。リウマチ内科、整形外科の先生だけではなく、皮膚科医、眼科医にも参加していただいて脊椎関節炎(Spondyloarthritis; SpA)の知見を出来るだけ共有できるように工夫をしてきました。神戸大学にはブドウ膜炎の診療に関してリーダー的存在である眼科の楠原仙太郎先生、乾癬の診療に関しては国内のオピニオンリーダー的存在である錦織千佳子先生がいらっしゃるので、この会で講演をお願いしてまいりました。皮膚科、眼科の先生方のSpA及び腱付着部炎(enthesitis)に対する認識は高いように感じますし、実際、些細な関節腫脹や腱付着部(enthesis)に症状がある患者さんを皮膚科や眼科の先生から紹介いただくこともあります。私もこの東神戸リウマチ性疾患連携会の世話人の一人として微力ながら、いろいろな科の間で診療や知見を共有できるような連携システムを構築していきたいと思います。[続きはPDFで]
【北海道における脊椎関節炎診療の現況】 片山整形外科リウマチ科クリニック 片山 耕
数年前まで脊椎関節炎(Spondyloarthritis ; SpA)という病名は北海道のほとんどの医師によく理解されていなかったようです。私も、リウマチ反応陰性関節炎の別名というような理解でした。
2013年から3年連続EULAR(ベルリン、マドリード、パリ)へ行きましたが、SpAの演題がとても多いのでびっくりしました。特に、ASASによるSpAの分類基準(Axial SpA , Peripheral SpA) という過去の分類よりわかりやすい基準ができ、MRIによる早期の仙腸関節病変(骨髄浮腫;Bone marrow edema)の所見を重視することが確認され、いままであいまいだったSpAの概念をとてもわかりやすくするものと感じられました。わたしは、関節リウマチのMRIによる関節病変評価にとても関心があり、とくに骨髄浮腫病変が急速な関節破壊に関与することを研究してきたのでこの考えはなじみやすいものでした。[続きはPDFで]