ワンヘルスサイエンティスト Vol 3, 4; April 5, 2022
三菱総合研究所におけるOne Healthに関する事業等
柿沼 美智留
株式会社三菱総合研究所
ヘルスケア&ウェルネス本部 ヘルスケア・ウェルネス産業グループ
株式会社三菱総合研究所(以後、弊社)は1970年に三菱創業100周年の記念事業として設立され、我が国における民間シンクタンクの先駆けとして、社会とお客様の課題解決に取り組んできた。2020年9月に創業50周年を迎え、総合シンクタンクとしての多様な専門性や独立性、金融向けITサービスの長年の蓄積に加え、多様な連携・共創パートナーの知見やノウハウを結集し、社会とお客様の多様な課題に向き合い、その解決を通じた価値の提供に努めている。
One Healthに関する事業としては、感染症対策に関する調査や感染症に関する研究開発支援等を実施している。特に、薬剤耐性菌(AMR)対策に関する調査研究や薬剤耐性菌による健康リスク評価等の業務に取り組んでいる。また、One
Healthの周辺領域として、食中毒などの食品安全のリスク評価や、水・空気といった環境問題に関する調査等も実施している。
2019年にはOne Healthアプローチの推進には、ヒトだけでなく動物や環境も含めた分野横断的アプローチが必要との課題認識から、ヘルスケア、環境、食品、リスクマネジメント等の専門性を持ったメンバーで構成された、社内の自主研究会を立ち上げ、One
Healthに関する分野横断的なデータ(”One Health Data”と呼称)の収集、リスク評価・リスクマネジメント等への活用に関する検討を進めている。さらに、医療系、環境系の研究者にご参加いただいて”One
Health Data”研究会を開催(2021年4月時点までに2回開催)している。本稿では、これら研究会での議論を踏まえ、One Healthアプローチに関する政策を進めるために必要な仕組みについて、弊社の「One
Health Information創出ネットワークシステム」構想を紹介する。
One Healthアプローチに関する政策を進めるためには、リスク評価をもとにした対策の検討と施策評価を行う必要がある。つまり、リスク評価結果等根拠となるような科学的な情報(”One Health Information”)が必要であり、その情報を得るためには分野横断的な科学的なデータ(”One Health Data”)を重ね合わせる必要がある。ただデータを集めるだけではなく、すぐに政策に活用できる情報の形にすることがポイントであると考えている。そこで、政策を進めるために必要な”One Health Data”を定期的/全国的/全世界的に収集し、その総合的な分析に基づいて”One Health Information”を導くような仕組みが必要であると考えている。例えば災害対応の分野ではSIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)が開発され、災害対応に必要とされる情報を府省庁、自治体・公共交通機関、研究機関、民間企業等の多様な情報源から収集し、利用しやすい形式に変換して迅速に配信する機能を備えており、実際に災害時に活用されている。One Healthアプローチにも、このような仕組みが必要ではないかと考えて、ただデータを収集・保存するのではない「One Health Information創出ネットワークシステム」を提案している。
弊社では今後総合シンクタンクとしての幅広い知見やコネクションを活かし、「One Health Information創出ネットワークシステム」構想実現に向けて取り組んでいきたい。
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