脳卒中と医療連携
脳卒中地域連携パスは、なぜ必要なのでしょう?
急性期病院の治療成績の差は
急性期病院は、なぜ2週間程度の入院でリハビリテーション病院に転院、その後の外来通院も近隣のクリニックに依頼するなど、急性期が終わると診療を担当しないのでしょうか。
急性期脳梗塞治療では、遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)を代表とする薬物療法が注目されがちです。しかし、日本国内あらゆる病院で平等に薬剤が使用可能です。また、rt-PAは脳卒中の専門医不在では使用困難であり、急性期脳梗塞患者全体のわずか2%程度に過ぎません。つまり、日本国内の脳梗塞治療では、薬物療法の医療機関別格差はありません。
急性期脳卒中の治療成績に差が出る要因のひとつは、リハビリテーションです。2008年3月1日〜2009年2月28日に日本医科大学千葉北総病院脳神経センターに入院した急性期脳卒中患者は495例、そのうち48.4%の患者が介助なしで歩行できる状態で退院または転院しています。重症搬送が多い三次救急病院でこれだけの治療成績なのは、ほとんどの症例で入院翌日よりリハビリテーション医が介入しているからです。リハビリテーションの効果は軽症例ほど顕著であり、急性期リハビリテーションの有無が、軽症患者では社会復帰と要介護の差になりえます。したがって、「軽症のラクナ梗塞は非専門施設で可能」とする考えは間違いと考えます。急性期のリハビリテーションができる脳卒中専門施設での治療が望ましいと思います。
急性期病院と回復期施設の違い
しかし当院のリハビリテーション科も、マンパワーと設備は回復期リハビリテーション病院には劣ります。最近の回復期リハビリテーション病院は、リハビリテーション用最新機器の他、在宅に向けてトイレ・入浴なども練習する設備を備えています。スタッフが患者の退院に向けて自宅に出向き、手すりの高さや便器・浴室など家屋の改築の指導まで対応しています。在宅でのリハビリテーションをサポートする体制も整っている施設もあります。急性期は「疾病」、回復期は「障害」、維持期は「生活」を対象にしています2)。急性期病院は次のステップの「障害」までは介入できても、「生活」まで関与する体制がありません。患者にとって、急性期病院で入院を続けるよりも、回復期リハビリテーション病院に転院した方が充実したケアを受けられ、退院後を見据えた準備も可能なのです。
脳卒中におけるかかりつけ医の役割
自宅退院後はどうでしょう。脳卒中患者の多くは、高血圧・糖尿病・脂質異常症などリスクファクターを合併しています。このリスクファクター管理が再発予防に重要であることは明白です。再発しなければ脳に関与する特殊な知識は不要であるし、気になる症状があれば、そのときだけ急性期病院に診察を依頼すればよい。したがって、慢性期脳卒中患者の日常の外来診療は、脳の知識しかない脳神経外科医や神経内科医が担当するよりも、そのリスクファクターの管理に長けた、かかりつけ医が適していると言えます。
脳卒中診療では医療連携が必須
医療連携は、医療財政と医療機関の事情で始まったものですが、患者にとってメリットがあります。しかし、この「餅は餅屋」の発想が一般の方にはご理解いただけず、回復期のリハビリテーションも引き続き急性期病院で、外来通院も急性期病院を希望されることが多いです。転院を「追い出された」と誤解される患者・家族もいらっしゃいます。したがって、当該地域の医療連携の仕組みと有用性を急性期病院入院時にご理解いただくことが必要であり、そのためにも目に見える形の医療連携システムを構築することが必要なのです。
参考文献
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三品雅洋:印旛脳卒中地域連携パス概論。印旛市郡医師会報 第49巻 2009.10 p38-57, 2009
- 橋本洋一郎. 脳卒中地域連携クリティカルパス作成とその応用. 柳澤信夫, 篠原幸人, 岩田誠ら編. Annual Review 神経 2009. 中外医学社, 東京 (2009) p. 112-120.
- 三品雅洋、金景成、小林士郎:脳卒中地域連携パス。日本医科大学医学会雑誌 Vol. 6, No 3, 152, 2010