脳血液量の変化を利用したYes/No検出装置

 完全Locked-in状態のALS患者さんとのコミュニケーション装置が日立製作所等の協力により開発されたことが先日の新聞に報道されていましたので詳細を報告します。
 
 現在、伝の心等の入力スイッチとして利用されているバイオスイッチとしては筋電流・眼電流等を利用するもの(EMOS等)と脳波を利用するもの(MCTOS等)がありましたが今回開発された装置は近赤外線を利用して脳血流量の変化を読み取るものです。
 
 リラックスしている状態から頭を使う状態に変わると前頭葉の血液量が増えます。その変化を利用してスイッチをON/OFFします。質問に対して患者は、頭を使う(Yes)かリラックス(No)したままかを選択することによりYes/Noの回答を装置に答えさせることができます。すなわち、患者がYesと回答したいときは暗算したり、あるいは頭の中で歌を歌う等により、脳を活性状態に変化させます。この結果、前頭葉に血液が集まるので、この血液量の変化を測定し、血液量が増えたら、「検出装置」はYesと回答する。一方、Noと回答したいときは、リラックス状態を保持すると血液量が変わらないので、「検出装置」はNoと回答します。
 
 血液量の測定には、人体を透過しやすい近赤外光を使い、頭蓋骨を通して光を脳に送ると、脳の表面付近で散乱され、光の一部が頭蓋骨を通って戻ってきます。戻りの光量(検出光量)が減るのは血液量の増加が原因ですからそれを測定しています。検出光量と血液量の増減は逆の関係になります。
 
 測定は3区間からなり(リラックス区間1、回答区間、リラックス区間2)各区間は12秒に設定してあるので1つの問いかけに対して36秒経過して回答が得られます。
 
 本装置は正答率に個人差があり、誰でもスイッチを押せばテレビがつくような訳にはいきませんが、ほぼ80%程度は期待できるようです。
 

脳血液量測定の原理 Yesの判定例
図1 脳血液量測定の原理 図2「Yes」の判定例
 
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