ACAT-1欠損マウスにおける動脈硬化進展抑制

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科

北峰哲也1、石橋俊1、野牛宏晃1、陳忠1、大須賀淳一1、Stephane Perrey1、岡崎啓明1、田村嘉章1、矢作直也1、塩之入太1、飯塚陽子1、大橋健1、原田賢治1、後藤田貴也1、島野仁1、山田信博2

【目的】ACATKOマウスとapoEKOマウスおよびACATKOマウスとLDL receptor(LDLR)KOマウスを交配したダブルKOマウスを作成し、動脈硬化に対するACAT-1の影響を検討した。【方法】3ヶ月齢のapoE(-/-)ACAT(+/+)およびapoE(-/-)ACAT(-/-)にwestern diet(1.25% コレステロール、0.5% コール酸、15% ココアバター)を2ヶ月間与えた。一方、3ヶ月齢のLDLR(-/-)ACAT(+/+)およびLDLR(-/-)ACAT(-/-)にPaigen diet(15% コレステロール、15% 無塩バター)を2ヶ月間与えた。それぞれCho負荷前および後に採血し、血漿中総コレステロール(TC)値の測定を行った。大動脈は縦方向に切開し、内腔の動脈硬化病変面積を測定後、脂質抽出を行い、コレステロール含量を測定した。さらに大動脈洞の組織切片を作成し、Oil red Oで染色された面積を測定した。【結果】apoE(-/-)ACAT(+/+)およびapoE(-/-)ACAT(-/-)の血漿中TC値はそれぞれ1471±472および857±157 mg/dlであり、apoE(-/-)ACAT(-/-)はapoE(-/-)ACAT(+/+) に比し有意に低値を示した(P<0.01)。一方、LDLR(-/-)ACAT(+/+)およびLDLR(-/-)ACAT(-/-)ではそれぞれ、1918±453および2045±296 mg/dlであり両群間に差は認められなかった。大動脈洞のOil red O染色面積はapoE(-/-)ACAT(+/+)およびapoE(-/-)ACAT(-/-)でそれぞれ0.22±0.09および0.14±0.09 mm2であり、apoE(-/-)ACAT(-/-)はapoE(-/-)ACAT(+/+)に比し有意に低値を示した(P<0.05)。一方、LDLR(-/-)ACAT(+/+)およびLDLR(-/-)ACAT(-/-)ではそれぞれ、0.29±0.05および0.13±0.05 mm2であり、LDLR(-/-)ACAT(-/-)はLDLR(-/-)ACAT(+/+)に比し有意に低値であった(P<0.001)。大動脈中エステル型コレステロール含量はapoE(-/-)ACAT(-/-)およびLDLR(-/-)ACAT(-/-)でそれぞれapoE(-/-)ACAT(+/+)およびLDLR(-/-)ACAT(+/+)に比し有意に低下した。【結論】ACAT-1の欠損によりapoEKOマウスおよびLDLRKOマウスの動脈硬化の進展は抑制された。