低反応性低血糖で発見され、心房中隔欠損症等の小奇形を合併した多発性インスリノーマの一例
1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2東京大学医学部腎臓内分泌内科
冨田佐智子1、石橋俊1、後藤田貴也1、塚本和久1、野田光彦1、浅野知一郎1、戸辺一之1、柴崎芳一1、門脇孝1、藤田敏郎2、木村哲1
60歳、女性。58歳時に心房中隔欠損症による心不全を発症。パッチ術施行時に、頻回の
食後低血糖による意識消失を訴え、当科受診。右小眼球症と先天性白内障、右2・3足指半
癒合等の小奇形を認めた。40時間絶食時の血糖 29mg/dl、IRI 6uU/ml, 血中CPR 2.2ng/ml
, グルカゴン注入後の血糖上昇が32mg/dlだった。腹部CTと血管造影にて膵体尾部にそれ
ぞれ1つずつの腫瘤が認められた。臨床的に多発性インスリノーマと診断し、オクトレオ
チド皮下注により低血糖発作を予防した。膵体尾部脾臓切除施行。手術標本で膵に径1.2c
mまでの赤褐色充実性腫瘤を最低5個、組織学的には大小様々な大きさの40個程度の結節を
認めた。腫瘤内にはインスリン産生細胞以外にグルカゴン産生細胞も散見され、既存のラ
氏島の過形成が認められ、病理組織学的にも多発性インスリノーマと診断された。