新規に同定されたマクロファージコレステロールエステラーゼ(MCEH )は泡沫化現象を規定するリパーゼである

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学大学院人間総合化学研究科内分泌代謝・糖尿病内科、3自治医科大学内科学内分泌代謝学部門

五十嵐正樹1、大須賀淳一1、関谷元博1、岡崎啓明1、武内謙憲1、矢作直也1、山田信博2、石橋俊3、門脇孝1

【目的】マクロファージでの中性コレステロールエステル水解酵素(NCEH )活性を担う遺伝子としてホルモン感受性リパーゼ(HSL )とは別に同定されたMCEH について生化学的特性およびマクロファージ泡沫化改善への寄与を検討した。【方法と結果】まず、アデノウイルスで293 細胞にMCEH 遺伝子を過剰発現させてMCEH の酵素特性を調べた。MCEH のNCEH 活性は中性領域にピークをもち、低濃度のNaCl により活性化され、さらに高濃度のNaCl では軽度の抑制を認めた。また、cyclic AMP により軽度の活性化を認めた。次に、マクロファージでの泡沫化への寄与を調べるため、アデノウイルスをTHP‐ 1 細胞に導入してMCEH の過剰発現をおこなうとコントロールに比べ5 倍程度NCEH 活性が上昇し、アセチル化LDL による泡沫化を40%程度抑制した。細胞株によってHSL とMCEH の発現比は異なり、マウス腹腔マクロファージ(MPM )で1 :11 、RAW で1 :1 であった。MCEH のそれぞれの細胞での生理的寄与を調べるため、RAW ではlipofection 、MPM ではアデノウイルスにより、MCEH 遺伝子に対するsiRNA の導入をおこなったところ、MPM でNCEH 活性の有意な低下を認めた。【総括】MCEH はNCEH 活性をもち、抗泡沫化作用を示す。またマクロファージ細胞株によりその発現は異なり、生理的寄与も異なることが示唆される。