kynurenine aminotransferase-1（KAT-1）高血圧自然発症ラット（SHR）における内臓脂肪蓄積の原因遺伝子の探索

¹東京大学糖尿病代謝内科
²筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌
³自治医科大学内分泌代謝学
⁴東京大学臨床分子疫学

飯塚陽子¹、大須賀淳一¹、周宇璢¹、矢作直也¹、大橋健¹、島野仁²、石橋俊³、山田信博²、門脇孝¹、後藤田貴也⁴

【目的】これまでにわれわれは本学術集会において、高血圧自然発症ラット（SHR）にはCd36遺伝子を欠損するSHR/NCrjと欠損しないSHR/Izmの2 系統が存在することを報告して来た。本研究では両SHRの間に差が見られた代謝指標や内臓脂肪組織重量についてその遺伝的背景を探る。
【方法】SHR/IzmとSHR/NCrj（各n=20）およびその交配に由来するF2群（雄、n=144）を対象として、12週齢時に体重、脈拍、血圧、血糖値、血清脂質値および副睾丸周囲脂肪組織重量を測定し、F2群ではCd36遺伝子変異の遺伝子型と各表現型との間の相関を調べた。またSHR/IzmとSHR/NCrj（各n=4）の脂肪組織からRNAを抽出し、Affymetrix社のGeneChipを用いて発現解析を行なった。
【成績】1 ）F 2 群における解析では血糖値、コレステロール値、遊離脂肪酸値はいずれもCd36遺伝子変異と有意な相関を示した（それぞれp＜0.0003、p＜0.0001、p＜0.02）。2 ） 一方、SHR/NCrjでは体重とは無関係に脂肪組織重量が有意に減少していた（p＜0.0001）が、F2群における解析では脂肪組織重量の差違はCd36遺伝子変異の有無とは相関を示さなかった（p=0.87）。3 ）脂肪組織RNAに関するマイクロアレイ解析の結果では、両SHR間で発現量に大きな差を示す遺伝子が複数同定された。
【結論】同一祖先に由来し遺伝的に極めて類似した両SHR strain間には内臓脂肪蓄積に関連する、Cd36とは別の遺伝子に差違が存在することが示唆された。