新規マクロファージコレステロール水解酵素MCEHの分子構造とその特性

1東京大学 医学部附属病院 糖尿病代謝内科
2筑波大学 大学院 人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科
3自治医科大学 内科学 内分泌代謝科学部門

五十嵐正樹1、大須賀淳一1、関谷元博1、高瀬暁1、岡崎啓明1、矢作直也1、大橋健1、山田信博2、石橋俊3、門脇孝1

【目的】HSLノックアウトマウスの腹腔内マクロファージではNCEH活性が残存し、その残存活性を担う候補遺伝子として同定されたMCEHについて構造、局在および機能を解析する。
【方法】データベースでHSLとMCEHの蛋白構造を比較し生化学的な特性を調べた。アデノウイルスを用いてMCEHを泡沫細胞に導入し、泡沫化に対する影響を検討した。
【成績】データベースの検索からMCEHの蛋白構造はHSLに類似しており活性中心を担う領域などに関して高い相同性をもつ。しかし、セリン残基を含むリン酸化に関わる領域に関して相同性がほとんどない。293細胞にMCEH発現ベクターを導入し32Pで標識したorthophosphateを含む培養液で培養したところMCEHはリン酸化されなかった.Forskolinを添加しても同様であった。また、MCEHは、N末端に疎水性の23個のアミノ酸配列があり膜に繋留している可能性がある。可溶性画分と膜分画に分画することで膜分画に局在することがイムノブロットで確かめられた。次いでアセチル化LDLで泡沫化させたTHP- 1 細胞にアデノウイルスでMCEH遺伝子を過剰発現させた.コントロールに比べ100moi以上で有意にNCEH活性が上昇し、コレステロールエステルが減少した。また、14C oleateを用いたcholesterol ester formation assayでMCEHを過剰発現した場合に有意にコレステロールエステル生成が低下した。
【結論】MCEHはHSLと同様にNCEH活性をもつが、細胞内局在や制御機構は異なり、マクロファージでのHSLとは異なる役割が示唆される。