kynurenine aminotransferase-1(KAT-1)過剰発現が高血圧自然発症ラットの血行動態と代謝指標に及ぼす影響の検討
1東京大学糖尿病代謝内科
2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌
3自治医科大学内分泌代謝学
4東京大学臨床分子疫学
飯塚陽子1、大須賀淳一1、周宇ハン1、矢作直也1、大橋健1、島野仁2、石橋俊3、山田信博2、後藤田貴也4、門脇孝1
【目的】これまでにわれわれは、metabolic syndromeのモデル動物であるSHRの原因候補遺伝子KAT-1に機能的変異が存在することなどを報告してきた。本研究ではKAT-1をin vivoで過剰発現し、その病態生理学的機能を調べる。
【方法】KAT-1を発現するアデノウイルスベクター(adv)を作製し、microinjection法にてSHRの延髄吻側腹外側野(RVLM)に選択的に投与し、血行動態をtelemetryにて評価した。次に交感神経活動を評価するため、24時間蓄尿中のカテコラミン分泌を測定した。さらにインスリン感受性の評価としてinsulin tolerance test(ITT)を行い、またRVLMへのキヌレン酸の選択的投与による血圧の変化も調べた。
【成績】1)microinjection法により、SHRのRVLM領域での選択的なKAT-1の過剰発現が確認された。LacZベクターに比べてKAT-1ウイルスベクターを投与したSHRでは、2)血圧や脈拍の減少を認め、この傾向はラットの交感神経活動が高まる夜間により顕著に認められ、3)24時間尿中カテコラミン測定の結果ではノルアドレナリンのみならず、アドレナリン、ドーパミンも有意に低下し、4)ITTの結果ではインスリン感受性が改善する傾向が認められた。5)KAT-1を過剰発現させたSHRでは、RVLMへのキヌレン酸の投与により生ずる血圧低下は著しく減弱していた。
【結論】KAT-1の異常がSHRにおける高血圧や交感神経活動亢進、インスリン抵抗性などの病因の一部を成す可能性が示唆された。