Scavenger receptor expressed by endothelial cells (SREC)-Iは、Lipopolysaccharide (LPS)により誘導されるマクロファージの主要なアセチルLDL受容体である

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2理化学研究所細胞生化学研究室、3株式会社中外医化学研究所、4帯広畜産大学原虫病研究センター・ゲノム機能学分野、5筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌、6東京大学大学院薬学系研究科衛生化学教室、7自治医科大学内分泌代謝科

田村嘉章1、大須賀淳一1、安達栄樹2、鎌田宣夫3、鈴木宏志4、島野仁5、辻本雅文2、新井洋由6、石橋俊7、門脇孝1

【目的】SREC-Iはscavenger receptor A (SR-A)同様、アセチルLDL(Ac-LDL)をリガンドとするスカベンジャー受容体だが、その生理機能は不明である。SREC-Iは腹腔マクロファージ(MPM)に発現しているが、SREC-I欠損マウス(SR-A+/+/SREC-I-/-)のMPMでは、Ac-LDLの取込みは低下しない。そこでSR-AとSREC-Iのダブル欠損マウス(SR-A-/-/SREC-I-/-)を作成し、SR-A欠損MPMでのSREC-IのAc-LDL取込みへの寄与を、LPS刺激の有無の条件下に検討した。【方法】SR-A+/+/SREC-I-/-をSR-A欠損マウス(SR-A-/-/SREC-I+/+)と交配し、SR-A-/-/SREC-I-/- を得 た。これらのMPMをLPS(100ng/ml), 12時間刺激後にSREC-I及び他のAc-LDL受容体の発現量の変化を調べた。次にMPMをLPS刺激/非刺激後に125IラベルしたAc-LDL(2.5, 5, 10, 20μg/ml)を加え37℃、5時間培養し、Ac-LDLの取込みと分解量を検討した。【成績】LPS刺激によりSREC-Iの発現はmRNAで4倍、タンパクで2倍増加し、SR-Aの増加率より大だった。他のAc-LDL受容体の発現は不変か減少した。SR-AはLPS非刺激下でAc-LDL取込みの85%に寄与していた。LPS刺激により、野生型(wildtype)ではAc-LDLの取込みが1.8倍に増加したが、SR-A+/+/SREC-I-/- の取込みはwildtypeに比べ低下しなかった。一方、SR-A-/-/SREC-I-/- はSR-A-/-/SREC-I+/+に比べ、LPS刺激下で49%取込みが減少した。LPS刺激下でのAc-LDLの取込みに果たす寄与率は、SR-A 90%, SREC-I 6%と計算された。他のAc-LDL受容体の寄与率は全体で4%であり、刺激前より31%減少した。【結論】MPMにおいてSREC-IはLPSにより発現が誘導され、LPS刺激を受けたSR-A欠損MPMにおいては、主要なAc-LDL受容体であると考えられた。