ホルモン感受性リパーゼの欠損はレプチン抵抗性を来たす
1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌、3自治医科大学内分泌代謝学、4東京大学医学部循環器内科
岡崎啓明1、大須賀淳一1、矢作直也1、関谷元博1、冨田佐智子1、大橋健1、島野仁2、山田信博2、石橋俊3、永井良三4
【目的】動脈硬化の主要な危険因子である糖脂質代謝異常において、レプチンは重要な役割を果している。レプチンは、中枢神経系を介した食欲抑制や、脂肪組織など末梢組織における脂肪分解亢進・エネルギー燃焼の亢進などを介して、糖脂質代謝を改善するといわれている。しかしこのレプチンの糖脂質代謝改善効果における脂肪分解の役割はよく分かっていない。【方法】我々は以前に、脂肪細胞における主要な中性脂肪分解酵素であるホルモン感受性リパーゼ(HSL)の欠損マウス(HSLKO)を作成し、HSLKOでは脂肪分解反応が減弱していることを報告した。今回は、このHSLKOにレプチンの組み換えアデノウィルス(Ad-lep)を用いてレプチンを過剰発現させ、HSL欠損がレプチン作用に及ぼす影響について検討した。【結果・考察】Ad-lep投与により、WT、HSLKOとも血漿レプチン濃度は有意に上昇、2群間に有為差は認めなかった。体重・摂食は、WT、HSLKOともに減少、2群間に有意差は認めなかった。脂肪組織は、WTではほぼ完全に消失したが、HSLKOでは有意に残存していた。血漿血糖は、WTでは有意に減少したが(177.7 ± 13.7 → 84 ± 14.5)、HSLKOでは有意な減少を認めなかった(167.7 ± 6.7 → 134 ± 22.5)。血漿インスリンは、WTでは有意に減少したが(102.6 ± 31.0 → N.D.)、HSLKOでは有意な減少を認めなかった(470.9 ± 259.5 → 223.8 ± 122.2)。【結語】HSLKOではレプチンによる脂肪分解および糖代謝改善効果が減弱していたことから、HSL欠損はレプチン抵抗性を来たすこと、脂肪細胞における脂肪分解がレプチン作用において重要な役割を果していることが示唆された。