糖尿病の動脈硬化におけるインスリン抵抗性の意義
1筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌、2東京大学医学部糖尿病代謝内科、3自治医科大学内分泌代謝学
島野仁1、飯田薫子1、高橋昭光1、曽根博仁1、鈴木浩明1、豊島秀男1、矢作直也2、大須賀淳一2、石橋俊3、山田信博1
糖尿病における動脈硬化症進展のメカニズムはレムナント血症など血中脂質異常がそのひとつと考えられているが複雑で詳細は不明である。マルチプルリスク症候群を視点に入れ、我々の最近の報告を紹介しながら、インスリン抵抗性や高インスリン血症が動脈硬化症のリスク形成にどのように関与しているかを議論していきたい。
インスリン抵抗性改善薬チアゾリジン系薬剤のPPARγやLXRを介したマクロファージへの作用の研究が精力的に行われている。我々はチアゾリジンの動脈硬化症モデル動物への投与実験を試み、この薬剤がin vitroにおいて示唆される泡沫化への影響とは別に、抗動脈硬化症作用を有することを示唆する結果が得られた。今後臨床的な検討が望まれる。
高インスリン血症がもたらすマクロファージの影響を検討するための基礎情報として、インスリンがマクロファージ系細胞の遺伝子発現に及ぼす影響を網羅的に検討した。その結果最も発現が増加した遺伝子にTNFαとBclXLが認められた。インスリンがマクロファージにおいて炎症性サイトカインやアポトーシス抑制に関与する遺伝子の発現に影響を与えることは動脈硬化症の進展への影響を検討する上で興味深い。
マルチプルリスクファクターのモデル動物作成を試み、肥満、インスリン抵抗性のモデル動物であるレプチン欠損ob/obマウスとLDL受容体欠損マウスと交配した。このマウスは著明な高レムナント血症と動脈硬化自然発症をきたした。過食やエネルギーバランスの破綻が動脈硬化リスク形成において重要であることを示した好例となった。レムナント形成やインスリン抵抗性についてSREBP-1の関与も深く示唆された。