血管内皮細胞スカベンジャー受容体SRECの発現調節

1東京大学大学院内科学、2筑波大学臨床医学系内科、3理化学研究所細胞生化学研究室、4東京大学大学院薬学研究科衛生化学教室

田村嘉章1、大須賀淳一1、大橋健1、後藤田貴也1、島野仁2、安達栄樹3、新井洋由4、永井良三1、山田信博2、石橋俊1

【目的】SREC(scavenger receptor expressed by endothelial cells)は血管内皮細胞に発現し、アセチルLDLをリガンドとするレセプターであるが、そ の生理的意義は依然不明である。われわれはSRECの発現に影響を及ぼす因子としてLPSを同定し、その制御の特徴をin vitro及びin vivoにて検討 した。【方法】1)マウス腹腔マクロファージ(MPM)及びヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)をLPS(100ng/ml)で12時間刺激した。MPMではLPSの 濃度(0, 0.1, 1, 10, 100, 1000ng/ml)及び時間(0,1,2,4,8,12,24h)を変えて刺激した。2)雄性マウス(C57Bl6) にLPS(10μg/gBW)を腹腔内投与し、0, 2, 6, 12, 20時間後に肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓を摘出した。3)1), 2)よりポリA(+)RNAを調整し、ノーザンブロットにより、SREC及び他の scavenger receptor (SR-A, LOX-1)の発現量の変化を検討した。【結果】1)MPMでは、LPS処理後SRECの発現が増加し、刺激後12時間で最大4倍 に上昇した。誘導は濃度依存的で、増加率はSR-Aよりも過大であり、LOX-1より過小だった。2)HUVECでは、LPSによるSRECの発現誘導は認 めなかった。3)LPSを腹腔内に投与後、SR-Aの発現は腎以外の臓器で2時間後以降持続的な増加を認め、LOX-1の発現はすべての臓器で2時間後 を最大とする一過性の増加を認めたが、SRECの発現には一貫して変化を認めなかった。【結論】MPMではSRECのmRNAの発現はLPSにより誘 導を受けることが明らかとなった。HUVECではLPSによるSRECの発現誘導は認めなかった。またin vivoでの臓器レベルでの発現の誘導も認め なかった。MPMでLPSによりSRECの発現が誘導されることから、SRECが何らかの炎症反応に関与していることが考えられた。