動脈硬化形成におけるホルモン感受性リパーゼ(HSL)の役割

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌

大須賀淳一1、石橋俊1、Stephane Perrey1、北峰哲也1、岡崎啓明1、田村嘉章1、矢作直也1、原田賢治1、島野仁2、山田信博2

【目的】HSLはトリグリセリドとコレステロールエステル(CE)を水解する酵素で、脂肪組織のみならずマクロファ−ジにも発現し蓄積したCEを水解して泡沫化を制御している可能性がある。動脈硬化形成におけるHSLの役割についてHSL欠損マウス(HSLKO)を用いて検討した。【方法】1. チオグリコ−ル酸で刺激したマウス腹腔マクロファージ(MPM)を使用した。β-VLDLは高コレステロ−ル食で飼育したLDL受容体欠損マウス(LDLRKO)の血漿より超遠心法で調整した。2. MPMの細胞蛋白を抽出し抗マウスHSL抗体でイムノブロットを行い、中性でのCE水解(NCEH)活性を測定した。3. [1- 14C]オレイン酸をβ-VLDLと共に取り込ませ細胞内でエステル化されたCEの放射活性を測定した。4.HSLKOとLDLRKOを交配しHSLとLDLRの両者を欠損するマウス(HSL/LDLRKO)を作成した。生後1年の血漿脂質と大動脈起始部の動脈硬化病変を解析した。【成績】1.イムノブロットでHSLKOのMPMにはHSLは認めなかった。2.MPMのNCEH活性はWTとHSLKOで同等であった。3.MPMの CEの形成能はWTとHSLKOで差はなかった。 4.HSL/LDLRKOの動脈硬化病変はLDLRKOに比べ約1.9倍進展していた。ただし、HSL/LDLRKOはnon HDL分画のコレステロールが約1.4倍増加していた。【結論】HSLの存否に拘わらず細胞は同等にCEを蓄積した。HSL非依存性のCE水解機構の存在が示唆された。HSLの欠損により動脈硬化は進展したがリポ蛋白の影響が大きいと考えられた。