組み換えアデノウィルスを用いたホルモン感受性リパーゼ過剰発現によるマクロファージの脱泡沫化
1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌
岡崎啓明1、大須賀淳一1、田村嘉章1、冨田佐智子1、北峰哲也1、原田賢治1、磯尾直之1、塚本和久1、山田信博2、石橋俊1
【目的】 マクロファージ(Mφ)の泡沫化は動脈硬化病変の形成に重要な役割を果たしている。Mφに蓄積されたコレステロールエステル(CE)は、中性CE水解酵素(NCEH)、主としてホルモン感受性リパーゼ(HSL)により分解されるが、その活性調節の泡沫化制御に及ぼす影響について、一定した見解は得られていない。我々は、HSLの組み換えアデノウィルス(Ad-HSL)を作成し、その過剰発現がMφ泡沫化に及ぼす影響について検討した。
【方法と結果】 CMVをpromoterとした第二世代組み換えアデノウィルスを用い、293細胞による相同的組み換え法によりAd-HSLを作成した。 Ad-HSLを293細胞に感染、ウェスタンブロッティングによりHSL蛋白の発現を確認、NCEH活性の測定により発現蛋白の活性の確認をした。 β galを組み込んだ組み換えアデノウィルス(Ad-β gal)を、THP-1細胞にMOI 100で感染させることにより、2〜3日で十分なβ gal活性が認められた。最後に、アセチル化LDL 100 μg/ml 24時間の処理により泡沫化させたTHP-1細胞に、Ad-β galあるいはAd-HSLをMOI 100で1〜3日感染させ、脱泡沫化の有無を、14C-oleate BSAを用いたCE formation assayにより検討した。その結果、 Ad-β gal感染細胞に比較してAd-HSL感染細胞では、1日目で54.1 % (66.6 → 30.6 nmol/ mg protein)、2日目で77.5 % (117.2 → 26.4 nmol/ mg protein)、3日目で86.0 % (241.5 → 33.9 nmol/ mg protein)とCE formationの抑制を認め、HSLの発現量に依存した脱泡沫化が確認された。
【考察】 HSL過剰発現によるMφの脱泡沫化を初めて確認した。in vivoでのHSL過剰発現による動脈硬化病変の退縮は、今後の課題である。