家族性低βリポ蛋白血症の遺伝子解析:新たな短縮型アポB、アポB-54.4のホモ接合体の同定

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2徳島文理大学大学院薬学研究科、3聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター、4聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科、5東京大学医学部感染症内科

大橋健1、石橋俊1、田村嘉章1、飯塚陽子1、矢作直也1、大須賀淳一1、村上透2、柳川明3、石田尚志4、木村哲5

【目的】家族性低βリポ蛋白血症は、低LDL血症および血中アポB濃度低値を特徴とする常染色体共優性遺伝疾患である。本症ではアポB遺伝子の変異により異常な短縮型アポBを生ずるが、今回我々は新たな短縮型アポBであるアポB-54.4による一家系を同定したので報告する。 【方法】症例は21才男性。精神発達遅滞により精神科通院中、偶然低コレステロール血症を指摘された。脂肪便・慢性下痢の既往はない。両親はいとこ婚。一般身体所見ならびに神経学的所見は正常。検査所見はT. Chol 59 mg/dl、TG 33 mg/dl、HDL-C 51 mg/dl、アポB 1 mg/dl(正常 51-111 mg/dl)、ビタミンE 0.38 mg/dl(正常 0.75-1.41 mg/dl)。有棘赤血球なし。腹部超音波検査にて軽度の脂肪肝を認める。リポ蛋白分画のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析では、患者血漿は正常のアポB-100を欠き、VLDLおよびLDL分画に分子量約290 kDaの異常バンドを認め、アポB-100全長の55%程度に相当する短縮型アポBと推定された。患者白血球よりゲノムDNAを採取し、PCR法によりアポB遺伝子の該当領域を増幅、ダイレクト・シークエンス法により変異を検索した。 【成績】患者はアポB遺伝子cDNA 7612番目にA一塩基挿入を認め、2468番目のコドンがTGG(Trp)→TAG(stop)に変化していた。その結果、アミノ酸2467個からなりアポB-100(4536アミノ酸)全長の54.4%に相当する短縮型アポBが産生されるものと判明した。患者は同変異のホモ接合体、解析した母親および兄弟3人はヘテロ接合体であった。 【結論】新たな短縮型アポB、B-54.4による家族性低βリポ蛋白血症のホモ接合体を同定した。