チアゾリジン誘導体はアポEノックアウトマウスの動脈硬化を抑制する

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科

北峰哲也1、陳忠1、矢作直也1、冨田佐智子1、岡崎啓明1、後藤田貴也1、島野仁2、永井 良三1、山田信博2、石橋俊1

【目的】チアゾリジン誘導体(TZDs)の動脈硬化に対する影響を、動脈硬化モデルマウスである、アポE ノックアウト(KO)マウスを用いて検討した。【方法】5週齢の雄性アポE KOマウスにwestern diet (0.15% cholesterol, 15 % 無塩バター)を与えたcontrol群(CON)と、western dietに0.1 % troglitazoneを混餌した餌(TRO)および0.01 % pioglitazoneを混餌した餌(PIO)で2ヵ月飼育し、その前後での体重、血糖値、血清脂質およびインスリン値の測定を行った。2ヵ月後、動脈硬化を大動脈内腔表面の脂肪染色面積および大動脈洞組織切片の脂肪染色面積を測定し評価を行った。別に同条件のマウスを用意し、大動脈よりmRNAを抽出し、CD36およびPPARγのノーザンブロッティングを行った。さらにC57BL6の腹腔マクロファージ(MPM)をtroglitazoneおよびpioglitazoneで処理し、CD36、LPLおよびPPARγの発現を評価した。【成績】2ヵ月のTZDsの摂食により血清脂質レベルに各群間で差は認められず、血糖値およびインスリン値はCONに比しTROおよびPIOで低値を示した。HDLコレステロールはCONに比しTROで有意に上昇した。大動脈表面の脂肪染色面積はCON 12.7±4.7%、TRO 6.9±2.5%(P<0.05)、PIO 3.8±0.8%(P<0.01)であり、大動脈洞組織切片の脂肪染色面積はCON、TROおよびPIOそれぞれ351,738±175,597、191,974±102,911(P<0.01)および134,381±125,138μm2であった。大動脈のノーザブロットではCONに比し、TZDsでCD36 mRNAの増加が認められた。C57BL6のMPMを用いた検討においてCD36 mRNA のTZDsによる濃度依存的な増大が認められた。【結論】TZDsは大動脈に作用し、動脈硬化に対し抑制的な作用を示すと考えられた。