SHRにおけるCd36欠損と耐糖能改善との遺伝的連鎖
1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2東京女子医科大学糖尿病センター、3筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌
飯塚陽子1、後藤田貴也2、石橋俊1、冨田佐智子1、岡崎啓明1、田村嘉章1、矢作直也1、岩本安彦2、木村哲1、山田信博3
[目的] われわれはSHR(高血圧自然発症ラット)がインスリン抵抗性症候群のモデル動物であり、SHRにはCd36欠損のあるSHR/NCrjと欠損のないオリジナルのSHR/Izmがあることを報告してきた。本研究では、SHRにおけるCd36欠損の影響を、Cd36欠損のあるNCrjと欠損のないIzmとの交配に由来するF2を用いて検討する。[方法] 12週齢の各SHR(n=20)とF2(n=140)の体重、血圧、血清脂質、IVGTT下の血糖およびIRI、臓器重量などを測定した。膵isletの中性脂肪含量、インスリン分泌反応、Cd36 mRNAの発現を調べた。[結果] 1) IVGTTの結果、Izmはグルコース応答性インスリン分泌反応の低下を伴う著しい耐糖能異常を示したが、NCrjではこれらの異常に有意な改善がみられた。2) F2ラットでの連鎖解析では、Cd36遺伝子変異は、IVGTTにおけるインスリン分泌と耐糖能の改善に有意な連鎖を示し、また血清コレステロールの減少とFFAの増加とも有意な連鎖を示したが、血圧や脂肪組織重量とは連鎖は認められなかった。3) ラットの膵isletでCd36 mRNAの発現を確認した。4) IzmとNCrjの膵標本には形態上の相違はみられず、また長鎖脂肪酸存在下で培養後の膵isletの中性脂肪含量、およびbatch incubationによるインスリン分泌反応のいずれにも有意な相違は認められなかった。[結語] SHRにおいてCd36欠損は、インスリン分泌と耐糖能の改善に寄与する可能性が示唆された。