ACAT-1欠損腹腔マクロファージにおけるリポタンパク代謝の検討

東京大学医学部糖尿病代謝内科

北峰哲也、石橋俊、野牛宏晃、大須賀淳一、Stephane Perrey、兎沢隆一、陳忠、田村嘉章、矢作直也、塩之入太、飯塚陽子、大橋健、原田賢治、後藤田貴也、島野仁、山田信博

【目的】ACATKOマウスの腹腔マクロファージ(MPM)のcholesteryl ester formationは完全に抑制されている事を前回報告した。今回、MPMを用い、 (1)efflux, (2)lipoprotein degradation および(3)細胞内コレステロール(Cho)含量の測定を行い、MPMの泡沫化とACATの関連を検討した。【方法】野生型マウス(+/+)およびACATKOマウス(-/-)からthioglycolate-elicited MPMを採取し、LPDS添加のDMEMで36時間培養した後、実験に用いた。(1)[3H]-cholesteryl oleateで標識したLDL受容体欠損マウス由来β-VLDL、ヒトacetylated LDL(AcLDL)で泡沫化させ、24時間後より、25μg/ml HDL3存在下、非存在下で細胞外へ分泌された放射能を測定した。(2)[125I]でラベルしたβ-VLDL、AcLDLを含むDMEMで5時間培養し、培養液中に放出されたタンパク質断片および細胞内放射能を測定した。(3) 20μg/mlのβ-VLDLで、5時間培養し、細胞内Cho含量を蛍光法にて測定した。【結果】(1)effluxは+/+および-/-の間で5時間、24時間とも有意な差は認められなかった。(2) lipoprotein degradationおよびcell associationにおいて+/+と-/-間で有意な差は認められなかった。(3)細胞内の遊離型Choは+/+および-/-でそれぞれ84±5および99±5μg/mgと、-/-は+/+に対し有意に増加した。一方、エステル型Choはそれぞれ62±6および29±6μg/mgと、-/-は+/+に対し有意に低下していた。【結論】リポタンパクの取り込みと分解およびCho effluxには+/+と-/-で差を認めず、細胞内に取り込まれたChoは-/-ではエステル化を受けない為、遊離型の形で細胞内に蓄積すると考えられた。