in vivoでのSREBP-1c遺伝子の転写活性の解析
東京大学医学部糖尿病代謝内科1、東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター2、筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝糖尿病内科3、筑波大学先端学際領域研究センター4
3武内謙憲、1,4矢作直也、3,4中川嘉、1関谷元博、3,4松坂賢、2位高啓史、2片岡一則、1永井良三、4清水律子、4山本雅之、3山田信博、1大須賀淳一、1門脇孝、3,4島野仁
Sterol regulatory element-binding protein-1c(SREBP-1c)はトリグリセリド合成系の諸酵素の活性を調節している転写因子であり、摂食後に肝臓や脂肪において顕著に(10〜30倍に)発現が誘導されてくる(=摂食応答)。この摂食応答のメカニズムは解明されていないが、mRNA発現量が大きく変化することから、主に転写レベルで行われていると予想されている。しかし、SREBP-1cの生体における顕著な摂食応答は初代培養を含む培養細胞にて再現することが困難なため、その転写調節機構は培養細胞を用いたレポーターアッセイなどの系では未だ十分に解明されていない。そこで、レポーター遺伝子を実際に肝臓および脂肪組織に発現させ、in vivoの臓器においてプロモーター解析を行うこととした。in vivoの肝細胞および脂肪細胞へ遺伝子導入を行う方法として、トランスジェニック(Tg)マウスを作成する方法ならびにアデノウイルスベクターによる遺伝子導入法について検討を行った。SREBP-1c遺伝子上流の調節領域(プロモーター/エンハンサー領域)をクローニングした後、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に置くコンストラクトのプラスミドを作成し、受精卵に注入することでTgマウスを作成した。この結果、摂食時にSREBP-1cの発現に一致してルシフェラーゼの活性が肝臓、脂肪組織において著明に増加するTgマウスのラインが樹立された。またアデノウイルスによるレポーター遺伝子の導入によっても、SREBP-1cプロモーターによるレポーター遺伝子の摂食応答が同様に良好に観察された。これらの系により、摂食によるSREBP-1cプロモーター活性の変化を生体で定量することが可能となり、また検討プロモーター部位が生体での制御に重要である事が確認された。