20世紀の後半からわが国の疾病構造は大きく変化し、糖尿病や高脂血症、それに伴う動脈硬化性疾患の増加が大きな問題となってきています。この背景には食生活の欧米化による摂取カロリーの増大や、交通機関の発達に伴う身体の運動不足があると思われます。カロリーの摂取過剰や運動不足により肥満になると一般にインスリンが効きにくい状態になり、血中のインスリン値が上昇し、糖尿病や高脂血症や高血圧症を発症しやすくなり、さらには心臓などに動脈硬化症を起こしやすくなります。このような病態をインスリン抵抗性症候群もしくはメタボリックシンドロームと呼んでいます。しかし、なぜヒトは過栄養状態に置かれると太るのか?なぜ肥満になると糖尿病や高脂血症になりやすくなるのか?なぜ糖尿病や高脂血症になると動脈硬化を起こしやすいのか?と言った基本的な事柄も、いまだによくわかっているとは言えません。我々のグループでは、糖代謝と脂質代謝の両面から肥満やそれに伴うインスリン抵抗性症候群(メタボリックシンドローム)の病態や動脈硬化症の発症メカニズムの解明を目指して基礎研究・臨床研究を続けています。
岡崎 啓明(東京大学医学部糖尿病代謝内科)
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