黄帝内經太素校正(試用)
黄帝内經太素卷第二 攝生之二
 通直郎守太子文學臣楊上善奉 撰注
 順養
 六氣
 九氣
 調食
 壽限
 勅:底本は来に力、すなわち勑の略。勑と勅は、古くから誤って混用されるが、本来は別字である。

02-01順養
霊枢29師傳
001黄帝曰:余聞先師有所心藏,弗於方。余願聞而藏之,則而行之。
【楊】先師心藏,比輪之巧,不可□□,遂不於方也。又上古未有文著□□□暮代也,非文不傳,故請方傳之,藏而則之。
 著:底本では着。『干禄字書』(早大出版部『漢字入門』收録の文化十四年官版 以下特に言わなければみなこの版)に著を正、着を俗とする。正字に統一する。
 斲:底本は㔁。『竜龕手鏡』(中華書局1982年影印高麗本 以下特に言わなければみなこの版)に、「香巖音尞,㔁鈎也」とある。ただし、『荘子』天道篇に、「輪扁曰:臣也以臣之事觀之。斲輪徐則甘而不固,疾則苦而不入。」云々とあり、仁和寺本の抄者は、これを欄外に引用しているらしい。(剥落が甚だしい。)斲輪は木を切って車輪を製造する意味だが、また借りて経験豊富で水準が高いことを指す。そして『竜龕手鏡』には、斲の俗字として𣃆が載っている。刀と斤は意符として通用し得る。また仁和寺本欄外に在る丁角の二字は抄者の心覚えであろうが、おそらくは反切で、斲の音に符合する。

002上以治民,下以治身,
【楊】先人後己,大聖之情也。

003使百姓病,上下和親,德澤下流,
【楊】理國之意。
 底本は无と無を混用する。使い分けが有るとは思えないので無に統一する。

004子孫無憂,
【楊】理家之意。

005傳於後世,無有終時,可得聞乎?
【楊】言其益遠。

006岐伯曰:遠乎哉問!夫治民與治,治彼與治此,治小與治大,治國與治家,未有逆而能治者也,夫唯順而已矣。
【楊】人之與己、彼此、小大、家國八者,守之取全,之取美,須順道德陰陽物理,故順之者吉,逆之者凶,斯乃天之道。
 治民與治自:おそらくは治民與治身の誤り。治自という語は生硬。また上に、上以治民下以治身とある。
 循:底本の字形は実のところ循なのか脩なのか判然としない。循ならば「守り行う、依拠する」、脩ならば「治め整える」で、どちらも一応意味は通じる。守之取全○之取美には、何か典拠が有りそうだが、残念ながら未だ見いだしてない。袁昶本は循に作っている。

008順者,非獨陰陽脈論氣之逆順也,百姓人民,皆欲順其志也。
【楊】非獨陰陽之道、十二經脈、營衞之氣有逆有順,百姓之情皆不可逆,是以順之有吉也。故曰聖人無常心,以百姓爲心也。志,願也。

009黄帝曰:順之奈何?岐伯曰:入國問俗,入家問諱,上堂問禮,臨病人問所便。
【楊】夫爲國爲家爲身之道,各有其理。不其理而欲正之身者,未之有也。所以並須問者,欲各知其理而順之也。俗、諱、禮、便,人之理也;陰陽四時,天地之理也。存生之道,闕一不可,故問之也。便,宜也。謂問病人寒熱等病,量其所宜,隨順調之。故問所便者也。
 不循其理:循は、上の循之取美の循と同じ字形と思われる。ここは確かに循のほうが良いだろう。袁昶本も循に作っている。
 故常問之也:渋江抽斎『素問講義』は、常は或いは帝とすべきではないかと疑っている。

010黄帝曰:便病人奈何?
【楊】言何方而知其所便也。

011岐伯曰:夫人中熱消癉則便寒,寒中之屬則便熱。
【楊】中,腸胃中也。腸胃中熱,多消飲食,即消癉病也。癉,熱也,音丹。熱中宜以寒調,寒中宜以熱調,解其便也。

012胃中熱則消穀,令人懸心善飢,齊以上皮熱。 【楊】自此以下,廣言熱中、寒中之狀。胃中熱以消穀,虚以喜飢,胃在齊上,胃中食氣上薰,故皮熱也。
 皮熱也:底本では末尾の也の下にさらに之字が有る。おそらくはカギ括弧に相当するものだろう。半島からの渡来人の習慣だったという説が有る。以下には一々注記しない。

013腸中熱則出黄如糜,齊以下皮寒。
【楊】陽上陰下,胃熱腸冷,自是常理。今胃中雖熱,不可過熱,過熱乖常。腸中雖冷,不可失和,失和則多熱出黄。腸冷多熱不通,故齊下皮寒也。
 経文も、それを説明する楊注の理屈もよく理解できない。あるいは文字の誤り、もしくは脱文が有るのではないか。いっそのこと腸中寒則云々であるほうがすっきりするが、以下の文中では腸中熱は洩、腸中寒は腹鳴飡洩あるいは腹痛である。腹鳴飡洩は寒洩、出黄如糜は熱洩ではないかと思う。とすると齊以下皮熱のほうがすっきりする。ただし、楊注は腸中雖冷と説き初め、故齊下皮寒也と結論づけている。経文に腸中熱とありながら注文が腸中雖冷と言い出すのは不審であり、(腸中が冷えすぎれば一転して熱を発するという理屈を容認しても)多熱と齊下皮寒の間には飛躍が有る。

014胃中寒則䐜脹,腸中寒則腹鳴洩。
【楊】䐜,叱隣反,張起也。,音孫,謂食不消,下洩如水和飯也。冷氣不下,故多脹。腸中冷而氣轉,故腸鳴也。
 飡:底本の字形は喰。ただし、底本では冷の冫が口のように書かれることが多いから、喰も同様に飡と見ることができる。飡、音孫は飱と同字。『戦国策』中山策に「以一壺飡得士二人」と見えるのも飱と同字で、熟食の意。もつとも『竜龕手鏡』には「喰湌飱 音孫 以飲澆飰也」とある。飰は飯と同じ。従って「飲を以て飯に澆(そそ)ぐなり」で、楊上善注の「食消せず下洩すること水和飯の如し」とほぼ通じる。

015胃中寒,腸中熱,則脹且洩。
【楊】以上腸胃俱熱俱寒、此乃胃寒腸熱俱時也。脹是胃寒,洩是腸熱。腸中不可熱,令熱則腸中不和,故脹且洩也。

016胃中熱,腸中寒,則疾飢,少痛。
【楊】此胃熱腸寒俱時,胃熱故疾飢,腸寒故痛也。
 少腹:経文の字形は少膓、膓の傍らに腹と注記が有る。『霊枢』師伝は小腹に作る。また、小腸が痛むという訴え自体が無理という意見に従って、少腹に改める。ただし、底本経文の腸中、小腸、注文の腸寒、腸痛、いずれの字形も膓なのは不審。注文の腹痛は、経文の少腹痛に合わせた。

017黄帝曰:胃欲寒飲,腸欲熱飲,兩者相逆,便之奈何?且夫王公大人血食之君,驕恣從欲輕人,而無能禁之,禁之則逆其志,順之則加其病,便之奈何?治之何先?
【楊】胃中常熱,故欲滄滄而飲,腸中恒冷,故灼灼而食,寒熱和則損於性命。若從欲則加病,逆志則生怒,二者不兼故以先爲問也。
 乖:底本は卒に作るが、傍らに訂正してあるらしい。

018岐伯曰:人之情,莫不惡死而樂生,告之以其馭,語之以其道,示以其所便,開之以其所苦,雖有無道之人,惡有不聽令者乎?
【楊】正可逆志以取其所樂,不可順欲而致所苦,故以道語之,無理不聽也。

019黄帝曰:治之奈何?岐伯曰:春夏先治其標,後治其本;秋冬先治其本,後治其標。
【楊】本,謂根與本也。標,末也,方昭反,謂枝與葉也。春夏之時,萬物之氣上昇,在標;秋冬之時,萬物之氣下流,在本。候病所在,以行療法,故春夏取標,秋冬取本也。

020黄帝曰:便其相逆者奈何?
【楊】謂適於口則害於身,違其心而利於體者,奈何?

021岐伯曰:便此者,食飲衣服,亦欲適寒温,寒無淒淒,暑無出汗,食飲者熱毋灼灼,寒毋滄滄。
【楊】滄滄,寒也,音。寒無等,謂調衣服也;熱無灼等,謂調食飲也。皆逆其所便也。
 淒:『説文』に「雲雨起也」とあり、したがって淒淒は雲起の貌であるが、古くから凄に通じて用いられる。例えば『詩経』邶風・緑衣「絺兮綌兮,淒其以風」に毛伝は「淒,寒風也」といい、孔穎達は「淒,寒涼之名」という。
 音倉:底本は音食に誤る。

022寒温中適,故氣將持,乃不致僻。
【楊】五藏之中和適,則其眞氣内守,外不入,病無由生。
 邪:底本は耶、『干禄字書』では邪の通。

霊枢78九針論素問23宣明五気篇
023久視傷血,
【楊】夫爲勞者,必内有所損,然後血等有傷。心注目於色,久則傷心,心主於血,故久視傷血。
 伇:役の異体字。

024久臥傷氣,
【楊】人臥則肺氣出難、故久臥傷肺,肺則氣傷也。
 肺傷:底本は膓肺に誤る。

025久坐傷肉,
【楊】人久靜坐,脾則不動,不動不使,故久坐傷脾,脾傷則肉傷也。

026久立傷骨,
【楊】人之久立,則腰腎勞損,腎以主骨,故骨髓傷也。

027久行傷筋,此久所病也。
【楊】人之久行,則肝膽勞損,肝傷則筋傷也。

素問02四気調神大論
028春三月,此謂發陳,
【楊】陳,舊也。言春三月,草木舊根、舊子皆發生也。

029天地俱生,萬物以榮,
【楊】天之父也,降之以德;地之母也,資之以氣。德之與氣俱能生也,物因德氣,英華開發也。

030夜臥蚤起,
【楊】春之三月主膽,肝之府足少陽用事,陰消陽息,故養陽者,至夜則臥,順陰消也。蚤字,古早字。旦而起,順陽息也。

031廣歩於,被髮緩形,以使志生,
【楊】廣歩於,勞以使志也。被髮緩形,逸以使志也。勞逸處中,和而生也。故其和者,是以内攝生者也。
 庭:底本は𨓍。つまり廴が广の外に出て辶に変じ、壬が手に変じた。

032生而勿,予而勿,賞而勿,此春氣之應也,養生之道也。
【楊】生、、賞者,順少陽也;罸者,逆少陽也。故順、成、和則外攝生也。内外和順,春之應也。斯之順者,爲身爲國養生道也。
 煞:底本は灬を略してーと書くようである。『干禄字書』に煞を殺の俗とする。
 奪:底本は𡙸。『干禄字書』に俗。
 罸:一般の学習漢和辞典では、罰を正字とすることが多いが、『竜龕手鏡』には、「罸,正,房發切,罪罸也」とある。
 予:底本は与に作るが、経文に拠って改めた。森立之『素問攷注』に指摘されている。
 罸者:この下に底本には也字が有るが、衍文として削った。

033逆則傷於肝,夏爲寒變,奉生長者少。
【楊】肝氣在春,故晚臥形晚起逸體。急形,煞奪罸者,皆逆少陽也。故其爲身者,逆即傷肝,夏爲傷寒熱病變也。其爲國也,霜雹風寒灾害變也。春時内外傷者,奉夏生長之道不足也。
 爲變:森立之『素問攷注』は、爲は衍に過ぎないだろうと言う。
 晚臥緩形:底本には緩字は無い。森立之『素問攷注』に、形の上に恐らくは緩を脱す、と言うのに従って補う。

034夏三月,此謂蕃秀,
【楊】蕃,元反,也。夏三月時,萬物蕃滋茂秀,增長者也。
 伐:底本では代、しかしそれでは蕃の反切上字には相応しくない。森立之『素問攷注』も、代は恐らくは伐の譌と言う。
 茂:底本は艹の下に伐に見える。茷は、『説文』に「艸葉多,从艸伐聲」とあり、「艸木盛皃,从艸戊聲」の茂とは別字。(勿論、筏とも別。)ただし、『竜龕手鏡』に䒑の下に伐は艹の下の厂の中に戈の俗、莫候反または莫布反で、豊也、美也、滋ー也。『説文解字注』に、茂は莫候切(茷は符發切)。つまり、䒑と艹は筆勢の違いに過ぎず、茂の丿が厂に換わったものも即ち茂の異体字で、ここの茷も茂の俗字と考えていいだろう。

035天地氣交,萬物英實,
【楊】陰陽氣和,故物英華而盛實也。

036晚臥蚤起,
【楊】夏之三月主腸,心之府手太陽用事,陰虚陽盈,故養陽者多起少臥也。晚臥以順陰虚,早起以順陽盈實也。
 小腸:底本は少腸に作る。

037無厭於日,使志無怒,
【楊】日者爲陽,故不可厭之。怒者爲陰,故使志無怒之。

038使英成秀,使氣得洩,
【楊】使物華皆得秀長,使身開腠氣得通洩也。

039若所愛在外,此夏氣之應也,養之道也。
【楊】内者爲陰,外者爲陽,諸有所愛,皆欲在陽,此之行者,應太陽之氣,養之道也。
 養生:『素問』は養長に作る。森立之『素問攷注』も、生は恐らくは誤りと言う。

040逆之則傷心,秋爲㾬瘧,則奉收者少,冬至重病。
【楊】早臥晚起,厭日生怒,傷英不秀,壅氣在内,皆逆太陽氣也。故夏爲逆者,則傷心,秋爲㾬瘧,奉秋收之道不足,得冬之氣,成熱中病重也。
 乎:『素問参楊』は手に作り、多紀元堅はけだし于であろうと言う。

041秋三月,此謂容平,
【楊】夏氣盛長,至秋也,不盛不長,以結其實,故曰容平也。

042天氣以急,地氣以明,
【楊】天氣急者,風清氣涼也;地氣明者,山川景淨也。

043蚤臥蚤起,與雞俱興,
【楊】秋之三月,肺藏手太陰用事,陽消陰息。故養陰者與鷄俱臥,順陰息也;與雞俱起,順陽消也。

044使志安寧,以緩秋形,
【楊】春之緩者,緩於堅急;秋之緩者,緩於滋盛。故寧志以緩形。

045收斂神氣,使秋氣平,
【楊】夏日之時,神氣洪散,故收斂順秋之氣,使之和平也。

046無外其志,使肺氣精,此秋氣之應也,養收之道也。
【楊】攝志存陰,使肺氣之無雜,此應秋氣,養陰之道也。

047逆之則傷肺,冬爲飡洩,則奉養者少。
【楊】晚臥晚起,志不寧者,秋時以逆太陰氣,秋即傷肺,至冬飡洩,奉冬養之道少也。

048冬三月,此謂氣閉藏,
【楊】陰氣外閉,陽氣内藏。

049水氷地坼,
【楊】勑白反,分也。

050毋擾于陽,
【楊】言居陰分,故毋擾陽。

051蚤卧晚起,
【楊】冬之三月,主腎藏,足少陰用事,陽虚陰盈。故養陰者多臥少起。早臥順陽虚,晚起順陰盈也。

052必待日光,使志若伏匿,
【楊】伏匿,靜也。臥盡陰分,使志靜也。

053若有私意,若已有德,去寒就温,
【楊】言十一月,陰去陽來,故養陰者,凡有私意,諸有所得,與陰俱去,順陽而來,無相擾也。

054毋洩皮膚,使氣不極,此冬氣之應也,養藏之道也。
【楊】閉諸腠理,使氣不洩極也,斯之行者,應冬腎氣,養陰之道也。

055逆之則傷腎,春爲痿厥,則奉生少也。
【楊】早起晚臥,不待日光,志氣外洩,冬爲逆者,傷腎痿厥,奉春養生之道少也。痿厥,不能行也,一曰偏枯也,於危反也。

056天氣清靜,光明者也,
【楊】天道之氣,清虚不可見,安靜不可爲,故得三光七耀光明者也。玄元皇帝曰:虚靜者,天之明也。

057藏德不上故不下。
【楊】天設日月,列星辰,張四時,調陰陽,日以曝之,夜以息之,風以乾之,雨露濡之。其生物也,莫見其所養而物長;其所煞也,莫見其所而物亡。此謂天道藏德不上故不下者也。聖人象之,其起福也,不見其所以而福起;其除禍也,不見其所由而禍除。則聖人藏德不上故不下也。玄元皇帝曰:上德不德,是以有德。即其事也。
 喪:底本は亠の下に横に口を二つ、その下は亡の異体字(亠を二と書く)のようである。

058上下則日月不明,
【楊】君上情在,於己有私,德遂不爲德。玄元皇帝曰:下德不失德,是以無德。君之無德,則令日月薄蝕,三光不明也。
 脩德:脩の字は、底本では循經脉などの循とほぼ同じ字形。袁昶本は脩に作る。意味の上から、これに従う。

059耶害空竅,
【楊】空竅,謂三百六十五穴也。君不脩德和陽氣者,則疵癘賊風,入人空竅,傷害人也。

060陽氣閉塞,地氣明,
【楊】陽氣失和,故令陰氣冒覆三光。
 冒:底本の経文では上部が田になっているし、傍らの仮名はボウではない。ただし、注中では冒。影宋本『脈経』(静嘉堂文庫蔵)の巻七「熱病陰陽交并少陰厥逆陰陽竭盡生死證」の「少陰病下利止而眩時時自冒者死」の冒も上部が田になっている。

061雲露不精,則上應,露不下交通,
【楊】陰氣失和,致令雲露無潤澤之精,無德應天,遂使甘露不降,陰陽不和也。言曰露者,恐後代字誤也。
 甘露:甘の左に小さく曰と旁書。おそらくは、もともとは曰になっていたのを、抄者が理と楊注に拠って甘と書き改め、原貌を保存するために曰を旁書したのであろう。そうでないと、「曰露と言うは、恐らくは後代の字の誤りなり」が意味不明となる。蕭延平本などでは、『素問』に拠って白露とするが、仁和寺本では歴然と曰露である。もつとも、この後代の誤字云々は、楊上善以後の注記ではないかと疑うので、経文は甘露と入力しておく。因みに、最近の研究によると、『太素』の成書は西暦666~683年の間、日本への渡来は西暦701~757年の間、多紀憲基による抄写は西暦1150年頃から、頼基による抄写は西暦1166年頃からである。

062不表萬物,命故不
【楊】陰陽不得交通,則一中命,無由布表,生於万物,德澤不露,故曰不施也。
 施:底本では方偏と弓偏の書法は殆ど同じ。また底本では弛長、弛緩の弛も㢮と書く。
 一中分命:意味がよく分からない。あるいは命の上の字は分ではないのかも知れない。

063不施,則名木多死,惡氣發,風雨不,甘露不下則菀槗不榮,賊風數至,暴雨數起,天地四時不相保,乃道相失則未央絶滅
【楊】盗夸之君,德不施布,禍及昆,灾延草木。其有八種。一者名木多死,謂名好草木不黄而落。二者惡氣發,謂毒氣疵癘流行於國。三者風雨不節,謂風不時而起,雲不而雨。四者甘露不下,謂和液無施。菀槗當爲宛槁。宛,痿死。槁,枯也,於阮反。陳根舊枝死不榮茂。五者賊風數至,謂風從衝上來,破屋折木,先有虚者,被刻而死。六者暴雨數起,謂驟疾之雨,傷諸苗稼。七者天地四時不相保,謂陰陽乖繆,寒暑無。八者失道未央絶滅。未央者,久也。言盜夸之君,絶滅方久也。
 節:底本は莭、『干禄字書』に俗。
 絶:底本は絁に似るが、筆勢の悪戯に過ぎない。字書にも絶との関係は見えない。
 滅:底本は冫に従うようにも見える。『干禄字書』に俗。
 盗夸之君:底本は盗夸君之。『泰素後案』は盗夸之君とするのが正しいと言う。袁昶本では盗夸君之だが、蕭延平本では盜夸之君となっている。盗夸は『老子』第五十三章に、服文綵帶利劍飽飲食財貨有餘是謂盜夸非道也哉(文綵を服し、利劍を帶び、飲食に厭きて、財貨餘り有る、是れを盜夸と謂う、道に非ざる哉)と見える。盗は「ぬすむ」、夸は「ほこる」。してみると「君の徳を盗み誇りて施布せざれば」云々も、「盗み誇る君は絶滅すること方に久しきなりと言う」も、ともに通じると思う。その意味では、必ずしも「盗夸君之」を「盜夸之君」に改める必要は無い。ただし、以下は「禍及昆虫、灾延草木」と四字句であるから、上も「盗夸之君、德不施布」と二つの四字句にしたほうが良い、ということは有る。
 虫:底本は䖝。これ自体は俗書増画の例だろう。虫はもと音「キ」で、まむしの意、のち蟲の略字として用いられる。『干禄字書』にも、蟲を正、虫を俗と載せる。
 族:底本は弓に矣にも見える。これは『集韻』に長とある。ただし、族には「むらがる」の意が有り、『荘子』在宥にも「雲氣不待族而雨」(雲が集まらないうちに雨になる)のような例が有るから、このほうがはるかに勝る。また、欄外にその『荘子』在宥が引用されているのであるから、抄者が族のつもりで書いたことは間違いない。

064唯聖人順之,身無奇疾,萬物不失,生氣不竭。
【楊】唯聖人順天,藏德不上,故有三德。一者,身无奇疾,奇異耶氣不及於身也。二者,萬物不失,澤及虫,恩霑草木,各得生長也。三者,生氣不竭。生氣,和氣也。和氣不竭,致令雲露精潤,甘露時降也。
 蜫:『玉篇』に䖵と互いに亦作とあり、『説文解字』段玉裁注に「凡經傳言昆蟲即䖵蟲也」というのに従えば、蜫=䖵=昆。

065逆春氣,則少陽不生,而肝氣内變。
【楊】少陽,足少陽膽府脉,爲外也。肝藏爲陰,在内也。故府氣不生,藏氣變也。

066逆夏氣,則太陽不長,心氣内洞。
【楊】太陽,手太陽小腸府脉,在外也。心藏爲陰,居内也。故府氣不生,藏氣内洞。洞,疾流洩也。

067逆秋氣,則太陰不收,肺氣燋漏。
【楊】太陰,手太陰肺之脉也。腠理豪毛受耶,入於經胳,則脉不收,深入至藏,故肺氣燋漏。燋,熱也。漏,洩也。
 裏:『素問参楊』、『素問攷注』は襄に作り、袁昶本は聚に作る。また、衰ではないかという意見も有る。ただ、巻三 陰陽大論の「以表知裏」あるいはその陽注「瞻六府表脉,以知五藏裏脉」の裏と同形とみていいと思われる。底本では、不收の後、裏の前に句読点が有るらしい。

068逆冬氣,則少陰不藏,腎氣濁沉。
【楊】少陰,足少陰腎之脉也。少陰受邪,不藏能靜,深入至藏,故腎氣濁沉,不能營也。

069失四時陰陽者,失萬物之根也。
【楊】陰陽四時,萬物之本也。人君違其本,故萬物失其根。

070是以聖人春夏養陽,秋冬養陰,以順其根,故與萬物沉浮於生長之門。
【楊】聖人與萬物俱浮,即春夏養陽也。與萬物俱沉,即秋冬養陰也。與萬物沉浮以爲養者,志在生長之門也。

071逆其根,則伐其本,壞其眞。
【楊】逆四時之根者,則伐陰陽之本也。壞至眞之道也。

072故陰陽四時者,萬物之終始也,死生之本也,逆之則灾害生,順之則奇疾不起,是謂得道。
【楊】陰爲萬物終死之本也,陽爲萬物始生之源也。逆之則灾害生,入於死地也。順之則奇疾除,得長生之道也。

073道者,聖人行之,愚者佩之。
【楊】聖人得道之言,行之於身,寳之於心府也。愚者得道之章,佩之於衣裳,寳之於名利也。

074順陰陽則生,逆之則死,順之則治,逆之則亂。
【楊】生死在身,理亂在國。

075反順爲逆,是謂内格。
【楊】不順四時之養身,内有關格之病也。

076是故,聖人不治已病治未病,不治已亂治未亂,此之謂也。夫病已成形而後藥之,亂成而後治之,譬猶渴而穿井,鬪而鑄兵,亦不晚乎!
【楊】身病國亂,未有豪微而行道者,古之聖人也。病亂已微而散之者,賢人之道也。病亂已成而後理之者,衆人之失也,理之無益。故以穿井鑄兵無救之失以譬之也。


02-02六氣
霊枢30決氣
001黄帝曰:余聞人有精、氣、津、液、血、脉,余意以爲一氣耳,今乃辨爲六名,余不知其所以。願聞何謂精?
【楊】一氣者,眞氣也。眞氣在人,分一以爲六別,故惑其義也。

002岐伯曰:兩神相薄,合而成形,常先身生,是謂精。
【楊】但精及津、液,與氣異名同類,故皆稱氣耳。雄雌二靈之別,故曰兩神。陰陽二神相得,故謂之薄。和爲一質,故曰成形。此先於身生,謂之爲精也。

003何謂氣?
【楊】下膲如瀆,謂之津液。中膲如漚,謂之爲營血。上膲如霧,爲衞稱氣,未知所由。

004岐伯曰:上膲開發,宣五穀味,熏膚肉,充身澤毛,若霧露之溉,是謂氣。
【楊】上膲開發,宣揚五穀之味,熏於膚肉,充身澤毛,若霧露之溉萬物,故謂之氣,即衞氣也。
 熏膚薰肉:薫は熏に改めて良いのではないかと思う。楊注には熏於膚肉とある。

005何謂津?岐伯曰:腠理發洩,汗出腠理,是謂津。
【楊】腠理所洩之汗,稱之爲津。

006何謂液?岐伯曰:穀氣滿,淖澤注於骨,骨屬屈伸,澤補益腦、髓、皮膚潤澤,是謂液。
【楊】淖,丈卓反,濡潤也。通而言之,小便、汗等,皆稱津液。今別骨節中汁爲液,故餘名津也。青穀之精膏,注於諸骨節中,其汁淖澤,因屈伸之動,流汁上補於腦,下補諸髓,傍益皮膚,令其潤澤,稱之爲液。
 光澤:『霊枢』は泄澤に作るが、字形の違いが大きすぎる。或いは充澤の間違いではないか。光の異体字にはさらに灮が有る。ただし、光澤という詞がここのような意味に用いられる例は、楊注にはしばしば見られます。それらをみな充澤の間違いと言って良いかどうか、やはり迷うので原文を改めることはしません。

007何謂血?岐伯曰:中膲受血於汁,變化而赤,是謂血。
【楊】五穀精汁在於中膲,注手太陰脉中,變赤循脉而行,以奉生身,謂之爲血也。

008何謂脉?岐伯曰:壅遏營氣,令毋所避,是謂脉。
【楊】盛壅營血之氣,日夜營身五十周,不令避散,故謂之脉也。

009黄帝曰:六氣者,有餘不足,氣之多少,腦髓之虚實,血脉之清濁,何以知之?
【楊】六氣之中,有餘不足,摠問也。腦髓等別問,求其所知也。

010岐伯曰:精脫者,耳聾;
【楊】腎以主耳,故精脫則耳聾。

011氣脫者,目不明;
【楊】五藏精氣爲目,故氣脫則目闇。

012津脫者,腠理開,汗大洩;
【楊】前之二脫,言脫所由,故有脫也。以下三脫,直著其脫狀。故津脫,腠理開,汗洩爲狀。

013液脫者,骨屬屈伸不利,色夭,腦髓消,胻痠,耳數鳴;
【楊】骨節相屬之處無液,故屈伸不利。無液潤澤皮毛,故色夭。腦髓無補,故腦髓消、胻痠、耳鳴。胻,衡孟反。

014血脫者,色白,夭然不澤,其脉空虚,此其候也。
【楊】以無血,故色白。無血潤膚,故不澤。脉中無血,故空虚。以爲不足,虚之狀也。

015黄帝曰:六氣者,貴賤何如?岐伯曰:六氣者,各有部主也,其貴賤善惡可爲常主,然五穀與爲大海。
【楊】六氣有部有主,有貴有賤,有善有惡,人之所受,各有其常,皆以五穀爲生成大海者也。


02-03九氣
素問39擧痛論
001黄帝曰:余聞百病生於氣也,怒則氣上,喜則氣緩,悲則氣消,恐則氣下,寒則氣收聚,則腠理開氣洩,憂則氣亂,勞則氣秏,思則氣結,九氣不同,何病之生?
【楊】炅,音桂,熱也。人之生病,莫不内因怒、喜、思、憂、恐等五志,外因陰陽寒暑,以發於氣而生百病。所以善攝生者,内除喜怒,外避寒暑,故無道夭,遂得長生久視者也。若縱志放情,怒以氣上傷魂,魂傷肝傷也。若喜氣緩傷神,神傷心傷也。若憂悲氣消,亦傷於魂,魂傷肝傷也。恐以氣下則傷志,志傷腎傷也。若多寒則氣收聚,内傷於肺也。若多熱腠理開洩,内傷於心也。憂則氣亂傷魄,魄傷則肺傷也。若多勞氣秏,則傷於腎。思以氣結傷意,意傷則脾傷也。五藏既傷,各至不勝時則致死也,皆由九邪生於九氣,所生之病也。
 炅:日と火から合成された熱の異体字であり、『説文』に光也という文字とは同形異字である、という説が有るらしい。ここでも上に炅則腠理開氣洩と言い、下には熱則腠理開と言う。証拠の一つと言える。しかし、楊上善が音桂と言っていることは無視されている。また、楊上善の誤りであるとはっきり言う学者も知らない。

002岐伯曰:怒則氣逆,甚則歐血及食而逆氣逆上也。
【楊】因引氣血上,故氣逆。怒甚氣逆則,致歐血及食氣逆上也。

003喜則氣和志達,營衞行通利,故氣緩焉。
【楊】喜則氣和志達,營衞行利,故氣緩爲病也。

004悲則心系急,肺布葉舉,兩膲不通,營衞不散,熱氣在中,故氣消。
【楊】肝脉上入頏顙,連目系;支者從肝別貫膈,上注肺。肺以主悲,中上兩膲在於心肺,悲氣聚於肺,葉舉心系急,營衞之氣在心肺,聚而不散,神歸不移,所以熱而氣消虚也。

005恐則精却,却則上膲閉,閉則氣還,還則下膲脹,故氣不行。
【楊】雖命門藏精,通名爲腎,脉起腎,上貫肝膈,入肺中;支者,從肺胳心,注胷中。故人驚恐,其精却縮。上膲起胃口上,上膲既閉不通,則氣不得上,還於下膲,下膲脹滿,氣不得行也。

006熱則腠理開,營衞通,故汗大洩。
【楊】氣不得行,或因熱而腠理開,營衞外通,汗大洩也。

007寒則腠理閉,氣不行,故氣收聚。
【楊】因營衞不通,遇寒則腠理閉塞,則氣聚爲病也。

008憂則心無所寄,神無所歸,慮無所定,故氣亂。
【楊】心,神之用。人之憂也,忘於衆事,雖有心情,無所任物,故曰無所寄。氣營之處,神必歸之,今既憂繁,氣聚不行,故神無歸也。慮,亦神用也,所以憂也,不能逆慮於事,以氣無主守,故氣亂也。

009勞則喘喝汗出,内外皆越,故氣秏。
【楊】人之用力勞之,則氣并喘喝,皮腠及内藏府皆汗,以汗即是氣,故汗出内外氣衰秏也。

010思則身心有所存,神有所止,氣留而不行,故氣結矣。
【楊】專思一事,則心氣駐一物。所以神務一物之中,心神引氣而聚,故結而爲病也。


03-04調食
霊枢56五味
001黄帝曰:願聞穀氣有五味,其入五藏,分別奈何?
【楊】穀氣津液,味有五種,各入其五藏,別之奈何?

002伯高曰:胃者,五藏六府之海也,水穀皆入於胃,五藏六府皆稟於胃。
【楊】胃受水穀,變化以滋五藏六府,五藏六府皆受其氣,故曰皆稟也。

003五味各走其所喜,穀味酸,先走肝;穀味苦,先走心;穀味甘,先走脾;穀味辛,先走肺;穀味,先走腎。
【楊】五味所喜,謂津液變爲五味,則五性有殊,性有五行,故各喜走同性之藏。
 鹹:底本は醎。
 津液:底本は液津だが、乙転を指示する符号が有るとみた。

004穀氣津液已行,營衞大通,乃化糟粕,以次傳下。
【楊】水穀化爲津液,清氣猶如霧露,名營衞,行脉内外,無所滯礙,故曰大通。其濁者,名爲糟粕。泌別汁入於膀胱,故曰以次傳下也。粕,頗洛反。
 澄濁:澄字は不審。『泰素後案』にも「按。澄濁。澄字必誤。」と言う。ただし、「濁を澄ませる」という意味で澄濁と言った例は有る。晋の孫拯『贈陸士龍』詩之八に「澄濁以清,罔有不暉。」また、清濁の謂ではないかという意見も有る。難経三十一難に「下焦者,當膀胱上口,主分別清濁,主出而不内,以傳導也。」007の「化爲糟粕及濁氣并尿」が照応し、「澄濁」は澄と濁を分かつというような意味だろうという意見も有る。袁本は「沈」に改めるが、根拠は言わない。文字を改める説には、他に濇、氵に蚤で実は溲あるいは糟の異体字ではないかというものまで提出された。

005黄帝曰:營衞之行奈何?
【楊】因前營衞大通之言,故問營衞所行。

006伯高曰:穀始入於胃,其精微者,先出於胃之兩膲,以溉五藏,別出兩行於營衞之道。
【楊】精微,津液也。津液資五藏已,衞氣出胃上口,營氣出於中膲之後,故曰兩行道也。

007其大氣之而不行者,積於胷中,命曰氣海,出於肺,循喉嚨,故呼則出,吸則入。
【楊】,謗各反,聚也。穀化爲氣,計有四道:精微營衞,以爲二道;化爲糟粕及濁氣并尿,其與精下傳,復爲一道;而不行,積於胷中,名氣海,以爲呼吸,復爲一道,合爲四道也。
 槫:この文字は決定しがたい。底本の木偏と手偏は一般に紛らわしいが、ここは紛れもなく木偏である。右旁は専。従って、ここでは一応「槫」とした。ただし、右旁は、音から言えば尃のほうが相応しく、意から言えば專(専)のほうが相応しい。

008天之精氣,其大數常出三入一,故穀不入,半日則氣衰,一日則氣少矣。
【楊】天之精氣,則氣海中氣也。氣海之中,穀之精氣,隨呼吸出入也。人之呼也,穀之精氣三分出已,及其吸也,一分還入,即須資食,充其腸胃之虚,以接不還之氣。若半日不食,則腸胃漸虚,穀氣衰也。一日不食,腸胃大虚,穀氣少也。七日不食,腸胃虚竭,穀氣皆盡,遂命終也。

009黄帝曰:穀之五味,可得聞乎?伯高曰:請盡言之。
【楊】充虚接氣,内穀爲寳,故因其問,請盡言之。

010五穀:
【楊】五穀、五畜、五菓、五菜,用之充飢則謂之食,以其療病則謂之藥。是以脾病宜食粳米,即其藥也;用充飢虚,即爲食也。故但是入口資身之物,例皆若是。此穀、畜、菓、菜等廿物,乃是五行五性之味,藏府血氣之本也,充虚接氣,莫大於茲,奉性養生,不可斯須離也。黄帝並依五行相配、相尅、相生,各入藏府,以爲和性之道也。案神農及名毉本草,左右不同,各依其本具錄注之,冀其學者量而取用也。

011粳米飯甘,
【楊】味苦平,無毒。稻米味甘温生。

012麻酸,
【楊】胡麻味甘平,麻子味甘平。

013大豆鹹,
【楊】大豆黄卷味甘平,無毒。生大豆味甘平。

014麥苦,
【楊】大麥味鹹温微寒,無毒,似穬麥無皮。穬麥味甘微寒,無毒。小麥味甘微寒,無毒。

015黄黍辛。
【楊】丹黍米味苦微温,無毒。黍米味甘温,無毒。

016五菓:棗甘,
【楊】大棗味甘平,煞烏頭毒。生棗味辛。
 煞烏頭毒:ここにこの四字が有るべき理由がわからない。

017李酸,
【楊】人味苦甘平,無毒。實味苦。

018栗鹹,
【楊】味鹹温,無毒。

019杏苦,
【楊】核味甘苦温。花味苦無毒。實味一酸。

020桃辛。
【楊】核味苦甘平,無毒。實味酸。

021五畜:牛甘,
【楊】肉味甘平,無毒。

022犬酸,
【楊】牝狗肉味鹹酸,無毒。

023䐗鹹,
【楊】肉味苦。

024羊苦,
【楊】味甘大熱,無毒。

025鷄辛。
【楊】丹雄鷄味甘微温微寒,無毒。白雄雞肉微温。烏雄雞肉温也。

026五菜:葵甘,
【楊】冬葵子味甘寒,無毒,黄芩爲之使。葵根味甘寒,無毒。葉爲百菜主。心傷人。

027韮酸,
【楊】味辛酸温,無毒。

028藿鹹,
【楊】案別錄:小豆葉爲藿。

029薤苦,
【楊】味辛苦温,無毒。

030蔥辛。
【楊】蔥實味辛温,無毒。根主傷寒頭痛。汁平也。

031五色:黄色宜甘,青色宜酸,黒色宜鹹,赤色宜苦,白色宜辛。
【楊】養生療病,各候五味之外色,以其味益之也。

032凡此五者,各有所宜。所言五宜者:脾病者,宜食粳米飯、牛肉、棗、葵;
【楊】脾病食甘,素問甘味補,苦味爲冩。

033心病者,宜食麥、羊肉、杏、薤;
【楊】心病食苦,素問鹹味補,甘味爲冩。

034腎病者:宜食大豆黄卷、䐗肉、栗、藿;
【楊】腎病食鹹,素問鹹味冩,苦味爲補也。黄卷,以大豆爲之。

035肝病者,宜食麻、犬肉、李、韮;
【楊】肝病食酸,素問酸味補,辛味爲冩。

036肺病者,宜食黄黍、鷄肉、桃、蔥。
【楊】肺病食辛,素問辛味冩,酸味爲補。

037五禁:肝病禁辛,心病禁鹹,脾病禁酸,腎病禁甘,肺病禁苦。
【楊】五味所刻之藏有病,宜禁其能尅之味。

素問22蔵気法時論
038肝色青,宜食甘,粳米飯、牛肉、棗,皆甘;
【楊】肝者,木也。甘者,土也。宜食甘者,木尅於土,以所尅資肝也。

039心色赤,宜食酸,、犬肉、李,皆酸;
【楊】心者,火也。酸者,木也。木生心也,以母資子也。
 麻:底本には無いが、『素問』蔵気法時論には小豆があり、新校正に『太素』は麻に作るという。よって補う。

040脾色黄,宜食鹹,大豆、豕肉、栗,皆鹹;
【楊】脾者,土也。鹹者,水也。土尅於水,水味鹹也,故食鹹以資於脾也。

041肺色白,宜食苦,麥、羊肉、杏,皆苦;
【楊】肺者,金也。苦者,火也。火尅於金也,以能尅爲資也。

042腎色黒,宜食辛,黄黍、雞肉、桃,皆辛。
【楊】腎者,水也。辛者,金也。金生於水,以母資子。

043辛散,
【楊】肝酸性收,欲得散者,食辛以散
 之:底本には無いが、他条例によって補う。

044酸收,
【楊】肺辛性散,欲得收者,食酸以收之。

045甘緩,
【楊】脾甘性緩,欲得緩者,食甘以緩之。

046苦堅,
【楊】心苦性堅,欲得濡者,食鹹以濡也。

047鹹濡,
【楊】腎鹹性濡,欲得堅者,食苦以堅之。

048毒藥攻邪,
【楊】前摠言五味有攝養之功,今說毒藥攻邪之要。邪,謂風寒暑濕外邪者也。毒藥具有五味,故次言之。

049五穀爲養,
【楊】五穀五味,爲養生之主也。

050五菓爲助,
【楊】五菓五味,助穀之資。

051五畜爲益,
【楊】五畜五味,益穀之資。

052五菜爲埤,
【楊】五菜五味,埤穀之資。

053氣味合而服之,以養精益氣。
【楊】穀之氣味入身,養人五精,益人五氣也。

054此五味者,有辛酸甘苦鹹,各有所利,或散或收或緩或堅或濡,
【楊】五味各有所利,利五藏也。散、收、緩、堅、濡等,調五藏也。

055四時五藏病,五味所宜。
【楊】於四時中,五藏有所宜,五味所宜。

霊枢63五味論
056黄帝問少俞曰:五味之入於口也,各有所走,各有所病。酸走筋,多食之,令人𤸇;
【楊】力中反,淋也,篆字𤸇也。
 𤸇:李今庸『古医書研究』に(話題としては別の問題ですが)、「癃,一作𤸇,籀文作𤵸」云々と有りました。残念ながら仁和寺本の字形は両方とも𤸇のようですが、ひょっとすると楊上善は李先生の言われる籀文を書いていたのかも知れません。

057鹹走血,多食之令人渴;辛走氣,多食之令人洞心;
【楊】大貢反,心氣流洩疾。

058苦走骨,多食之令人變嘔;甘走肉,多食之令人心悗。余知其然也,不知其何由,願聞其故。
【楊】五味各走五藏所主,益其筋、血、氣、骨、肉等,不足皆有所少,有餘並招於病,其理是要,故請聞之。

059少俞對曰:酸入胃,其氣濇以收,上之兩膲,弗能出入也。
【楊】濇,所勑反,不滑也。酸味性爲濇收,故上行兩膲,不能與營俱出而行,復不能自反還入於胃也。

060不出則留於胃中,胃中和温,即下注膀胱,膀胱之胞薄以濡,得酸即縮卷約而不通,水道不通,故𤸇。
【楊】既不能出胃,因胃氣熱,下膀胱之中,膀胱皮薄而又耎,故得酸則縮約不通,所以成病爲𤸇。𤸇,淋也。胞,盛尿也。
 滲:添にも見える、文義から滲を採った。
 胞苞盛尿也:渋江抽斎『素問講義』は苞の上に音の字を脱しているのではないかと疑っている。

061陰者,積筋之所終也,故酸入走筋。
【楊】人陰器,一身諸筋終聚之處,故酸入走於此陰器。

062黄帝曰:鹹走血,多食之令人渴,何也?少俞曰:鹹入於胃,其氣上走中膲,注於脉,則血氣走之,血與鹹相得則血涘,血涘則胃汁注之,注之則胃中竭,竭則咽路燋,故舌乾善渴。
【楊】腎主於骨,鹹味走骨,言走血者,血爲水也。鹹味之氣,走於中膲血脉之中,以鹹與血相得,即澁而不中,胃汁注之,因即胃中枯竭,咽燋舌乾,所以渴也。咽爲下食,又通於涎,故爲路也。涘,音俟,水厓。,義當凝也。
 水厓涘:底本は水厓水、ただし下の水字の左脇には冫(にすい)もしくはカタカナのヒが有りそう。『説文解字』が「水厓也」であるところから、水厓で切り、下の水は、涘が冰に誤られ、さらに(或いは氷を通して)水に誤られたと判断した。

063血脉者,中膲之道也,故鹹入而走血矣。
【楊】血脉從中膲而起,以通血氣,故胃之鹹味,走於血也。

064黄帝曰:辛走氣,多食之,令人洞心,何也?少俞曰:辛入於胃,其氣走於上膲,上膲者,受氣而營諸陽者也,
【楊】洞,通洩也。辛氣慄悍,走於上膲,上膲衞氣行於脉外,營腠理諸陽。

065薑韮之氣薰之,營衞之氣不時受之,久留心下,故洞心。
【楊】以薑韮之氣辛薰,營衞之氣非時受之,則辛氣久留心下,故令心氣洞洩也。

066辛者,與氣俱行,故辛入而與汗俱出矣。
【楊】辛走衞氣,即與衞氣俱行,故辛入胃,即與衞氣汗俱出也。

067黄帝曰:苦走骨,多食之令人變歐,何也?少俞曰:苦入於胃,五穀之氣皆不能勝苦,苦入下管,三膲之道皆閉而不通,故變歐。
【楊】苦是火味,計其走血以取資骨令堅,故苦走骨也。苦味堅強,五穀之氣不能勝之,故入三膲,則營衞不通,下膲復約,所以食之還出,名曰變歐也。

068齒者,骨之所終也,故苦入而走骨,
【楊】齒爲骨餘,以楊枝苦物資齒,則齒鮮好,故知苦走骨。

069故入而復出,知其走骨。
【楊】人食苦物,入咽還出,故知走骨而出歐也。

070黄帝曰:甘走肉,多食之令人心悗,何也?少俞曰:甘入於胃,其氣弱少,不能上於上膲,而與穀留於胃中,甘者令人柔潤者也,胃柔則緩,緩則虫動,虫動則令人心悗。
【楊】甘味氣弱,不能上於上膲,又令柔潤,胃氣緩而虫動。虫動者,穀虫動也。穀虫動以橈心,故令心悗。悗,音悶。

071其氣外通於肉,故曰甘入走肉矣。
【楊】脾以主肉,甘通於肉,故甘走肉也。

霊枢78九針論素問23宣明五気
072五味所入:酸入肝,辛入肺,苦入心,甘入脾,鹹入腎,淡入胃,是謂五味。
【楊】五味各入其藏。甘味二種,甘與淡也。穀入於胃,變爲甘味,未成曰淡,屬其在於胃;已成爲甘,走入於脾也。

073五走:酸走筋,辛走氣,苦走血,鹹走骨,甘走肉,是謂五走。
【楊】九卷一文及素問皆苦走骨,鹹走血。九卷此文言苦走血,鹹走骨。皆左右異,具釋於前也。

074五裁:病在筋,食酸;病在氣,無食辛;病在骨,無食鹹;病在血,無食苦;病在肉,無食甘。口嗜而欲食之,不可多也,必自裁也,命曰五裁。
【楊】裁,禁也。筋、氣、骨、肉、血等,乃是五味所資,以理食之,有益於身;從心多食,致招諸病,故須裁之。
 無:底本はこの一字を毋に作る。下の食辛と食鹹と食甘は无。


03-05壽限
霊枢54天年
001黄帝曰:人之夭壽各不同,或夭、或壽、或卒死、或病久,願聞其道。
【楊】問有四意:夭、壽、卒死、病久。

002岐伯曰:
【楊】荅中荅其得壽,餘三略之。得壽有九:

003五藏堅固,
【楊】謂五藏形,堅而不虚,固而不變,得壽一也。

004血脉和調,
【楊】謂血常和,脉常調,得壽二也。

005肌肉解利,
【楊謂】外肌肉,各有分利,得壽三。
 内:蕭延平本は内を肉に作り、恐らくは内の誤りと言う。仁和寺本を検するにまさに内に作る。

006皮膚緻密,
【楊】緻,大利反。謂皮腠閉密,肌膚緻實,得壽四。

007營衛之行,不失其常,
【楊】謂營衛氣,一日一夜,各循其道,行五十周,營衛其身,而無錯失,得壽五。

008呼吸微徐,
【楊】謂吐納氣,微微不麤,徐徐不疾,得壽六。

009氣以度行,
【楊】呼吸定息,氣行六寸,以循度數,日夜百刻,得壽七。

010六府化穀,
【楊】胃受五穀,小腸盛受,大腸傳導,膽為中精决,三膲司决瀆,膀胱主津液,共化五穀,以奉生身,得壽八。

011津液布揚,
【楊】所謂泣、汗、涎、唾等,布揚諸竅,得壽九也。

012各如其常,故能久長。
【楊】上之九種營身之事,各各無失,守常不已,故得壽命長生久視也。
 楊注の文末を底本は之也に作るが、元々は也」だったものが也之に誤られ、さらに之也に誤られたと判断する。『季刊内経』NO.155 荒川緑「仁和寺本太素楊注末に現れる也と之について」を参照のこと。

013黄帝曰:人之壽百歲而死者,何以致之。
【楊】問其得壽所由。

014岐伯曰:使道墜以長,
【楊】謂有四事得壽命長。使道,謂是鼻空使氣之道。墜以長,出氣不壅。為壽一也。
 この楊注末にも、底本には之字が有るが、もともとは」であったと判断して削る。

015基牆高以方,
【楊】鼻之明堂,牆基高大方正,為壽二也。

016通調營衛,三部三里,
【楊】三部,謂三膲部也。三里,謂是膝下三里,胃脉者也。三膲、三里,皆得通調,為壽三。

017起骨高肉滿,百歲乃得終也。
【楊】起骨,謂是明堂之骨。明堂之骨,高大肉滿,則骨肉堅實,為壽四也。由是四事,遂得百歲終也。

018黄帝曰:其不能終壽而死者,何如?
【楊】問其夭死。

019岐伯曰:其五藏皆不堅,
【楊】夭者亦四:五藏皆虚,易受耶傷,為夭一也。

020使道不長,空外以張,喘息暴疾,
【楊】使道短促,鼻空又大,洩氣復多,為夭二也。

021又卑基牆,
【楊】鼻之明堂,基牆卑下,為夭三也。

022薄脉少血,其肉不實,數中風寒,血氣不通,眞耶相攻,亂而相引,
【楊】脉小血少,皮肉皆虚,多中外耶,血氣壅塞,眞耶相攻,引亂眞氣,為夭四。

023故中年而壽盡矣。黄帝曰:善。
【楊】黄帝聞壽夭之所由,故讚述之也。

024黄帝曰:其氣之盛衰,以至其死,可得聞乎?
【楊】消息盈虚,物化之常,故人氣衰,時時改變,以至於死地,各不同形,故請陳之也。

025岐伯曰:人生十歲,五藏始定,血氣已通,其氣在下,故好走。廿歲,血氣始盛,肌肉方長,故好趨。卅歲,五藏大定,肌肉堅固,血脉盛滿,故好歩。卌歲,五藏六府十二經脉,皆大盛以平定,腠理始踈,榮華頺落,髮鬢頒白,盛不揺,故好坐。
【楊】血,營氣也。氣,衛氣也。大盛,内盛也。始踈,外衰。
 丕:『太素・寿限』「㔻盛不揺」中の「㔻」を、蕭延平本『太素』も袁昶通隠堂本『太素』も「平」に作る。仁和寺古抄本『太素』を細かに調べてみると、「㔻」字の下の注に「㔻,彼悲反,大也」という六字が有る。蕭延平の按語には「疑うらくは平盛はまさに丕に作るべし」という。『干禄字書』を調べてみると、その平声に「㔻丕,上通下正」という。按ずるに「㔻」字の手写体と和平の「平」字の形はきわめて近いから、抄者があるいは「㔻」字を知らず、誤って「平」字としたのではないか。『干禄字書』に「㔻」を載せて「丕」の俗字とするから、この疑問は渙然として氷解する。(銭超塵『黄帝内経太素研究』p389)

026五十歲,肝氣始衰,肝葉始薄,膽汁始減,目始不明。六十歲,心氣始衰,喜憂悲,血氣懈惰,故好卧。七十歲,脾氣虚,皮膚枯。八十歲,肺氣衰,魄離,魄離故言喜誤。九十歲,腎氣燋,藏枯,經脉空虚。百歲,五藏皆虚,神氣皆去,形骸獨居而終矣。
【楊】肝為木,心為火,脾為土,肺為金,腎為水,此為五行相生次第,故先肝衰,次第至腎也。至於百歲,五藏虚壞,五神皆去,枯骸獨居,稱為死也。
 ここの楊注の文末も、底本は之也に作る。

素問01上古天眞論
027黄帝問於岐伯曰:人年老而無子者,材力盡邪?將天數然?
【楊】材力,攝養之力也。天數,天命之數也。

028岐伯曰:女子七歲,腎氣盛,更齒髮長。
【楊】腎主骨髮,故腎氣盛,更齒髮長。

029二七而天癸至,任脉通,伏衝脉盛,月事以時下,故有子。
【楊】天癸,精氣也。任衝脉起於胞中下極者也。今天癸至,故任脉通也。伏衝之脉起於氣街,又天癸至,故衝脉盛也。二脉並營子胞,故月事來以有子也。

030三七,腎氣平均,故眞牙生而長極。
【楊】眞牙,後牙也。長極,身長也。

031四七,筋骨堅,髮長極,身體盛壯。
【楊】身之筋、骨、體、髮,無不盛極。

032五七,陽明脉衰,面始燋,髮始惰。
【楊】陽明脉起於面,行於頭,故陽明衰,面與髮始燋落。

033六七,三陽脉衰於上,面皆燋,髮白。
【楊】三陽,少陽、太陽、陽明也。三陽脉俱在頭,故三陽衰,面燋髮白。

034七七,任脉虚,伏衝衰少,天癸竭,地道不通,故形壞而無子。
【楊】任、衝二脉氣血俱少,精氣盡,子門閉,子宮壞,故無子。

035丈夫年八歲,腎氣實,髮長齒更。二八,腎氣盛,天癸至,精氣溢冩,陰陽和,故能有子。三八,腎氣平均,筋骨勁強,故眞牙生而長極。四八,筋骨隆盛,肌肉滿。五八,腎氣衰,髮惰齒槀。六八,陽氣衰於上,面燋,鬢髮頒白。七八,肝氣衰,筋不能動,天癸竭,精少,腎藏衰,形體皆極。八八,則齒髮去。
【楊】齒槀者,骨先衰,肉不附,故令齒枯也。

036腎者生水,受五藏六府之精而藏之,故五藏盛乃冩。今五藏皆衰,筋骨解惰,天癸盡矣,故髮鬢白,體重,行步不正,而無子耳。
 筋骨解惰天癸盡矣:この八字は『医家千字文註』に引くものに拠って補う。
 故髮鬢白體重行步不正而無子耳:この十四字は『甲乙経』巻六の形気盛衰大論に拠って補う。


3July2004