統計学的画像再構成法である
OSEMアルゴリズムの基礎論
【挨拶】
近年SPECT画像再構成法にOSEM法なる方法が実用化され、多くの研究が行われ報告されています。従来、画像再構成法といえばフィルター補正逆投影法(Filtered Back Projection以下FBP)が主流でした。FBP法とOSEM法とはどこが違うのかをできるだけわかりやすく解説いたします。本ホームページの内容は、主に横井孝司先生(PhD、島津製作所)と篠原広行教授(MD・PhD、東京都立保健科学大学)の解説を元に、山本智朗(放射線技師、昭和大学藤が丘病院)が、神奈川核医学研究会監修のもとで作成しております。内容は随時訂正を行って参りますので、ご質問およびご指摘など、たくさんのご意見をいただき、より判りやすいものにしていきたいと思います。
【序論】
OSEMとは、Ordered Subset Expectation Maximization の略です。もっと細かく書くとこの後に、Maximum Likelihood なる言葉が続きます。この意味はなんでしょうか? 基本となる部分はこの、Maximum Likelihoodなのです。日本語では“最尤推定”と訳します。なにやらもう難しい言葉が出てきましたが、よく使われる“平均値”は最尤推定の最も簡単な例となります。実際に例をあげて解説しましょう。図1を見てください。
ある試料をウェル・カウンタで測ろうとします。このとき同じ条件下で測定しても、カウント値は同じ値を示すことはめったにありません。少しばらつきが生じるものです。そこでこの試料と同じ条件で別の試料の値を予想してみてください。あなたはどう予想しますか? すべての試料のカウント値を合計しそれを本数で割る、つまり平均値(これを算術平均または相加平均という)を計算し、この値を予測しませんか? つまりこの値が“最もらしい値”と予想できます。このことを、“尤度を求める”というのです。「最も確からしいこと」が「最尤」じ同じことなのです。
RIをやってない方はこの例はわかりにくいですね。他の例を示しましょう。100円玉がたくさん入った箱があります。さあ、掴み取りです。練習をしてみます。3回やってみてそれぞれ、36400円、33800円、35200円と取れました。さて本番です。いくら取れると思いますか? このときもおそらく予想値として、全ての合計を3で割って平均値を参考にしますよね。(コツを掴んでより多く取れること予想するかもしれませんが・・・。)これが最尤推定の入り口なのです。
これから、基礎論から詳しく追っていきます。本内容は、数式を見るだけでいやになる人をも対象にしています。とくに前半は最尤推定の基礎の基礎を解説します。人によっては、必要のない所(こんなことは解るぞ!)は飛ばして読んで頂いても構いません。また核医学分科会誌のほか、多くの解説書がたくさんありますので参考にしてください。最尤推定は決してその理論は難しくありません。数学にはどうしても多くの記号を使用します。苦手の人の多くは、この記号に慣れていないだけです。大丈夫です、すぐに慣れます。
この解説ホームページで、より多くの方に最尤推定法に興味をもたれ、OSEMを理解する一助となれば幸いです。
では、始めていきましょう!!