統計学的画像再構成法である
OSEMアルゴリズムの基礎論
【第1章】確率・統計の基礎
1.4 独立性
独立性について説明する前に、集合の記号を覚えましょう。よく使う記号には、
∩、∪、⊂、⊃、⊆、⊇、∈、∋
などがあります。意味はそれぞれ、
かつ、または、左は右に含まれる、右は左に含まれる、左は右に含まれるか等しい、
右は左に含まれるか等しい、左は右に属す、右は左に属す
と約束されています。また否定するときは、≠(等しくない)のように/を使って否定します。例えば、
は、“AはBに含まれない”となります。ではこれらの記号を使って独立性を説明します。簡単ですからご心配なさらずどうぞ読んでみてください!!
さて、ある事象Aについての確率Pは、P(A)と書きましたね。もう一つ違う事象Bについての確立をP(B)としましょう。そこで、A∩Bを考えます。これはAかつBでしたね。言い換えると“AでもありBでもある”ということです。ここで、
が成り立つとき、AとBは互いに独立といいます。つまりAでもありBでもあるときの確率は、Aについての確率とBについての確立の掛け算に等しいときにAとBは互いに独立であるのです。例をあげて説明しましょう。
《コインとサイコロ》
1枚のコインと1個のサイコロを同時に投げて見ましょう。そしてサイコロの6の目がでる確率を考えてみます。6の目はコインが表であろうと裏であろうとその確率は1/6ですよね。つまりサイコロの目はコインの表裏に影響されていません。このようなときを独立といいます。コインが表でかつサイコロの目が6の確立を求めましょう。コインが表の確率は1/2です。サイコロが6の目の確率は1/6です。同時に起こるのはこれらを掛けたときですから1/12です。したがって上の定義式が成り立ちます。
注意:ここで2つの確率を足してはだめですよ。足すと2/3になるので常識的にも変ですよね!!
《2個のサイコロ》
こんどは2個のサイコロを同時に投げることを考えましょう。1つ目のサイコロに2の目が出る確率は1/6です。2つ目のサイコロに5の目がでる確率も1/6です。2の目5の目が同時に出るのはこれらを掛けたときですから1/36です。したがって上の定義式が成り立ちます。これを確率論らしく書いてみましょう。
A={1つ目のサイコロに2の目が出る}
B={2つ目のサイコロに5の目が出る}
P(A)={1つ目のサイコロに2の目が出る確率}=1/6
P(B)={2つ目のサイコロに5の目が出る確率}=1/6
P(A∩B)={AとBが同時に起こる確立}=1/36
∴ P(A∩B)= P(A)P(B)
AとBは独立であるといえる。
ところが、事象を次のようにするとどうでしょうか?
A={1つ目のサイコロに偶数が出る}
B={2つ目のサイコロに奇数が出る}
C={1つ目と2つ目のサイコロの合計が偶数}
D={1つ目のサイコロに6の目が出る}
P(A)=P(B)=P(C)=1/2 P(D)=1/6
このとき、D⊂AであるのでP(A∩D)=1/6である。よって、P(A∩D) ≠ P(A)P(D)であるので、
AとBは独立であるといえない。
さらに次のように示すことができます。
P(A∩B)=P(A∩C)=P(B∩C)=1/4
よって、
P(A∩B)= P(A)P(B)
P(A∩C)= P(A)P(C)
P(B∩C)= P(B)P(C)
であることがわかります。しかし、P(A∩B∩C)=0≠P(A)P(B) P(C)、つまり、AとBは互いに独立、AとCは互いに独立、BとCは互いに独立ですが、AとBとCは独立ではありません。このような時は、AとBとCは組ごとに独立であるが、互いには独立ではないということもあります。