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ロック曰くっ、(その2)

John Locke, An Essay concerning Human Understanding, The Clarendon Edition of the Works of John Locke, 1975, p. 128.


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わたしが「快さpleasure」あるいは「苦しみpain」と言うときに意味して いるのは、何であれわたしたちを喜ばすdelightものあるいは苦しませる molestもの全てである、と考えていただきたい。その場合、たとえ快苦がわた したちの心の中で考えられる事柄から生み出されようと、わたしたちの身体に 作用する何らかの事柄から生みだされようと、なんら違いはない。というのも、 その一方を満足、喜び、快さ、幸福などのどれで呼ぼうと、またその他方を不 快uneasiness、悩みtrouble、苦しさ、苦悩torment、苦悶anguish、不幸 miseryなどのどれで呼ぼうと、それらの名称はやはり同じことでただ程度が異 なる過ぎず、快さあるいは苦しさの観念、すなわち喜びあるいは不快の観念に 属しているからである。


おやまあ。政治理論ではベンタムの宿敵であるロックも、人間本性の理解 においては非常にベンタムに近いんですね。ここで言われているのは、快楽っ ていうのは肉体的などろどろしたやつだけではないよ〜、ってことです。精神 的な快も身体的な快もみんな同じ快なんだよって。

この節の後でロックは、心理的快楽説(人間はより快さの多い、あるいはよ り苦しさの少ない行為を選択する)を説いています。こういう発想って、功利 主義者たちだけでなく、英国人はみんな多かれ少なかれ持っていたわけですな。


Satoshi Kodama
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Last modified on 08/04/97
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