FINEニューズレター編集委員会用記事

27/Jun/2002

  1. スコットランド、売春「寛容領域」の法制化
  2. エコツーリズムの流行とその問題点
  3. 英国、すしづめ状態の養鶏場の状況改善へ

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


1. スコットランド、売春「寛容領域」の法制化

(from The Guardian Weekly, `Bill to legalise prostitute `tolerance zone', June 13-19, 2002)

スコットランド議会で、一定の領域で売春を行なうことを合法化する売春寛容 領域法案(prostitution tolerance zones bill)の検討がまもなく行なわれる。

スコットランドを含め、英国では売春は違法である (追記: 厳密には、売春自体は違法ではないが、路上での勧誘が違法)。 しかし、スコットランドでは、すでにエディンバラやアバディーンに 寛容領域を試験的に設置しており、 この寛容ゾーンでは警察が売春婦の様子を直接確認できるため、売春婦 に対する暴行が減り、またポン引きや麻薬のディーラーの数も減ったとされる。 これを受けて、スコットランド議会は、このような領域をスコットランドのど の地域でも警察と地方議会の決定で設置できる法の検討を進めている。しかし、 このような法は、売春を全面的に合法化するすべり坂になりかねないと危惧す る声もある。

一口コメント

要するに、赤線を作れということだ。 マリファナの非犯罪化の検討にしろ、 英国ではこういう実験をする場合が多いようだ。

関連サイト

Police doubts over red light zones
BBC NEWSの記事。警察の反対理由は道徳的なものではなく、 そのような寛容領域を作るのは法的に無理かもしれないということらしい。
Scottish devolution explained...
BBC Newsの記事(1997年)。スコットランド議会の権限について。 刑法に関しては(ウェストミンスター議会から独立して) 完全な立法権を持つようだ。

2. エコツーリズムの流行とその問題点

(from The Guardian Weekly, `Visiting disaster', June 13-19, 2002)

急成長の産業であるエコツーリズムは、今日政府や国際銀行などによっても支 援されているが、土着の住民はその恩恵をこうむることができないでいる。

エコツーリズムは世界最大の産業であるツーリズムの中でも最も急成長している セクターであり、国連は2002年をエコツーリズムの国際年と宣言した。 環境保護団体やツアー団体によれば、エコツーリズムは、環境保護の資金源となり、 貧しい人々を助け、文化交流にも役立つものである。 通常、 エコツーリストは普通のツーリストよりもずっと多くのお金を旅先で使うとされる。

しかし、多くの場合、エコツーリズムでもうけるのは政府や観光産業であり、 地域の住民ではない。たとえば、バングラデシュやブラジルでは、エコ公園や エコリゾートビーチを作るために、そこに住んでいた住民が追い出されるという 事態が起きている。政府は「環境保護のためには、原始的な生活はよくない」 という理由で地域の住民を追い出そうとしているが、実際の理由はその土地を 企業に売り飛ばそうというものであることが多い。 アジア開発銀行やインターアメリカン開発銀行や世界銀行といった国際銀行も、 エコツーリズム開発のために資金を提供しているが、 それらの銀行の支援している開発はしばしば地域の住民との争いを引き起こしている。 地域の住民はエコツーリズムを否定するわけではないが、 自分たちが管理し、利益を得ることを求めている。

一口コメント

この記事は環境保護団体(Tourism Concern)の人が書いているので情報が かたよっている可能性があるが、それにしてもエコエコと言ってもいろいろ落し穴が あることには注意すべきだろう。

関連サイト

Rethinking Tourism Project
`an international network of indigenous peoples campaigning on tourism' だそうだ。
Tourism Concern
`The UK's leading resource for ethical and sustainable tourism'だそうだ。
About Ecotourism
UNEP(国連環境計画)のページ。エコツーリズムについての説明がある。
International Year of Ecotourism
UNEPのページ。2002年を国際エコツーリズム年とした経緯が書かれている。
自然の魅力探るエコツアー始まる 舞鶴 モニター40人が参加
京都新聞から。
Marthinus van Schalkwyk: Tourism should be everybody's business
南アフリカ共和国で2002年8月に行なわれた「責任あるツーリズム会議」 におけるスピーチ。地域住民に利益があり、環境にやさしいツーリズムの ためには官民のパートナーシップが必要と論じられている。

3. 英国、すしづめ状態の養鶏場の状況改善へ

(from The BBC News, `Battery hens 'to be banned'' (http://news.bbc.co.uk/hi/english/uk_politics/newsid_2064000/2064268.stm), 25 June, 2002)

英国政府は、養鶏場で卵を産む雌鳥を入れるための連装式のカゴを全面的に禁 止すべきかどうかについて、市民を意見を取り入れて法制化を思案中である。

今週施行されるEUのメンドリの厚生基準によると、 従来の連装式のカゴ(battery cages)は、 2003年1月以降は新たに導入してはならず、 2012年の1月に全面的に使用禁止になる。 ただし、よりスペースのある改善されたカゴ(enriched cage)は禁止されない。

ドイツではすでに、この改善されたカゴも禁止することが決まっており、 英国の動物厚生大臣のエリオット・モーリーは、 ドイツと同様にすべきかどうかも検討したいとしている。 RSPCA(王立動物虐待防止協会)やCIWF(Compassion In World Farming)も、 改善されたカゴは雌鳥にとってはほとんど変わらないと主張している。

一部の養鶏家たちは、この禁止によって卵が高くなり、けっきょく同じような 環境で作られた安い卵を外国から輸入することになると批判している。 実際、英国の7割の消費者はカゴで育てられた雌鳥の卵を買っている。 これに対し、CIWFの人間は、 政府はカゴで育てた卵の輸入を禁止すればよいと主張している。

モーリー大臣は、雌鳥のくちばしを切り落とす慣行も禁止したいと考えている。 EUの指令は2010年までにこれを禁止することとしているが、現状では くちばしをそのままにしておくとまわりの雌鳥の羽をつついたり、 共食いの危険がある。

現在英国では、約2400万羽の雌鳥がすしづめ状態にされて養育されており、 英国で使用される卵の72%を供給している。マークス・アンド・スペンサーなどの 一部のスーパーでは、 すでにすしづめ状態の養鶏場で作られた卵の販売を禁止している。

新しい規制はイングランドだけに適用される。 スコットランドやウェールズや北アイルランドでも類似の法案が作られている。 また、この規制は卵を産むための雌鳥にのみ当てはまるもので、 政府は食用のためのニワトリや繁殖のためのニワトリには別のガイドラインを作成中 である。

一口コメント

まあ、この記事をちゃんと読むとかわいそうで卵が食べられなくなります。 オレも納屋で育てられた(barn-laid)卵とか、放し飼い(free-range)の卵を 買う方法を調べてみよう。

関連サイト

Head to head: The battery egg debate
養鶏家と動物愛護団体の賛成意見、反対意見。
The chicken rescuer
「使用済み」の雌鳥を畜産工場から買い受けて一人前の鶏に戻すという試みを やっている人。なかなか感動的。

Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Thu Aug 29 13:45:22 LMT 2002