FINEニューズレター編集委員会用記事

13/Jun/2002

  1. 英国の環境大臣、買物のポリ袋に課税を検討中
  2. 英国で遺伝子操作を受けている動物は毎年50万頭以上
  3. ロシアでHIV感染者の急激な増加
  4. 欧州議会でデータ・プライバシーを大幅に制限する法案が通過
  5. 米国、公立図書館でのフィルタリングソフト使用の法的強制に違憲判決

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


1. 英国の環境大臣、買物のポリ袋に課税を検討中

(from The Guardian Weekly, `Minister seeks to tax plastic shopping bags', May 23-29, 2002)

英国の環境大臣は、ゴミと環境汚染を減じるために、 買物用のポリ袋に9ペンスの税を課すことを検討中である。

英国の買物客は毎年80億枚のポリ袋を使っているとされ、 これは一人あたまにすると年に134枚である。 すでにポリ袋に対する課税を始めたアイルランドでは、 使用されるポリ袋の枚数が劇的に減っており、 英国政府の環境大臣のマイケル・ミーチャーは、 アイルランドの事例を参考にしたうえでこの税を導入するかどうかを 決める意向である。

一口コメント

うちにもたくさんポリ袋があるので、 今後は布の袋を持ち歩くようにしよう。

関連サイト


2. 英国で遺伝子操作を受けている動物は毎年50万頭以上

(from The Guardian Weekly, `Half a million animals genetically modified in labs', May 23-29, 2002)

英国の監視団体のGeneWatchによると、毎年数十万頭の動物が医学的にも商業的にも ほとんど役に立たない実験のために遺伝子操作を受けている。

2000年に遺伝子操作の実験に使われた582000頭の動物のうち、 ほとんどがマウスであるが、羊、山羊、牛、豚、兎、鳥、鶏、猫なども含まれている。 実験の規模はこれまで知られておらず、科学者たちを驚かせている。

GeneWatchのレポートによると、多くの実験は非常に効率が悪く、 動物の命を無駄にしており、その多くは苦痛を伴っている。 またレポートは、動物の遺伝子操作実験についての社会的な議論が必要だとし、 農業目的、ペット目的、薬の生産目的、臓器のドナー目的の遺伝子操作実験を 規制する法の制定を求めている。

レポートによれば、 これまで世界で行なわれた一万以上の動物のクローニングの実験のうち、 生きて産まれてきたのは124件で、そのうち成人にまで達したのは65件だけである。 また、多くの場合、深刻な身体的欠陥を伴っている。ある研究では、 40頭のクローン牛を作ろうとしたところ、 34頭が出産前診断で異常が発見され、数頭は四肢に異常が見られ、 そしてそのほとんどが動きが非常に遅かったり、体が弱かったりした。

動物の遺伝子操作の実験は過去10年間に800%増大した。 米国ではペットや絶滅危惧品種のクローニングの試みも行なわれだしたが、 実験の多くは、肝炎や血液疾患などの人間の病気を治すために、 動物に遺伝子操作をして必要なタンパク質を作りだすことを目的としている。 これまでにそのような治療用タンパク質が29種類作り出されたが、 レポートはそれほど多くの動物を実験台にする必要があるのかどうかについて 疑問を呈し、重要なのは人間と動物の幸福のバランスを取ることだと主張している。

また、ブタを中心に動物の臓器を人間に移植する異種移植の研究も進められている。 臓器の需要が供給に追いついていないため、 この分野には膨大な投資が行なわれているが、 まだほとんど成功していない。 英国の2社を含め、世界で8社の会社が遺伝子操作されたブタから 肝臓、腎臓、心臓、膵臓を異種移植する研究を行なっている。

クローン羊のドリーを生みだしたロスリン研究所はこのレポートを批判して、 遺伝子操作実験はケースバイケースで評価されるべきで、 このレポートのように少数の例を用いてすべての実験を非難するのは正当でない と主張している。しかしその一方で、ペットや絶滅危惧品種のクローニングや、 農業目的のクローニングは時期尚早だと述べた。

また、英国研究擁護団体(the Research Defence Society)もこのレポートを批判し、 人間の病気を理解するために動物実験は非常に重要であり、 研究者は責任をもって動物実験を行なっていると論じている。

一口コメント

研究室で次々と奇形の動物が産まれたり流産したりしているのかと思うと気が重い。 もちろんあと10年もすれば技術が完成してそういうこともなくなるのかもしれないが。

関連サイト

GeneWatch
GeneWatchの公式ウェブサイト。問題のレポートもPDFファイルで読める。
Research Defence Society
医学目的の動物実験を擁護する英国団体のウェブサイト。
Guardian Unlimited | Special reports | Special report: ethics of genetics
ガーディアンの遺伝子操作関係の特集。

3. ロシアでHIV感染者の急激な増加

(from The Guardian Weekly, `Growing Russian HIV epidemic threatens to spread to rest of Europe', June 6-12, 2002)

英国の科学者の研究によると、ロシアでは5年以内に成人の5%がHIVに感染し、 ヨーロッパ諸国に大きな影響を与えることになる。

UNAids(United Nations Aids Programme)によって委託・援助されている ロンドンのインペリアル・カレッジの研究者たちの調査によると、 ロシアでは2007年までに400万人以上の成人がHIVに感染すると考えられる。 現在、ロシアで確認されているHIV感染者の数は195000人で、 UNAidsの推測だと120万人ほどがHIVを保有していると考えられている。

研究によれば、 HIVはここ3年のあいだにロシアの薬物使用者のあいだで急激に広まっているが、 彼らが性交によって薬物使用者以外の人々にHIVをうつすことにより、 今後10年のあいだにアフリカ並の感染率が生じる可能性がある。 ロシアではコンドームの使用率が低く (これには、ロシア正教会の教えも影響している)、 性病の感染率は西欧諸国の100倍高いとされている。

また、薬物使用者の3分の1は薬を買うために売春をしており、 このことも非薬物使用者にHIVを広める一因となる。

数週間前に世界銀行がプーチン政権に対して行なった警告では、 現在の感染率でHIVが広がれば、ロシアの経済は4%縮小するというものであったが、 プーチン政権は、投資が減少することや、 欧州におけるロシア人の移動がさらに制限されることを恐れて、 HIVの蔓延の事実を認めたがっていない。 また、ロシアではセーフ・セックスの教育も十分になされていない。

東欧諸国の女性がベルリン、アムステルダム、ロンドンといった都市に来て 性産業に従事することを考えると、ロシアにおけるHIVの蔓延は欧州全体にとって 大きな影響を与える問題である。

一口コメント

中国もエイズ問題が深刻らしいが、ロシアも心配だ。ちゃんと性教育してくれ。

関連サイト

AIDS around the world
BBCの記事。UNAIDSの2001年の報告から。 2001年にHIVに感染したのは500万人。AIDSで死んだのは300万人。 15才以下のAIDS患者は270万人。

4. 欧州議会でデータ・プライバシーを大幅に制限する法案が通過

(from The Guardian Weekly, `Europe votes to sweep away data privacy', June 6-12, 2002)

市民団体の反対にもかかわらず、欧州議会は警察にすべての電話およびインター ネット使用者の通信記録にアクセスできる権限を与える法案を可決した。

この法案(欧州データ保護法)はさらにEUの参加国15国のすべてで認可される 必要があるが、そうなると、電話会社やインターネットプロバイダは、 これまで料金請求のために数ヶ月の間だけ保持していた顧客の通信記録を、 政府の指示に従って不特定の期間保持しなくてはならなくなる。

警察が電子通信の内容を調べるためには捜査令状が必要であるが、 この法によって警察は、ある個人がいつだれにメイルや電話をしたか、 どのウェブサイトを訪れたかなどを完全に知ることができる。 また、携帯電話は数秒ごとに最寄りの基地局と通信を行なうので、 警察は携帯電話の記録から個人の動きを知ることができるようになる。

もともとこの欧州データ保護法は電子商取引の安全性を高めるために 作られたものだが、米国のテロを受けて、とくに英国の強い後押しにより、 上記の趣旨の修正条項(amendment)が付け加えられた。

市民的自由を擁護する市民団体の多くがプライバシーの重大な侵害だとして この法に反対しており、 また通信会社もデータ保持に膨大なコストがかかるとして反対している。

一口コメント

アルカイーダのおかげで暮らしにくい世の中になりつつある。

関連サイト


5. 米国、公立図書館でのフィルタリングソフト使用の法的強制に違憲判決

(from The Guardian Weekly, `Judges strikes down internet porn filters for libraries', June 6-12, 2002)

フィラデルフィアの米国連邦地方裁判所は、公立図書館のコンピュータにフィ ルタリングソフトの導入を要請する法に違憲判決を出した。

この判決により違憲とされたのは、 二年前にクリントン大統領によって署名された児童インターネット 保護法(Children's Internet Protection Act)である。 この法によれば、 すべての公立図書館は今年の7月1日からポルノサイトへのアクセスをブロックする ソフトウェアの導入をするか、 さもなければ連邦政府からのコンピュータ関連の資金援助を失なうかの選択を しなければならない。

しかし、判決では、 インターネットの現状とフィルタリングソフトの技術レベルからして、 言論の自由を制限せず、しかも十分にポルノサイトをブロックするような 自動のフィルタリングソフトは開発できていないため、 上記の法は言論の自由を保証する修正第一条に抵触するとされた。

この判決は米国図書館組合(the American Library Association)や 米国市民的自由連合(American Civil Liberties Union)によって高く評価された。 「司書は思想警察ではない」とACLUのあるメンバーは述べている。

一口コメント

修正第一条はほんとに強力。

関連サイト

American Library Association
ガーディアンの記事ではAmerican LIBRARIAN Associationになっているが、 どうもこちらが正しい様子。公式サイト。 上の判決についてのプレスリリース
American Civil Liberty Union
公式サイト。かなり広汎に活動しているようだ。 上の判決についての プレスリリース

Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Jul 7 17:20:01 JST 2002