FINEニューズレター編集委員会用記事

30/Apr/2002

  1. オランダの安楽死法施行
  2. チェコで世界初の光害法が施行
  3. 米国で耳の聞こえないレズビアンのカップルが、 耳の聞こえないデザイナー・ベビーを出産
  4. 国連、常設の国際刑事裁判所の設置を決定
  5. EUの科学者たち、霊長類の動物実験を擁護

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


1. オランダの安楽死法施行

(from The Guardian Weekly, `Netherlands makes mercy killing legal', April 4-10, 2002)

今年4月1日、オランダで安楽死法が施行された。

オランダでは20年間、安楽死は事実上黙認されており、 毎年2000件から3000件起きているが、これまで、 医者は法的には親族などによって告訴を受ける可能性があった。

新しい法によれば、 (1)安楽死は継続的で耐えられない、 治癒不能な苦痛状態にある患者にのみ適用され、 (2)別の医者によるセカンドオピニオンが必要であり、 (3)患者は健全な精神を有しており、 (4)安楽死の要請は自発的で、独立になされ、繰り返しなされなければならない。

9割のオランダ市民がこの法を支持しているが、 キリスト教団体は不道徳な法だと非難している。 国連人権委員会は、安楽死が濫用される危険を指摘し、 また親の同意があれば12才の子供でも安楽死ができることに疑問を呈している。 さらに、法的要件が整っていたかどうかは患者の死後にしかチェックされない ことも問題視されている。

なお、「オランダ安楽死ツアー」の可能性を指摘する声もあるが、 法には医者と患者の密接なつながりを必要とする条項があるため、 政府はこの危険はないとしている。

オランダの影響を受けて、ベルギーでも安楽死法案が国会で審議されている。 フランスの厚生大臣も、安楽死法の制定を検討中であるという。

一口コメント

やっと施行された。

関連サイト

Dutch legalise euthanasia
BBC Newsの記事。

2. チェコで世界初の光害法が施行

(from The Guardian Weekly, `Unbearable lightness of being', April 11-17, 2002)

チェコ共和国では、天文学者の働きかけにより、世界で初の夜間の人工灯による 公害を規制する法が6月1日から施行される予定である。

ケプラーやティコ・ブラーエを生みだし、 16世紀から天文学の伝統が続くチェコでは、 共産主義政権の崩壊後、急速にネオンライトや街灯が増え出し、 都市部で星を見ることが困難になった。

新しい法は、光害(light pollution)を 「目的となる領域の外にはみだしている--とくに水平線より上に向けられている--、 人工灯によるあらゆる照明のこと (every form of illumination by artificial light which is dispersed outside the areas it is dedicated to, especially if directed above the level of the horizon.)」 と定義し、 光害の発生を予防する手段を取らなければ 人工灯の所有者に4200ドルの罰金刑を課すものである。 したがって、今ある多くの人工照明は、 下向きに照明を当てるよう変更することが必要とされる。

一口コメント

星が見えるように、京都市もやるべきだ。


3. 米国で耳の聞こえないレズビアンのカップルが、 耳の聞こえないデザイナー・ベビーを出産

(from ananova.com: `Lesbian couple have designer deaf babies')

米国の耳の聞こえないレズビアンのカップルが、 意図的に聴覚障害者の男性の精子をもらい受け、 世界で初めての耳の聞こえないデザイナー・ベビーを作った。

大学出で現在30代のカップルは、耳の聞こえないことは障害ではなく、 ただ普通の人々とは違った種類の人間であるにすぎないと主張している。 「中には、『なんてことを。障害を持った子供を作るなんて』 という風に言う人もいますが、ご存知のように、 黒人は[白人に比べて]つらい人生を送ります。 なぜ両親はそうしたいなら黒人のドナーを選んではいけないのでしょうか。 彼らはそうすることによって黒人の文化に親近感を持ち、 その文化と結びつくことができます」

一口コメント

デザイナー・ベビーはマイナス方向にも行きかねないという例。 いや、もちろんこのカップルは「マイナス方向」というのを認めないだろうが。 子供が成人して親に訴訟を起してくれるとおもしろいのだが。


4. 国連、常設の国際刑事裁判所の設置を決定

(from The Guardian Weekly, `UN launches permanent war crimes court', April 18-24, 2002)

人権侵害をした個人を起訴できる常設の国際刑事裁判所の設置が、米国の強い 反対にもかかわらず、4月11日に国連の決議によって決定した。

7月1日にハーグに設置が予定されている国際刑事裁判所 (ICC: International Criminal Court)においては、 理論的には、 戦争犯罪や人道に対する犯罪を行なった国家の指導者や軍人を起訴することができる。

これまでにもナチスの戦争犯罪(ニュルンベルク裁判)や ルワンダの虐殺を扱うために国際裁判所が 設置されたことがあったが、ICCはこれらの一時的なものとは異なり、 常設である。また、裁判所の力は遡及的には用いられないので、 7月1日以降の人権侵害が扱われることになる。

クリントン大統領はICCの設置を支持したが、 米国兵が訴追される可能性を恐れた議会の圧力に負け、 米国政府はICCの設置を承認しなかった。 ロシアや中国やイスラエルもICCの設置に反対している。

起訴ができるのは、 市民に対する大規模な拷問やレイプなどの犯罪が、 ICCの設置を承認した国家(現在66ヶ国)で行なわれるか、 あるいはその国民が他の国で行なった場合であり、 かつ当の国家の法体系が機能していなかったり、 正義にかなっていないと判断される場合に限られる。

一口コメント

「常設」というのがポイント。米国やロシアが加盟していないので、 国際裁判所と言ってもどの程度実行力があるのか…。

関連サイト

Q&A: International Criminal Court
BBC NewsのQ&A形式の記事。
US renounces international war crimes tribunal treaty
Ananova.comの記事。米国防衛長官ドナルド・ラムズフェルドが 国連総長コフィ・アナンに宛てた手紙の中で、 米国は米国市民や兵士がこの国際刑事裁判所で裁かれることを許さないと 書いているという話。

5. EUの科学者たち、霊長類の動物実験を擁護

(from The Guardian Weekly, `EU scientists defend tests on primates', April 18-24, 2002)

EUに勧告をする科学者たちは、エイズやマラリアなどの病気の治療法を開発す るためには、猿や類人猿を使った研究が必要であることを強調している。

近年の猿や類人猿を使った研究に対するプロテスト運動の高まりと成功を警戒し、 欧州委員会(EC)の16人の科学者たちからなる委員会は、 マラリアやエイズやヤコブ病や糖尿病やぜんそくといった病気の 治療法を開発するためには、猿や類人猿で実験をすることが不可欠であり、 EUで禁止をすれば科学者たちはEU以外の国へ行って実験するだろうと述べた。

ケンブリッジ大学では、 脳の病気を研究する研究所が作られる予定だが、 猿を使った実験が行なわれるため、 動物権利論者のプロテストを恐れて設立が遅れたままになっている。

一口コメント

動物権利論者は過激な行動に出るので、 科学者たちはこわがっているようだ。さもありなん。


Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Thu May 16 00:42:14 2002