FINEニューズレター編集委員会用記事

31/Mar/2002

  1. 英国、性転換した女性が法的認知を求めて欧州人権裁判所へ
  2. タイ、最も安いAIDSの薬を販売
  3. メス化する川魚--人間の生殖能力の低下の手がかりか
  4. 英国、マリファナ禁止法の緩和を支持する政府の研究
  5. 英国、全身麻痺の女性に死ぬ権利が与えられる
  6. 英国、遺伝子治療によって重症複合免疫不全症候群の男児が治癒する

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


1. 英国、 性転換した女性が法的認知を求めて欧州人権裁判所へ

(from ananova.com Transsexual in court fight to be legally recognised as woman http://www.ananova.com/news/story/sm_548712.html)

性転換の手術をしたにもかかわらず、法的には男性であると宣言された女性が、 政府を相手に欧州人権裁判所で争う予定である。

64才のクリスティン・グッドウィンは、1990年に性転換手術をして女性になったが、 彼女に新しい国民保険番号を与えることを政府が許可しなかったために、 女性は60才から年金をもらえるのに男性の基準である65才まで待たねばならず、 彼女はこれは人権侵害にあたると主張している。

英国は欧州会議(The Council of Europe)の中で性転換を法的に認めていない 四つの国の一つである(残りは、アイルランド、アンドラ、アルバニア)。

関連サイト

Transsexual wins right to marry
BBCの記事。2002年7月11日の欧州人権裁判所の判決によって、 この性転換した女性は、結婚する権利を含めた法的権利を与えられたとのこと。 ただし、これによって英国の過去の判決が覆されるわけではなく、 この性転換した女性が控訴したときに今回の判決が考慮されることになる。

2. タイ、最も安いAIDSの薬を販売

(from asia.cnn.com: Thailand has cheapest AIDS drug cocktail http://asia.cnn.com/2002/WORLD/asiapcf/southeast/03/23/thailand.aids/index.html)

タイの政府製薬組織(GPO)は、 一錠20バーツのノーブランドの安いAIDSの薬を4月から販売する。

タイ国内で作られた抗レトロウィルス剤を使うエイズ患者は、 平均して月2400バーツ、輸入の薬を使う患者は10000バーツを 薬を買うために使っているが、 この新しい薬を使えば、平均1200バーツで済む。

タイとインドでは、すでに欧米のAIDS薬の特許権が失なわれているため、 ノーブランドの薬を作ることが可能である。


3. メス化する川魚--人間の生殖能力の低下の手がかりか

(from The Guardian Weekly `Fish offer clue to human fertility decline' March 21-27 2002, p. 8)

英国の研究によると、 川に流出する女性ホルモンが原因で魚のメス化が進んでおり、 男性の生殖能力の低下も汚染された川の水を飲むことが原因かもしれない。

英国の環境庁の大規模な調査の結果、いくつかの川では、 避妊用ピルを服用する女性の尿に含まれる化学物質(合成エストロゲン)が原因となり、 数種類の魚はすべてメス化していることがわかった。

過去30年のあいだに人間男性の精子の数は半減している。 これは女性がピルを使い出してその使用量が増えていった時期にあたり、 今日では数百万のピルが毎日消費され、 尿から出たエストロゲンが川に流れ出している。 一部の科学者は、これらの二つの事実を結びつけて、 川の水を飲む人間の男性には魚と同じことが起きていると主張している。

ロンドンの一部の地域では、 川の水が海に届くまでに人間の腎臓を七回通ると言われている。 テムズ川の支流のリー川(The Lea)が夏期に干上がってしまわないのは、 下水から流れ出る水のおかげである。

調査された川の中で最悪の事例は、 ブラッドフォードとリーズを流れるエア川(The River Aire)で、 そこで捕えられたモロコ(roach)はすべてメスであった。

この調査を受けて、 環境省は水道会社に女性ホルモンを除去する命令を出すことを検討している。

関連ニュース

River 'pollution' sparks fertility fears
BBCの同じ内容の記事。

4. 英国、マリファナ禁止法の緩和を支持する政府の研究

(from The Guardian Weekly `Cannabis cleared - with a warning' March 21-27 2002, p. 9)

英国では、政府が出したマリファナについての科学的調査によって、 マリファナを犯罪とする法の緩和がついに実現する見通しである。

英国では現在、マリファナはBクラスの麻薬として取り扱われているが、 内務大臣のディヴィッド・ブランケットは、 より危害の少ないCクラスの麻薬(ステロイドや抗鬱剤など) にマリファナを再分類することを検討中である。 マリファナがCクラスの麻薬になると、 所持していても警察から注意を受けるだけとなる。 ブランケット大臣は、 これによって警察はより深刻な麻薬--コカインやヘロインなど、Aクラスの麻薬--の 取締りに集中することができるとしている。

政府による研究結果の主なものを以下に示す。

関連ニュース

Medical advisers back cannabis reform
BBC Newsの同内容の記事。
Q & A: Cannabis reclassification
BBC Newsの記事。 マリファナの分類の変更がどういう意味を持つのかについて解説している。
Cannabis pilot to continue
ロンドンのランベスという地域で行なわれている、 警察がマリファナをCクラスの麻薬として取り扱う実験が延長されるという話。
薬物乱用防止教育: 用語解説
とりあえず、麻薬についての基礎知識。
薬物の資料
薬物の写真、俗称の詳しいリスト、各国の法律など。
英 国のドラッグ事情
サバイバーというEジャーナルの特集記事。

5. 英国、全身麻痺の女性に死ぬ権利が与えられる

(from The Guardian Weekly `Paralysed woman wins right to die' March 28-April 3 2002, p. 10)

一年以上人工呼吸器に頼って生命を維持してきた全身麻痺の女性が、 このほど裁判所の判決により人工呼吸器を停止する権利を認められた。

高等法院の判決によれば、 首の血管の破裂によって四肢麻痺となったこの患者(Ms B)は 「高い程度の精神的能力(mental competence)と知性と有能さ」 を有しているため、 死ぬことがほとんど確実であっても治療を拒む決定をする権利が認められる。

関連ニュース

英国のMND患者、 安楽死を求めてハンガーストライキ
上の記事にある関連ニュースを参照のこと。

6. 英国、遺伝子治療によって重症複合免疫不全症候群の男児が治癒する

(from BBC News: 'Bubble boy' saved by gene therapy http://news.bbc.co.uk/hi/english/health/newsid_1906000/1906999.stm)

ロンドンの病院で、重症複合免疫不全症候群(SCID)を患っていた男児が 遺伝子治療によって治癒された。

SCID(Severe Combined Immunodeficiency)は、 単一の突然変異した遺伝子によって引き起こされる免疫不全症で、 患者は肺炎などの感染症を避けるために無菌室で生活する必要がある。 英国では5万から10万の出産に一人の割合で起こるとされている。

ロンドンのグレート・オーモンド・ストリート病院では、 新しく開発された遺伝子治療によってSCIDを患う18ヶ月の男児の治療に成功した。 2000年にパリの病院で、同種の治療の成功例が二件存在している。

従来、SCIDの唯一の治療法は骨髄移植であるが、 この男児の組織に適合するドナーが見つからなかったため、 病院は新しい治療を行なった。 これは、患者から骨髄を取り出し、 免疫細胞内の欠陥遺伝子に置き変わる遺伝子を運ぶためのウイルスを注入し、 ふたたび骨髄を戻すという方法を取る。 これにより正常な免疫細胞が徐々に数を増して血液内に流入することにより、 患者の免疫機能が回復する。

研究者たちは、この技術はSCIDの治療だけでなく、 慢性肉芽腫症(CGD=Chronic Granulamatous Disorder)など、 単一の欠陥遺伝子によって引き起こされる他の病気の治療にも 適用できると考えている。

関連ニュース

Gene therapy cures 'bubble baby'
ananovaの同じ記事。
財団法人骨髄移植推進財団
骨髄移植についての基礎的な知識はここで。

Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon Aug 19 02:01:54 LMT 2002