FINEニューズレター編集委員会用記事

19/Mar/2002

  1. サウジアラビアで世界で最初の子宮移植手術
  2. アイルランド共和国で人工妊娠中絶禁止法の厳格化を求める国民投票
  3. プリングルズの空き缶で無線LANを探知
  4. フランスの裁判所、 息子に両親の冷凍死体を埋めるよう判決
  5. 英国、中絶反対派が中絶をテレビ放映する判決
  6. インターネットによって加速するドラッグ密売
  7. モスクワ、ハッカー倫理を教えるハッカー教育

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


1. サウジアラビアで世界で最初の子宮移植手術

(from The Guardian 07/Mar/2002, Surgeons hail world's first womb transplant: http://www.guardian.co.uk/medicine/story/0,11381,663287,00.html)

サウジアラビアで、世界で初めての子宮移植手術を行なわれた。 実際に妊娠する前に子宮は取り除かれたが、この意義は大きいとされる。

英国では毎年15000人以上の女性が生殖医療を受けるが、 代理母によって出産を試みるのはそのうち200人ほどである。 イスラム教では代理母は禁止されている。

サウジアラビアの医者たちが国際産婦人科ジャーナルに投稿した論文によると、 子宮移植手術は2年前の2000年4月に行なわれた。 ドナーは健康上、子宮摘出をする必要があった46才の女性である。 患者は26才の女性で、彼女は以前に帝王切開をしたときに 血液が大量に流出したので子宮摘出をせざるをえなかった。

手術の99日後、血液凝固のため移植された子宮は取り除かれたが、 この手術の意義は大きいとされる。移植後、 女性には拒絶反応を抑える薬が与えられたが、 これは腎臓移植のさいに用いられるのと同じものであり、 この薬を飲んだ患者の多くは問題なく妊娠していることがわかっている。

子宮が再び取り除かれるまで、女性は生理もあり、 妊娠可能な状態にあったと考えられている。

人命とは無関係な移植で、しかも少なからぬ危険を伴う手術であるため、 その倫理性が問題となるが、この手術を行なった医者たちの所にはすでに 多くの女性から手術を頼みたいという手紙が来ているという。

また、一生子宮を持つ必要はなく、 子供を産んだらそのあと再び取り除けばよいと考えられている。

Womb transplant breakthrough hope
BBC NEWSの同じ内容の記事。
Health: Brave new world of medicine around the corner
BBC NEWSから。1998年12月の記事で、 今後どういう医学的発展が予想されるかという話。 人工子宮の話が載っている。
Pill to cut number of periods
BBC NEWSから。上の話とは関係ないが、米国で、 生理の回数を年に4回ぐらいに抑えるピルが開発されたという話。

2. アイルランド共和国で人工妊娠中絶禁止法の厳格化を求める国民投票

(from BBC NEWS: Irish PM concedes abortion defeat http://news.bbc.co.uk/hi/english/world/europe/newsid_1859000/1859287.stm)

3月6日、 アイルランド共和国で人工妊娠中絶禁止法の厳格化を求める国民投票が行なわれた。

カトリック教の影響力が強いアイルランド共和国では、 人工妊娠中絶を行なうことは憲法によって禁止されている。 その例外は母体に危険がある場合であるが、 1992年の最高裁の判決により、 これには母親に自殺の危険があることが示された。 3月6日の国民投票では、 この「自殺の危険」という例外を排除するかどうかが争われた。 投票結果は僅差で現状を維持するというものであった。

アイルランドからは毎年7000人以上の女性が中絶を求めて英国のクリニックに やってきている。

Bid to amend abortion law defeated
Ananovaの同様の記事。
Abortion issue unlikely to rest
Europe's terms for terminations
ヨーロッパの各国の人工妊娠中絶についての政策がわかる。たいへん便利。

3. プリングルズの空き缶で無線LANを探知

(from BBC NEWS: Hacking with a Pringles tube http://news.bbc.co.uk/hi/english/sci/tech/newsid_1860000/1860241.stm)

プリングルズの空き缶で作ったアンテナを使えば、ロンドンの金融街で使われ ている無線LANの多くが探知できる。

セキュリティ会社のi-secがプリングルズの空き缶で作った指向性アンテナを 用いてロンドンの金融街で使用されている無線LANを探知して調べたところに よると、3分の2以上のネットワークはセキュリティ対策をしていないことが わかった。

i-secは、ハードウェアの簡単な設定変更によって、容易にセキュリティを 高めることができると述べている。

Antenna on the Cheap (er, Chip)
実際にプリングルズの空き缶でアンテナを作る方法が示されている。

4. フランスの裁判所、 息子に両親の冷凍死体を埋めるよう判決

(from cnn.asia.com, `Son must bury frozen parents' http://asia.cnn.com/2002/WORLD/europe/03/13/france.bodies/index.html)

フランスの西部で、両親の死体を地下室に冷凍保存している息子は、 裁判所の命令によって埋葬するように命じられた。

レミィ・マティノ(Remy Martinot)の父親のレイマン(Raymond)は、 妻が1984年に死んだとき、科学の発展を期待して、 彼女の遺体を摂氏マイナス60度で冷凍保存し、 息子に自分が死んだときに同じことをするように命じた。 息子はその通りにした。

裁判で彼は遺言は神聖だと論じた。 しかし、フランス法では遺体は死後6日以内に火葬あるいは埋葬しなければ ならないと規定されているため、 裁判所は地方の当局が場合によって力ずくでも死体を地下室から取り出して 埋葬することを命じた。


5. 英国、中絶反対派が中絶をテレビ放映する判決

(from BBC NEWS: TV victory for anti-abortion lobby http://news.bbc.co.uk/hi/english/uk_politics/newsid_1872000/1872580.stm)

テレビ局が人工妊娠中絶のシーンを放映することを禁止するのは検閲にあたるとして、 控訴院は中絶反対派に軍配を上げた。

1997年の下院の総選挙のときに、 プロライフ・アライアンスが選挙運動の一環として作った番組は 「非常に不快感を与える」ものであるとして、 BBCテレビや他の局では放映が禁止された。

控訴院では、この判断は違法であったとし、 人工妊娠中絶の様子がテレビで放映されることを許した。 BBCは上訴を予定している。

この判決で、裁判官はBBCの方針は明らかに「検閲」であることを強調した。 BBC側の弁護士は、プロライフ・アライアンスは中絶の不正について 言葉で主張することができると主張したが、 裁判官は言葉で表現することと映像で表現することは別であり、 今回の場合、映像には何も虚偽が含まれていないので、 自由な政党の表現を妨げるものは何もないとした。

この判決のために5年間争ってきたプロライフ・アライアンスの代表の ブルーノ・クインタヴェイル(Bruno Quintavalle)は、 この判決は英国が合法的中絶の禁止へと向かう第一歩だと称賛した。

BBC accused of censorship over political broadcast
ガーディアンの記事。
ProLife Alliance
「単細胞の胚から自然死まで」人間の生命権の存在を主張する、 プロライフ・アライアンスの公式サイト。 上の「検閲」された胎児の死骸がいきなり現われるので注意。
Landmark Defeat for BBC in Court of Appeal - Censorship of Abortion Images Unlawful
ProLife Allianceによるプレス・リリース。

6. インターネットによって加速するドラッグ密売

(from The Guardian Weekly, `Drug dealers' Internet savvy keeps the cyber cops guessing', March 7 2002, page 3)

国際麻薬統制委員会(INCB)の報告によれば、麻薬組織は、各国の警察の国際的 協力が遅れているのをいいことに、インターネットの悪用の度を高めている。

INCB(International Narcotic Control Board)の出した 「グローバライゼーションと新しい技術」によれば、 多くの麻薬組織はコンピュータの専門家を雇い、 最先端の技術を駆使して流通網を広げている。

米国とコロンビアの警察が捕えた30人の麻薬密売容疑者の場合、 彼らが使っていたチャットルームのファイアウォールは、 警察内の専門家では破ることができなかった。 また、彼らの暗号技術も非常に高度で、 彼らの30秒のデータ転送を解読するのに当局側の最高水準の専門家が 24時間かかるというほどであった。

麻薬組織による攻撃的なアプローチも目立つ。 たとえば、コロンビアとメキシコの共同組織は、 捜査官同士のコミュニケーションの内容を入手し、 捜査官の個人情報を集めていた。 また、中国の当局によると、 ある中国の組織が、ハッカーを用いて税関のデータベースに侵入し、 中に麻薬が入っている積荷の情報を変更していたことがわかった。

さらに、電子商取引やインターネットバンキングで、 マネーロンダリングが容易になっていることも問題視されている。

その他にも、小規模な麻薬取引人がチャットルームを利用して麻薬を 販売していることや、麻薬の作り方を説明したサイトが増えていること などが指摘されている。

薬物乱用防止教育: 用語解説
とりあえず、麻薬についての基礎知識。
薬物の資料
薬物の写真、俗称の詳しいリスト、各国の法律など。

7. モスクワ、ハッカー倫理を教えるハッカー教育

(from The Guardian Weekly, March 7 2002)

モスクワの創造力の宮殿(Palace of Creativity)学校では、 27才のハッカーが子供たちにハッカー教育を行なっている。

27才のイリヤ・バジリエフ(Ilya Vasiliev)は、 約17000人の生徒が800ほどのコースから授業を選択できるこの名門校で、 コンピュータ・ハッキングのコースを開講している。 今学期の授業では、12才から18才の30人の生徒に、 ウィルスの概念、パスワードの解析の仕方、 遠隔地にあるサーバをいじる仕方を教える。

彼は、生徒はハッカーの倫理を身につけなくてはならないと考えている。 「クレジットカード番号を作り出す機械の作り方を生徒に教えるときは、 それを使うべきではない理由も説明します」と彼は言う。 彼の考えでは、ハッカーの技術はカラテの技術と同じで、 自分や弱い人間を守るためにあり、 相手を殺す技術を覚えてもそれを正しく用いなければならない。

15年間ハッカーであった彼は、 学生時代を終えると教師になることを考え、 しばらく町のクラブで教えたのち、 かつて彼が通ったこの創造力の宮殿学校で教えることになった。

学校の演劇部門の代表であるルドミラ・ツヴェレバ(Ludmila Zvereva)は、 こう言っている。 「わたしの12才の息子のイヴァンがコンピュータ・ハッキングの授業を取って いいかと聞いてきたとき、息子は非常に興奮していました。 そのときわたしは、これこそ彼に情報技術を学ばせる最善の方法だと気付きました。 今ではイヴァンは、ハッカーの名人になることをただただ夢見るばかりです」。

しかし、バジリエフは愛国者でもある。 彼は言う。「今日ロシアは米国に非常に依存しています。 米国製のコンピュータやプログラムがロシアでは溢れています。 もし米国がロシアへの情報技術の輸出を制限することを決めたら、 国家的な一大事になるでしょう。 そのような麻痺状態を避ける唯一の方法は、 ハッカーの助けを呼ぶことです」

ハッカー文化を支えるロシアの国内事情
ホットワイアードの記事。

Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Thu Apr 04 06:28:16 2002