こだまの(新)世界 / 文学のお話

豊田有恒『スペースオペラ大戦争』(1981年、新潮文庫)


内容

酒を飲みすぎ高速道路で交通事故を起こした、フリーライターのおれは、 気がつくとプラスティックの棺桶の中に横たわっていた--。

そこは何と31世紀のテラポリス。驚いたことに、ずらりと並んだ棺桶には、 あのジェロニモや騎士ローラン、源為朝たちがいたのだ。

超高度の文明化で人間がすっかり戦闘意欲をなくしてしまったこの時代、 地球を襲う強敵、ゾンダール星人と戦わせるため、 古今東西の英雄豪傑を蘇生させたのだった。 そして、しがないライターのおれは、 彼らのマネージャーとして活躍することになった。

さてさて、愉快、痛快、奇怪で奇妙な宇宙大戦争のてんまつは……。
(扉の紹介文から)


感想

いろいろな英雄が一同に集まって闘うというアイディアと、 作者の披露するさまざまな知識を読むのはおもしろいが、 全体の構成はいただけない。オチも異様なまでに陳腐である。

ストーリーに起伏がなく、 ドキドキハラハラさせる要素がほとんどない。 とにかく英雄連合軍が連戦連勝というのでは、 ただの戦争好きが書いたひとりよがりの文章だと非難されても 文句は言えないのではなかろうか。

解説も、これが真剣に書かれたものだとすると、 非常に怖いものである。 一体この人たちは何を考えているのだろうか。

まあ、世界史や日本史などの歴史が好きな人にはおすすめかもしれない。


03/10/98-03/13/98

C


Satoshi Kodama
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Last modified: Sun Mar 22 15:48:01 JST 1998