重農主義

(じゅうのうしゅぎ physiocracy)


一国の富を蓄積する方法は、 商業(や製造業)ではなく農業によって富を新たに生み出すことだとする立場。 資本主義の発展が遅れていたフランスで流行。 代表とされるのはケネー(1694-1774)の『経済表』(1758年)やテュルゴー(1727-1781)。 physiocracyの原義は「自然による支配」であり、 重農主義者たちは当時のフランス政府(ルイ14世の財務総監コルベール) による干渉主義的な経済政策に対して自由放任主義 (レッセフェール)を唱えたことでも知られる。

土地持ちの貴族からすれば、商業によって得られた金などは本当の富とは言えず、 しかも金は土地とは違って国家から流出していく可能性があるので、 いざとなれば金を持って国外に逃げることができる商人は信用のできない、 愛国心のない、けしからん輩なのである。

他方、商人からすれば土地を持った貴族というのは働きもせずのうのうと暮らし、 しかも既得権益を脅かされないように商人の自由な活動を制限しようとする けしからん輩なのである。

というわけで、重農主義の立場が土地持ちの貴族に支持されたのに対して、 富を生み出すのは貿易だとする重商主義の 立場は、近代ヨーロッパで新たに力を付けてきた商人階級によって支持された。 これもイデオロギーの争いの一例と言える。

01/Apr/2003; 05/Apr/2003追記


参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Apr 5 20:23:17 JST 2003