思いなし

(おもいなし opinion, belief, doxa)

ダイダロスの作品を所有していても、それが縛りつけられていないならば、 ちょうどすぐに逃亡する召使と同じことで、あまりたいした値うちはない。 じっとしていないのだからね。しかし、縛りつけられている場合は、 たいした値うちものだ。なにしろ、たいへん立派な作品だから。(中略) 正しい思わくというものも、やはり、われわれの中にとどまっているあいだは 価値があり、あらゆるよいことを成就させてくれる。だがそれは、 長い間じっとしていようとはせず、 人間の魂の中から逃げ出してしまうものであるから、 それほどたいした価値があるとは言えない--ひとがそうした思わくを 原因(根拠)の思考 によって縛りつけてしまわないうちはね。(中略) 知識は、縛りつけられているという点において、正しい思わくとは異なるわけなのだ。

---ソクラテス


人が抱いている意見のこと。 知識と対比的に用いられる場合は、 理由や根拠を明確に示すことのできない種類の意見を言う。 たとえば、上のソクラテスが述べている「正しい思わく」とは、 正しい意見であるが、なぜそれが正しいのかについて、 はっきり根拠を述べられないような意見のことである。

知識の項を参照せよ。

08/04/99; 03/Jul/2004追記


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Jul 3 18:09:44 JST 2004