科学哲学演習レポートその4

May 26, 1998 (Chapter 2)

わああ。去年に引き続き今年もライヘンバッハの演習を取ったんだけど、 やっぱり去年に引き続き今年もレポート提出の当日になって書き出すのだった。 わああ。

テキストは、Hans Reichenbach, Modern Philosophy of Science, Routledge & Kegan Paul, 1959.で、これの第二章だけやって、 また去年と同じテキスト(Hans Reichenbach, The Philosophy of Space and Time, Dover, 1958.)に戻る予定。 今回は第二章を2000字程度でまとめるのが課題。

(評価)


1. ニュートンの運動の理論は、彼の論敵であるライプニッツやホイヘンスの 学説に比べて、運動の問題の歴史的発展において非常に大きな影響力を持った。 しかし、皮肉なことに、物理学における諸発見によって科学をあれほどまでに 豊かにしたニュートンが、同時に科学の概念的基礎付けの発展を大きく遅らせ てしまった。ニュートンの時代における抽象能力は、まだ十分に進歩した段階 には達していなかったために、ライプニッツやホイヘンスのような天才による 運動の相対性に関する発見の優越性を認めることができなかったのである。

歴史の不正義はそれだけに留まらない。というのは、今日展開されている運動 の相対性の概念と、かつての二人の相対主義者の考えとの間には、何ら直接的 な歴史的結びつきがないからである。マッハやアインシュタインのような物理 学者たちが運動の問題をようやく解決したとき、彼らは以前にも増してもっぱ らニュートンに遡って言及していた――とはいえ、今回は彼の理論に反論する ためであったが。後世において相対主義的な見解が受け入れられたのは、以前 の発見が徐々に浸透したためではなく、ニュートンの理論を再検討することに よって刺激を受け、以前の発見とは無関係な、新しい創造的な仕事が行なわれ たためである。そしてニュートンの理論は、こうした仕方で、もう一度非常に 実りあるものとなったのである。


2. ニュートンが、自らの力学は絶対運動の理論を完全に正当化するものだと 信じていたのは確かである。彼は、絶対主義の古典的定式化となった絶対空間 と絶対時間の定義――空間と時間を独立に存在する実体と特徴付け、それらが 時空のあらゆる出来事に尺度を与えるとする定義――を提出しただけでなく、 経験的な出来事とこれらの絶対的実体との関係を確証するための方法も具体的 に述べた。彼はこれらの方法において、遠心力に決定的な役割を与えている。 ニュートンの学説の核心は、彼が力の発生を運動状態の証拠と考えたという事 実に存している。彼の著作で謳われている目的は、物体の見かけの運動、すな わちその相対的あるいは運動学的運動が与えられたときに、その真の運動に関 して推論することを可能にするような方法を提供することであった。


3. ライプニッツがニュートンの運動論に反対した理由は、この二人の思想家 が持っていた哲学における違いに求められねばならない。ニュートンは仮説の 吟味を経験に委ねた。他方、ライプニッツは抽象的な操作によって自分の結論 に到達した。というのも、彼は、経験的データは常にさまざまな解釈が可能で あるため、そのようなデータに依拠するよりも、問題を論理的に分析する方が 問題の解決するのに助けになると考えていたからである。

ライプニッツの空間論が披露されているもので、最もよく知られているのは、 ライプニッツ=クラーク往復書簡である。クラークはライプニッツへの返事を ニュートンの助けを借りて書いたので、彼のニュートンの見解の擁護は権威的 なものと考えられている。ライプニッツは「数学的形而上学の第一原理」で時 間、空間、間性に関する相対主義的立場からの検討を行なう一方で、クラーク との往復書簡においてニュートンの自然哲学と対決するが、彼の相対主義的見 地からは、地球の自転に見られる遠心力の動力学的な説明がうまくいかず、相 対運動以外に「絶対的な真の運動」の存在を認めることになった。結局、ライ プニッツは、(空間を順序の図式とみなす)空間の相対主義的解釈においては一 貫していたが、運動の相対主義的解釈には不成功に終わったと言える。


4. ライプニッツは、クラークとの往復書簡に先立つホイヘンスとの往復書簡 においても、空間における過程としての運動は相対的であるが、駆動力の起き る運動主体は真の運動を行なうとして、運動に関する二元的な説明を行なって いる。動力学は非幾何学的、形而上学的な原理を含んでおり、真の運動とは 「場所の変化」ではなく、幾何学的には確かめられない「力の発生」とされる。 そして、運動の等価な解釈のそれぞれに動力学的仮説を作り出すことができる が、ライプニッツはその中の最も簡潔な説明を真のものとみなすことによって、 真の運動を確定できると考えた。


5. ホイヘンスはより一貫した相対主義者であり、円運動の動力学の問題を相 対主義の立場から解決しようとした最初の人である。彼は、円運動を空間に対 して絶対的な運動としてではなく、相対運動として、すなわち円の諸部分のお たがいに対する相対的な運動として解釈することにより、動力学的な相対性が 確立されると考えた。ホイヘンスの解決法は間違っているが、それによってそ の歴史的功績が減じられるわけではない。その解決法は、運動の問題を解釈す る際における一貫性――ホイヘンス以前には一度も獲得されず、彼以降ではマッ ハとアインシュタインによってのみ到達された一貫性――を示している。

(以上2000字)


とりあえず出せたけど大丈夫かなあ。 心配だなあ。 空間論や運動論の突込んだ議論は紹介してないからなあ。


先生の評価

(3.全体に関して)くだらん事ばっかり書かんでもっと内容に立ち入れ

(5.の「相対運動として…」のくだりに関して)大切なことが抜けとる

(全体に関して)もっと具体的な内容があったはずなのに それがほとんど消えた、ウワッツラだけのまとめ

70点


ぐあ。やはり。どのコメントももっとも。

しかし具体的な内容に立ち入って2000字でまとめるには いかんせん時間も才能も足りなかった。 が、まあ弱音は吐かないで次回はもうちょっとがんばろう。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Tue Jun 2 12:18:58 JST 1998