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科学哲学演習レポートその3

October 28, 1997 (Chapter 1, §11.)


・が〜ん。相変わらず前と同じでもう提出日当日になろうかという時間な のにまだ出来てません。まずい〜。

・さあ、朝だ朝だ。書くぞ書くぞ。

・今回は「非ユークリッド幾何学の視覚化」について。非ユークリッド幾 何学がユークリッド幾何学とおんなじくらい論理的に矛盾無く成立することは 既にわかったわけだけど、今度は、前者が後者と同様に視覚化できる(=直観的 に理解できる)かどうか、っていう問題です。

メモ

・(円の内部にボリアイ・ロバチェフスキー幾何学の写像を取る、クライン の方法)ユークリッド幾何学空間上に非ユークリッド幾何学空間の写像をとる ことによっては、非ユークリッド幾何学を視覚化したことにはならない。

・通常、われわれが面の曲率として視覚化するものは、その面の外的曲率 であるが、われわれは空間の外的曲率ではなく、空間の内的曲率を視覚化しな くてはならない。(わから〜ん)

・(合同概念の調節)合同は定義であるから、曲がった空間を視覚化するた めに必要な調整は、三次元空間に異なった仕方で合同を読み込むことである。

・合同に対するあらゆる調節は習慣の産物である。調整がなされるのは、 対象か観察者のいずれかが動いている際に、像の変化が視点の変化として感じ られ、対象の形の変化だと感じられなくなるときである。

・空間そのものはユークリッド的でもなければ非ユークリッド的でもなく、 単に切れ目のない三次元の多様体に過ぎない。(SF的発言)

・非ユークリッド幾何学を視覚化することを妨げる足枷になっているのは、 ユークリッド幾何学の合同の概念である。

・テキストはHans Reichenbach, The Philosophy of Space and Time, Dover, 1958である。

(評価)


非ユークリッド幾何学の視覚化

  1. 相対性理論の支持者によれば、われわれがユークリッド幾何学を視覚 化できるのは、単に習慣のためであり、その気になれば非ユークリッド幾何学 を視覚化する能力を徐々に身に付けることができる。また、確かに数学者たち は非ユークリッド幾何学の概念に慣れているように思われる。だが、数学者た ちが非ユークリッド幾何学の関係をこの仕方を用いて想像することは、果して ユークリッド幾何学を「視覚化すること」と同一の現象と言えるのであろうか。 そこで、われわれは「非ユークリッド幾何学を視覚化すること」がどういう意 味を持つのかを十分に検討しなくてはならない。

  2. 最初に、数学者の方法を考察する。数学者たちは、例えば、円の内部にボ リアイ・ロバチェフスキー幾何学の写像を取るクラインの方法によって、非ユー クリッド幾何学を「視覚化」する手続きを考え出した。けれども、ユークリッ ド幾何学空間上に非ユークリッド幾何学の写像を取ることによって示されるの は、非ユークリッド幾何学が無矛盾であることのみであり、非ユークリッド幾 何学が視覚化できることではない。というのも、その場合に視覚化されている のは、写像を取られた非ユークリッド幾何学ではなく、写像を取った先のユー クリッド幾何学空間に他ならないからである。

  3. 次に、物理学者の方法を考察する。二次元においては、非ユークリッ ド幾何学の面を歪んだ面と見なすことより、困難せずに視覚化することができ た。しかし、三次元においては、非ユークリッド幾何学空間を同様の仕方で視 覚化することはできない。なぜなら、そのような非ユークリッド幾何学空間の どの部分の断面図を取ったときでも、それらの断面図はすべて平面でありなが ら、かつ、歪んだ面として視覚化される必要があるからである。

  4. そこで、二次元における非ユークリッド幾何学平面の視覚化を分析す る。面の曲率を視覚化する際、われわれは通常、面そのものの内的な幾何学的 関係を測るのではなく、曲率を持った面とそれに隣接する平面との距離を測る ことによって視覚化しようとする。前者は内的な曲率を測る方法であり、後者 は外的な曲率を測る方法である。しかし、面の外的な曲率を測る場合は、二次 元の多様体の曲率を視覚化するために三次元を利用していることになるが、わ れわれは三次元の多様体の曲率を視覚化するために四次元を利用することはで きない。

  5. したがって、われわれは空間における外的な曲率ではなく、内的な曲 率を視覚化する必要がある。また、二次元において、ある面が内的な曲率を持っ ていることをわれわれが視覚的に経験するのは、その面においてユークリッド の合同とは異なる合同の関係が成立していると判断する場合である。

  6. 二次元における以上の考察を三次元にあてはめて考えると、内的な曲 率を持った空間を視覚化するために必要なのは、三次元空間にユークリッドの 合同とは異なる合同の関係を読み込むことであることがわかる。ユークリッド の合同に慣れているわれわれにとって、それと異なる合同に自らを適応させる のはかなり困難なことである。しかし、合同が定義の問題であり、ユークリッ ドとは異なる合同を定義することができる以上、それは可能なはずである。

  7. また、上の方法がユークリッド空間上に非ユークリッド幾何学の関係 の写像を取ることと同じであるわけではない。なぜなら、空間そのものはユー クリッド的でもなければ非ユークリッド的でもなく、単に切れ目のない三次元 の多様体に過ぎず、そしてそれがユークリッド空間と考えられるようになるの は、ユークリッドの合同の定義を空間に読み込んだ後のことでしかないからで ある。

  8. 以上の方法によってユークリッドの合同とは異なる合同に適応すれば、 われわれは内的な曲率を視覚化したことになる。

  9. ところで、先に述べた円の内部にボリアイ・ロバチェフスキー幾何学 の写像を取るクラインの方法は、合同の再定義と捉えることもでき、その場合、 ユークリッドの合同とは異なる合同に再適応すれば、ロバチェフスキー幾何学 を視覚化することになる。クラインの方法がロバチェフスキー幾何学をユーク リッド空間へと写像する手続きとして考えられるかぎり、この円の内部はロバ チェフスキー幾何学を表現したものとは言えないが、もしロバチェフスキーの 合同に適応したならば、この円の内部はロバチェフスキー幾何学が真に視覚的 に表現されたものとなる。

  10. 結局、数学者が習慣によって非ユークリッド幾何学を視覚化できるよ うになると述べたのは正しかったが、われわれは今やその手続きを以下のよう に分析することができる。すなわち、そのように述べる数学者は、(1)元々は ユークリッド幾何学の諸要素の関数として与えられた定義を実際に合同なもの として視覚化するようになり、(2)そのような合同に慣れていない人々がしば らく経験する変化の感覚から自由になり、(3)それまでに慣れていた合同とは 別の仕方で合同を空間に射影するようになった、ということである。(以上 2034字)


    先生の評価

    ・数学で慣用的に使われている言い方をきちんと調べてそれを使うこと。 そういったところで我流の言葉使いをしても意味がない。(「写像を取られた」 「写像を取った」など)

    ・第三段落の頭の部分「次に」という書き方は、前後関係を理解していな いことを示している。

    ・同段落「それらの断面図はすべて平面でありながら、かつ、歪んだ面 として」は意味不明である。

    ・第六段落「それは可能なはずである」このことを裏付ける例を説明せよ。

    ・第七段落「ユークリッド空間上に非ユークリッド幾何学の関係の写像を 取ること」→「ユークリッド空間上に非ユークリッド幾何学の関係を写像する こと」

    ・同段落「単に切れ目のない三次元の多様体」→「単に連続的な三次元の 多様体」

    ・最終段落「(3)それまでに慣れていた合同とは別の仕方で合同を空間に射 影するようになった」→「(3)それまでに慣れていた合同とは別の合同を空間 に射影するようになった」

    75点


    (反省)

    ・う、また自分勝手な言葉を使ってると怒られてしまった。今回は慣用に 従おうと努力したのになあ。修行が足りないか。ま、高校の時の教科書を下宿 に持って来たので少し勉強しておこう。

    ・心配した字数の過超は幸い咎められなかった。しかしこれも次は気を付 けるべし。


    Satoshi Kodama
    kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
    Last modified on 11/04/97
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