倫理学風研究 / index

科学哲学演習レポートその1

May 24, 1997 (Chapter 1, §1.-§2.)


・あれだけの苦労をしないと、これだけのレポートも書けんのか、と言われそうであるが、まあ、一回目なので理解してもらいたい。ぼくもつらいのである。

・ぼく自身にとってはとても興味深いテーマなので、何が面白いのかを、ぼくのつたない要約で理解してもらえれば、大変うれしい。

・なお、ひまな関係者は点数を予想してメイルして下さい。正解者にはこだまがなんでも一つだけ願いをかなえて差し上げます。

・テキストはHans Reichenbach, The Philosophy of Space and Time, Dover, 1958である。


1.前世紀における非ユークリッド幾何学の発見によって初めて、空間の持つ二重性、すなわち「数学の考察する空間が、直ちにわれわれの住む物理的な空間であるというわけではない」という哲学的な洞察が可能になった。より詳しく説明すると以下のようになる。

非ユークリッド幾何学が発見されるまで、ユークリッド幾何学が自明な公理から出発して作り出す空間世界は物理的世界の姿を正しく表すものである、と考えられて来た。つまり非ユークリッド幾何学が発見される以前は、数学における空間とわれわれの住む物理的な空間(物理学における空間)は同一のものである、と見なされていたのである。

しかし、1820年代にボリアイやロバチェフスキーがユークリッド幾何学の公理の一つである平行線の公理を用いずに新たな幾何学体系を構築し、非ユークリッド幾何学を生み出したことで様相は一変する。加えて、クラインの「非ユークリッド幾何学のユークリッドモデル」によって、非ユークリッド幾何学はユークリッド幾何学と同程度の無矛盾性を持つことも示された。今や複数の幾何学が存在することが明らかになったのである。

このことが意味するのは、「ユークリッド幾何学における空間が、現実の物理的な空間であるとは限らない」ということである。言い換えると、幾何学の構築する空間は論理的に成立可能な空間であり、そのような空間は複数存在することが明らかになったのであるから、ユークリッド幾何学における空間が物理的な空間に対応しているとは必ずしも限らない、ということがわかったのである。

また、以上の幾何学における発見と進歩とにより、数学において証明される命題の正しさは「仮定が正しければ、そこから論理的に導かれる帰結も正しい」というように条件付き(留保付き)の正しさであることがわかった。その結果、論理的に成立可能な複数の幾何学的な空間の内、どれが現実の物理的な空間に対応しているかを決める仕事は数学の仕事ではなく、物理学の仕事であることが明確になった。

2.リーマンはガウスの平面理論に基づき、解析的方法を用いて、公理的方法では到達し得なかった非常に一般化された空間概念を生み出した。より詳しく説明すると以下のようになる。

ガウスは測度を独立変数として捉え、平面を球面の特殊な場合と考えることによって、平面幾何学を面幾何学へと一般化した。

この二次元における平面から面への一般化の類推から、リーマンはユークリッド空間だけでなくさらにロバチェフスキーの非ユークリッド空間をも特殊な場合として含む、非常に一般化された空間の概念を生み出した。すなわちリーマンは、ボリアイやロバチェフスキーのように公理から出発して総合的な仕方で全体系を構築する方法は用いず、ガウスの用いたような解析的すなわち分析的な仕方で、公理的方法によってそれまでに生み出されて来た空間よりも多くの空間を発見したのである。(以上1198文字)


・なんか、そのうちアインシュタインの一般相対性理論の説明になるらしい。これはその導入なわけです。ボリアイとかロバチェフスキーとかガウスとかリーマンとかピーマンとかが登場します。

・言いたいことは、「非ユークリッド幾何学の発見を通じて、面や空間に対する新しい(哲学的)認識が生まれたのだ」ということらしい。

・非ユークリッド幾何学の発見によって、ユークリッド幾何学の整然とした平面や空間の考えだけでなく、「並行する二直線が存在しない面」や、平面に対する曲面の類推から「歪んだ三次元空間」といった考えが論理的な整合性を持って想定できるようになったみたい。SFですな。

・ううむ。こんな話がもう150年以上昔からなされていたとは。しかしワープ航法はまだ発見されんのか?


先生の評価

「前半が長すぎる。後半ではもっと触れるべき点があるハズ」…75


(反省)前半と後半との長さのアンバランスには気づいていたのだが、後半には大した内容がないと考えてあえてそのままにしておいたのだ。

けれどもそれが甘かったようだ。まだまだ読みが足りない。テキストを良く読んでもっとしっかり考えねば。

ま、けど、0点じゃなくて良かった良かった。次回も頑張る。


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 06/04/97
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