(かいがいとこういしょく transplant tourism)
海外に渡航して心臓、肝臓、腎臓などの移植を受ける日本人が一定数いること はこれまでにも知られていたが、その実態は明らかでなかった。しかし、日本 人の海外渡航移植が国内外で問題になったのを受け、厚生労働省が日本移植学 会と協力して渡航移植の実態調査のための研究班を立ち上げた。
同研究班が2006(平成18)年4月に公表した「渡航移植者の実情と術後の状況に 関する調査研究」という最終報告書(PDF)によると、これまでに海外に渡航して移植 を受けた患者数は、心臓は103人、肝臓は221人、腎臓は198人で合計522人いた とされる。ただし、すでに死亡した患者は考慮されておらず、また調査の対象 とならなかった医療機関も存在すると考えられるため、実際の患者数はもっと 多いとみられる。
同報告書では、渡航移植の背景として、国内におけるドナーの絶対的不足、国 内では心臓などの小児臓器移植が不可能という法的問題、インターネットを中 心とした新たな情報源の発展などが挙げられている。
また、渡航移植の問題点としては、国内で移植不可能な患者が渡航移植するこ とに対する国際的批判、渡航移植した患者の術後の健康管理の問題、自発的渡 航移植による安全性・適応などが把握できないケースが発生する可能性などが 挙げられている。
近年、中国では死刑囚がドナーに使われているという報道や、海外での臓器売 買の可能性が問題にされており、今後もさらなる実態把握が必要とされると同 時に、臓器移植法の改正も含めた国内での活発な議論が求められる。
15/Jun/2007
本項目の元の出典は以下。ただし、一部加筆修正あり。