プラシーボ

(ぷらしーぼ placebo)

ラテン語で「よろこばす(to please, give pleasure)」という意味で、 新薬の試験や「薬を飲んだから良くなるはずだ」という心理的効果を 狙って用いられる、有効成分のない薬。偽薬。 人をだますことになるので倫理的問題を生み出す可能性があるかもしれない。 二重盲検の項を参照せよ。

以下は、水野肇、『インフォームド・コンセント』、中公新書、1990年からの引用 (88頁)

こうして、世界中が薬効判定に二重盲検法を使用しはじめた1971年、 アメリカで、このプラシーボをめぐって大問題がおきた。 多数のメキシコ系アメリカ人の女性たちが、 避妊のための家族計画相談に応じた。 そのなかのある人たちには経口避妊薬が与えられたが、 他の人たちには経口避妊薬そっくりのにせもの、 つまりプラシーボが投与された。 女性たちは血栓性静脈炎、肝臓障害をはじめとして経口避妊薬 の副作用の調査を受けた。 ところが、プラシーボを投与されたグループのなかから、 十人の女性が妊娠したのである。喜びを与えましょうというプラシーボで、 女性には悲しみと苦しみを与えられてしまったのである。 彼女たちは妊娠したくないので実験に参加したのである。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat May 13 02:33:12 2000