安楽死

(あんらくし euthanasia, mercy killing)

「わたしは歯を全部失ない、気力を失ない、そして一番重要なことですが、 生きる意志も欲求も失ないました。この種の末期は、 ペットや農場の動物には訪れません。 同情的な獣医ならこんな事態は起こらせないはずです。 彼らは優しく動物を安楽死させます。 だったら、それほど不合理なことなのでしょうか、 同情的な医者が人間にも同じことをすることを望むことは?」

---Nancy Crick, an Australian cancer patient who wants to have euthanasia

単に生きていることではなく、善く生きていることにこそ、価値があるのだ。

---Socrates, Crito (『クリトン』)


末期患者の苦痛を取り除くために、 死期を早める処置をとること。 延命装置を外すなどの消極的な処置の場合と、 薬物注射などによる積極的な処置の場合に分かれ、 それぞれ、消極的安楽死、積極的安楽死と呼ばれる。 下手をすると医者による殺人ないし自殺幇助ということになるので、 各国においてきちんとした法制化が行なわれつつある。 くわしくは立岩氏のサイトを参照せよ。

なお、日本のマスコミの報道では、 よく「安楽死」とカッコ付きで記述される。 単になんとなくカッコを付けている可能性もあるが、 好意的に解釈すれば、 これは問題になる安楽死が、患者の自発的な意思によるものではなく、 患者の家族に頼まれた医師の判断に基づく「慈悲殺(mercy killing)」 であることを示唆しているものと思われる。

2004年11月現在、 積極的安楽死(あるいは、患者が服用できる致死薬を医師が処方する行為) が法的に許されているのはオランダと米国オレゴン州、およびベルギーのみである。

12/May/2000; 02/Sep/2001追記; 14/Nov/2004追記


安楽死・尊厳死関係の年表(準備中)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Nov 14 18:40:33 JST 2004