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- 日本生命倫理学会一般演題1-2
- 児玉聡 (京都大学・倫理学)
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- 「わたしはまだ43才です。わたしは医者に死ぬのを手伝ってもらいたいと真剣に考えています。運動ニューロン病によって、わたしの筋肉は次第に侵されていき、頭はこれまでどおりはっきりしているのに、家族と意思を疎通するのが困難になりました。病気でわたしは車椅子を使うようになり、カテーテルを使って尿の処理をし、チューブを通じて食事をするようになりました。わたしはこれまで2年間この病気と闘い、あらゆる治療法を試しました。」
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- 「わたしはこれから自分がどうなるかについて十分に理解しており、人工呼吸器をつけることは拒否することにしました。わたしは窒息によって死ぬよりは、家族や友人と意思の疎通ができなくなったときに医者に死ぬのを手伝ってもらいたいのです。」
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- 「わたしはこのことについて、結婚して25年になる夫のブライアンと話し合ってきました。彼はわたしの欲求を受け入れ、わたしの決定を尊重しています。彼は、わたしを失うことは自分にとっても子供二人にとっても非常につらいけれども、わたしが自分の死にたい仕方で死ねるなら自分もうれしいと言っています。わたしは、家で家族に囲まれてさよならを言い、苦しむことなくただちに死ぬことを望んでいます。」
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- 「もし体が動くならば、わたしは自分で死にます。これは違法ではありません。しかし、わたしの病気のおそろしい性質のために、わたしは自殺ができません—死ぬためには手助けが必要なのです。医者がわたしの必要としている手助けをするならば、その医者は有罪になり、刑務所で長い刑期を務めることになるでしょう。現行の法はナンセンスなのです。」
- http://justice4diane.org.uk/story.asp
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- 1999.11 ダイアン・プリティ、MNDと診断される
- 2001.08 夫が自殺幇助した場合、訴追しないように検察長官に願い出るが拒否される。高等裁判所における司法審査が認められる。
- 2001.10 高等裁判所は1961年の自殺法は英国人権法に抵触していないと判決。
- 2001.11 貴族院(上訴院)は高裁の判決を支持。
- 2002.04 欧州人権裁判所も訴えを認めず。
- 2002.05 ダイアン、肺感染症と呼吸困難でホスピスに入院、まもなく死亡。
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- 欧州人権規約第二条 (生命権)
- プリティ: 生命権は死ぬ権利も与える
- 判決: 第二条は正反対の権利を与えない
- 第三条 (非人間的、尊厳を損なう治療や刑罰の禁止)
- プリティ: 幇助自殺を禁じることは、非人間的で尊厳を損なう治療を受けることになる
- 判決: この議論を受け入れると死ぬ権利を認めることになる
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- 第八条 (個人の生活が尊重を受ける権利)
- プリティ: この条項は自己決定権、とくにいつ死ぬかを決める権利を与える
- 判決: 英国自殺法の自殺幇助の禁止は弱者の生命権を守るためのものとして適切であり、第八条に抵触していない
- 第九条 (良心の自由)
- プリティ: 自分の信念を実践することを妨げられている
- 判決: 第九条は主に宗教的信念にかかわるもの
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- 第十四条 (差別の禁止)
- プリティ: 健常者は合法的に自殺できるが、彼女は他人の手を借りなければ死ねないのに、それが許されていない
- 判決: 自殺幇助を認めることは濫用の可能性を開くので、この区別は正当化される
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- すべり坂
- ○同意無き患者、末期でない患者を安楽死させることになる
- ×オランダ、ベルギーのようにセーフガードのある法を作るか、裁判所に申し出るようにすればよい
- 苦痛緩和治療
- ○進んだ苦痛緩和治療がある。苦しむことはない。
- ×万能ではない。とくに精神的苦痛、尊厳。
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- 消極的安楽死を許して積極的安楽死を許さないのは一貫性がない
- 人工呼吸装置を外すことを許されて安楽死したMs. Bの事件がプリティ裁判と同時期に起こる
- ×患者の自己決定権を認めるならば両方とも同じ帰結だから許すべき (シンガー)
- ×生命の神聖さを尊重するならば両方とも同じ意図だから認めるべきではない (キーオン)
- (www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/~kodama/news/pretty.htmlを参照)
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