15. 快と苦は、疑いの余地なく実在物である。 それらの存在に関しては、身体や精神の存在よりも証拠が直接的である。
23. 定義により、唯一の説明の様式とふつう理解されているのは、 類と種差による定義である。(この語の説明)
27. 例えば、「特権」と「免除」の直接的な上位の類は、「権利」である。
29. 例えば、「権利」。権利とは何か? 答: 一つの権利とは一つの何ものでもない。 それを区別する類はその上にはない。 [「一匹の猫は、一匹の哺乳類である」という風には言えない、ということ]
38. [サンクション] 苦と快の源泉、 それゆえ動機の源泉: 1. 政治的、法的なものも含む; 2. 民衆的ないし道徳的; 3. 宗教的; 4. 共感的; 5. 物理的。
40. 2. 動機が義務を構成するとみなされるのは、 その動機が普及することが是認をもって認められる場合だけである。
41. 3. 単なる物理的な[サンクション]だけでは、 義務が構成されるとみなされない。 やけどする苦痛に対する恐れは、普通の場合、 人が手を火の中に突込むのを思いとどまらせるのに十分である。 しかし、彼がそうしない義務を負うどころか、 たとえば妻か息子を救うためなど、 ある場合においては彼はそうする義務を負っているとみなされる。
46. 義務は反対の方向に働く異なるサンクションを形成する。 どちらの方向に正の規則はあるのだろうか? この種の事例が畑全体にばらまかれている: それらの事例は、劇作家と道徳家のたくわえの大部分を形成している。 それを決めるために、 まともな規則が誰かによって定められたことはほとんどなかった。 自分の利益と先入観に最も適う側を人は支持してきた。 理由として、強い表現--すなわち、 反論者に対して憎しみや軽蔑をもたらすのに役立つこと。[?]
52. 行為の動因、すなわち意志に直接に適用する; 知性を通じての同上については、(12)動機を見よ。
54. 動機に対してのみ、「行為の動因」は直接に適用できる;
他のものに対しては、それらが動機になる限りにおいてである。
心理の動力学--その基礎; 同上の感情学。
「快」はそれらの同意語である。それらに関する精神の状態。
「苦」はそれらの同意語である。それらに関する精神の状態。
56. 原初的。
これらから派生的なものが生じる。
原初的な快苦、すなわち| |は、
知覚に伴なうもの、あるいはその| |結果である。
感覚は1. 物理的; 2. 心理的。
57. 派生的な快が生じるのは: すなわち、記憶によって、 あるいは想像によって。
60. 快が行為の動因であるのは、 行為がそれを獲得する手段としてみなされる場合に限る --そして苦に関してもそうである、 獲得を回避で差し替えれば。
69. 快苦、すべての行為の動因の基礎。 快苦は動因なしで存在する; 逆は真ではない。
70. 動機は、必要かつ唯一の直接的な動因と仮定される: しかし快あるいは苦なくしては、 動機は明晰な観念を与えない。
73. いかなる行為も利害関心のないものではない、 というのもすべての動機に利害関心が対応するからだ。
74. 利害関心のなさdisinterestednessということは、 (それが誠実に用いられたとき) 自分に関する利害関心の欠如 --おそらく名誉への関心あるいは神への恐れは除かれる--を意味してきた。 両者とも自分に関するものである、 ただしおそらくそのようには考えられていないが。
77. 共感の場合、自分に関する場合と同様、 「利害関心」という語が必要である。 そこで実践では: 「わたしは彼の運命に強い関心を持つ」。
79. これらの判断で世論裁判所、 すなわち道徳的ないし民衆的サンクションの力は構成されている。 そうした判断の表明によって、 人は自分がその裁判所において持つ票を入れ、 それによりできるだけたくさんの他の票を集めようとする。
99. この誤った言葉使いから生じる実践的な誤り--すなわち、 刑法の手続きにおいて。1. 悪い動機のゆえに訴追者を除外する。 2. 利害関心のゆえに証人を同上。
108. そのような場合、「悪い動機」は常に復讐を意味する。
110. 刑罰が善いのであれば、訴追もそうであるはずだ。 このことを否定することは、 目的を是認するが、 議論の余地のない手段を否認することである--はなはだしい自己矛盾。
111. 反論。 善くて適切な動機は公共心などである; これらのみが人を行為に駆り立てる動機となるべきである。
112. 答。刑罰と訴追に関しては、 これらが動機である場合も、復讐心が動機である場合も、 結果の善さは変わらない。
113. どの動機が、どの程度共同して作用したかを知ることは不可能である。
129. 悪い動機はない、というのも: 1. いかなる悪い快も、いかなる悪い[苦からの]免除もないから; 2. 悪い帰結を持ちえない動機はないから。 例: 1. 名誉への関心から、子殺し、証人殺しが起きる; 2. 敬虔から、訴追が起きる; 3. 共感から、殺人が起きる、など。
133. 共感は、もしそれが多数に抗して少数のために用いられたなら、 反感と同じくらいの害悪を生み出しうる。
134. 結論: 帰結が考慮に入れられない限り、 「善い」そして「悪い動機」は、 誤りを教えることなくして言うことはできない。
142. 帰結、傾向、意図、そしてそれゆえ行為についてのみ、 善さと悪さを適切に述語とすることができる。
144. 意図に適用されたものとしての善さや悪さについての話は、 表現が不正確なわけではないし、事実において誤っているわけでもないが、 やはり重要ではない。
148. 動機における悪さに対応するのは、 利害関心における邪悪さである。
152. 政治的および民衆的サンクションの領域における例。 刑罰が課せられる行為および不名誉な行為は邪悪な利害関心の結果である。
156. すべての機会において、 行為は動機とそれに対応する利害関心 の絶対的な命令の下にある。
157. --必然性または自由意志 のいずれの語句が用いられるにせよ。
158. 善い動機: 人がそれによって最も影響されていると思われるのを一番好むもの。 悪い: その逆。 これが最も一貫した定義である。
161. そこで、 党派[争い?]やその他の論争において、 同一の行為が異なる人によって異なる動機に帰せられる。
162. 例。現実に作用している動機との関係で、 善い動機と想定されるものは隠蔽的coveringな動機と呼ばれる。 [ここらへんの隠された動機の暴露はニーチェを思わせる--背後にある動機]
216. 直接的に敵対する: 禁欲主義
217. 間接的に敵対する: 独断主義ipsedixitism、 現にある、あるいは偽りの感覚や感情を、 功利主義に反して行為する義務とさえいえるもののための十分な理由として提示する: 計算を放棄し、快苦に関する帰結を軽視する。
231. 功利主義--功利主義的哲学--功利主義の功利原理: 「最大多数の最大幸福に従って行為せよ」。→281
232. 感情主義--感情主義的哲学--感情主義的、 独断主義的原理: 「それに反して行為せよ」。 →282
304. 気まぐれないし根拠のなし空想の原理: この見出しに
655. 功利原理: 1. その批判的意味においては、 最大多数の最大幸福を、 唯一の普遍的な望ましい目的として主張する。
656. 2. その宣言的な意味においては、 各人の自分自身の幸福を、彼の唯一の実際の目的として主張する。
657. それゆえ、彼の行動に影響を与えるためには、 彼の幸福に影響を与えるのが、唯一の手段である。
658. 功利主義は、 道徳家と立法家の考慮すべき唯一の適切な目的として、 最大多数の最大幸福を掲げる。
659. そして、 いかなる個人をもその目的に向けて働くことに従事させることのできる 唯一の手段として、その当人の幸福を掲げる: すなわち; 彼に動機として機能するような利害関心を示すか作り出すかして、 彼がその目的に向けて働くことに従事させることによって。
660. 政治的権力を持たない一介の道徳家が、その立場で、 一般幸福を促進しうる仕方: 1. 存在している動機を示す; 2. 新たな動機を作り出す。
661. 私人である道徳家が、その立場で、 この目的に向かって機能する動機を作り出しうる性格: 世論裁判所の主要な成員としての性格で、 この目的に民衆的ないし道徳的強制力sanctionの力を適用する。
664. 幸福について言うと、幸福の唯一の要素ないし成分: 快楽(と苦痛から免れていること)。 ちょうど、ポンドがペニーで成り立ってるように。
665. 会計士たちは、 「ポンドがペニーで成り立っている」ことを何の問題もなく認める。
666. しかし道徳家たちは、 「幸福が快楽で成り立っている」ことをなかなか認めようとしない。
667. いかなる会計士も、 「ポンドは価値があるが、ペニーは価値がない」 などとおろかなことは言わない。
668.しかし多くの道徳家はじゃな、 「確かに幸福には価値があるが、 ある種の快楽には明らかに価値がない」 と愚かなことを言う。
669. こういう輩の幸福観はとても上品なもので、 いかなる快楽も幸福の要素にはならない。 彼らの食べるアップル・パイの中には、 マルメロ以外なにも入っていないに違いない。
696. [この一覧表は] 道徳と立法の唯一の真なる原理、 すなわち功利原理を、 すべての道徳的および政治的な目的に適用するための道具としての役割を果たす。 [the only true principle of Morals and Legislationと単数になっている]
697. 功利原理とは何か。 1. あるべきものを示す。 それは、 普遍的に望ましい唯一の対象ないし目的として、 最大多数の最大幸福を示す。
698. 2. (共感と反感がそれに対応する利害関心を持つことを認めて) あるものを示す。 それは、 各人のあらゆる行為の唯一の実際の対象 ないし目的として、彼自身の利益[利害関心]の促進を示す。
716. 「べし」あるいは「べきでない」といういうことによって義務を作り出せるなどと 考えたり、考えるふりをしてはならない: 否、上記の方法以外に義務を遂行する蓋然性を高められるなどと考えるな。
728. 道徳的義務ないし責務について、 彼は、これらの動機のうちに、唯一実際に機能する原因を見るであろう。
759. 当為学に関して言えば、すべての提案は次の点に関して一致する、 すなわち、それらの提案の傾向は、 未来のために現在を犠牲にすることを勧めるものである: というのも、もし現在のみが問題であれば、 これは当為学があってもなくても同じくらいうまくなされるであろうからである。
760. 功利原理に基づくならば、 提案される犠牲は、 より大きな善のためにより小さな善を犠牲にするものでなくてはならない: 当の行為者に関しては、いわば自己に関する自愛の思慮である; 他人に関しては、いわば善意である --すなわち、両者は直接的な目的に言及している。 究極的な目的としては、 いかなる人も自分自身の善以外のものを持つことができない。 というのも、彼の共感の快苦は他のものと同様、彼の快苦だから。
764.
781. 純粋に理論的であれば、 心理学はプッシュピンと変わるところがない。 しかしそれは実践的に適用可能である: 歴史、法、道徳に、目的、素材と道具を与える。
782. 心理学の諸部門: 1. Noology; 2. Aesthesiology; 3. Thelomatology。Aesthesiologyは心理学的感情学pathologyである。 Thelomatologyは心理学的力学である。
792.
796. 支配者の規則: 汝がなされたいことを、 それをするのがある人の利益になるようにせよ。
797. 道徳家の規則: 汝がなされたいことを、 それをするのがある人の利益になることを示せ。