真夜中のベンタム読書会第二夜

10/19/96の内容

参加者--江口さん、児玉


ご意見のある方は、kodama@socio.kyoto-u.ac.jpまたはメイルを送るまで。


 やあやあやあ、まさかまさかのベンタム読書会パート2。いやいや。二度あることは三度笠。こうなったらもうライフワークですっ。さあさてそれで今日はDavid Lyonsの "In the Interest of the Governed" (Clarendon Press Oxford, 1991)をテキストに使います。この本、改訂版でして、初版はベンタム全集が出始めた1973年に出されたの。そのため序文も二つあります。ライオンズ教授(以下寅さん)はニューヨークのカーネル大学の哲学教授兼法学教授なんですが、この人、某教授みたいに序文に結論を書くのが好きみたいだから、まず、その序文を見ていきましょうね。

まず、1972年に書かれた初版用の序文によると、この本は二つの大きなテーマを持ってる本なの。二つのテーマとは、ベンタムの功利主義を考察することと、彼の法理論を考えることです。寅さんが用いたベンタムのテキストは、前者については主に『道徳と立法の原理序説』、後者については例のよく知られていない『法一般について』です。この法理論についての考察は、ぼくの研究対象外なので、今回の読書会は残念ながら取り扱えません。また卒論書いた後にでもやりましょう。ええそうしましょう。

それで、寅さんがこの著作で何をするかというと、ベンタムの功利主義の新しい解釈を提示するってんだよね。どういう解釈かって言うと、ひとつは、ベンタムが「普遍主義者universalist」じゃなかったっていう解釈。この「普遍主義者」の定義については、後回しにします。寅さんはこの事についての証明は簡単だって言ってます。さらにまた寅さんは、ベンタムは二元的基準dual standardを持っていたっていうの。つまり、一方では公共的または政治的事柄においては社会の利益が正・不正の基準になり、他方では個人の利益が「個人の倫理」のための適切な基準になるっていうんです。これが二元的基準だってわけ。それでもって、この二元的基準はさらにひとつの基本的原理にまとめられるっていうの。その原理とはつまり、支配者governmentは、支配される者の利益に奉仕すべきである、っていうことなんです。さあ果たしてこういう結論が出るかどうか。寅さんの本文を読まなくっちゃなりません。

ついでに言っておくと、この序文の残りの部分には、ベンタムの法理論についての寅さんの結論だとか、ベンタムがいままでずいぶん不当な扱いを受けてきていたから・ベンタムの著作がより多くの人に読まれるようになるよう・あえてたくさんの反論が予想されるような解釈を寅さんは披露したんだとか、ハート教授やその他の人々どうもありがとうあなたがたの助力がなかったらこの本は出来なかったよだとか書かれています。


 と、書いていったが、まだまだ書いたが、煩雑なので省略。続きの実質的なところは読書会の第四回以降で。この本の要点は上の三段落目に書かれていることに尽きるようだ。この日は江口さんと(二人きりで)かなり遅くまでやった気がする。よく笑った。


おつかれさま


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 10/29/96
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