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そうじの寓話

あるいは、うそつきのクレタ人が自分の子供に「うそをついてはいけない」ということは正しいのかどうか


ぼくが中1の頃のことですから、もう十年も前のことであります。

まだけがれを知らぬ純真な児玉少年は、放課後にそうじ当番でせっせっせのよいよいよいとまじめにそうじをしていました。

そうじ当番といえば、いつの世にもサボるやつが数人いるわけで――こういうやつが大人になると選挙の日に投票に行かない人間に必ず育つのでありますが――、ふと見ると児玉少年の友だちの江口太郎さん(仮名)と奥田聡くん(仮名)が窓ぎわでほうきも動かさずに、HTML原理主義がどうのこうのとわけのわからぬことをだべっています(これも方言?)。

(ゆゆゆゆるさんっ)この頃からわけのわからぬ正義感を人一倍持っていた児玉少年は、彼らを見て超激怒し、しかしいつもどおりの低い物腰で注意したのでありました。

「え、江口さん(仮名)、奥田くん(仮名)、そうじサボっちゃあだめですよお」

江口さん(仮名)のこめかみがピクリ。

「なななにぃ。キサマこのおれに命令する気か?何をえらそうにコンチクショー。そういうおまえだってこの間そうじサボってたやんけ。キサマにそんなことを言う資格はないっ

(あ、しまったそう言えばこないだ確かにそうじをサボって隣りのクラスの友だちとしゃべってたんだった!おれには他人にそうじをさぼるなという資格がなかったのかっ。あ、あ、まずい、自己矛盾、じ、自我の同一性がっ。ばりばりばりばり)

「ち、ちきしょ、お、おぼえてろよっ」と捨てぜりふを吐き、児玉少年はその場からつたたたたっと走り去ったのでした。

(コノウラミハラサズニオクベキカ)

まじめな児玉少年はどうしたらいいのかしばらくわかりませんでしたが、あ、そうだ担任の先生の知恵を借りようと思い立ち、職員室へ駆け込んだのでした。

「か、加藤雅彦せんせっ(仮名)、ちょっとぼくの話を聞いてくださいっ」


さて、加藤先生(仮名)は児玉少年がどうすべきであるか、あるいは「かつてそうじをサボったことのある人間が、他の人にそうじサボらないようにと言う資格(権利)はあるのかないのか」(他の例をあげれば、「うそつきの人が他人にうそをつくなというのは正しくないのかどうか」)について一つの答えを提示してくれたわけですが、さてここで問題です。

あなたが加藤先生(仮名)であったら、児玉少年に対してどのようなアドヴァイスをしますか?簡潔に(目安としては50字以内で)答えてください。

一週間後に答えがたくさん集まっていれば、それらを検討し、あわせてぼくの意見も述べたいと思います。


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 11/29/96
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