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腎臓の働き:体液の調節

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腎臓には体液の量や組成を一定に保つ働きがあります。

1) 体内の水分(体液)の調節役

2) 体液の調節のしくみ

3) 電解質とは?

体内の水分(体液)の調節役

"口"という入口からさまざまな物が流れ込みます。この内、不要な固形物は便として、余分な水分やこれに溶けている物は尿として水槽の外に捨てられ、水槽の中身は常に一定に保たれています。

我々は毎日、なにげなく飲み食いしていますが、体重はほとんど一定に保たれていることでもわかると思います。

また、体の中のすべての細胞は、これを取り巻く液体(細胞外液)に保護されて生きているわけですが、細胞外液の塩分などの"電解質"の濃度が少しでも変化すると細胞は生きていけません。通常、体内の水分(体液)は体重の約60%です。50kgの体重の方なら30リットルが水分です。この内、さらに2/3、すなわち約20Lが細胞の中に存在し、残り10Lが細胞外にあります。腎臓はこの10Lの細胞外液の量と組成、特に電解質を調節しているわけです。

別の項で説明する老廃物の代表である尿素を例に上げると、腎不全の患者さんの尿素の濃度は正常の10倍にも上昇します。そろそろ透析が必要な状態ですが、すぐに命にかかわることはありません。それよりも電解質はより重要です。例えば、Naがたった10%だけ急激に低下すると(正常140→126mEq/L)、意識が無くなることもあり、カリウムが2倍に上昇すれば(正常4→8mEq/L)、重篤な不整脈の原因となって命を落とす危険があります。

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体液の調節のしくみ

腎臓の最も重要な働きは、細胞外液の量や成分(特に電解質濃度)を一定に保つことです。ではどのようにしてこのような調節を行っているのでしょう?

"口"から入った食事に含まれるさまざまな成分の量に応じて、体中に張り巡らされたセンサーがこれを感知し、これがいろいろな経路で情報として伝わり、様々な臓器からホルモンなどが分泌されます。これらのホルモンは最終的にネフロン、特に尿細管に作用して、尿に排泄される成分の量が決まるわけです。これによって細胞外液の量や電解質の濃度が一定に保たれます。人間の体の中にはさまざまな調節機構が働いていて、外気温が大きく変動しても、脳に精密なサーモスタット(温度感知装置)が付いていて、体温がおおよそ36.5度に保たれているのと同じです。

例えば水をたくさん飲んだとすると、血液の濃度(浸透圧)が低下します。この情報は脳のある部分でキャッチされ、抗利尿ホルモンの分泌が低下し、尿細管に対する作用が抑えられ、水分の再吸収が減少し、うすい尿がたくさん出ます。逆に水分を制限すれば、抗利尿ホルモンの分泌が亢進し、水分の再吸収が亢進し、濃い尿が少ししか出ず、体内の水分を調節しているわけです。これはすべての電解質にも当てはまり、細胞外液の電解質濃度が、体温が一定に保たれるのと同様に保持されるわけです。

なぜ、1日に170リットルもの血液が糸球体で濾過される必要があるのでしょうか?これは水分や電解質の調節できる幅を広くするためです。現在のように、ほとんどの人は毎日3度の食事を取ることが普通ですが、大昔の人類、あるいは今でも野生の動物にはこのような保障が有りません。2−3日飲まず食わず、という事もあるでしょうし、逆に食べ過ぎたり、飲み過ぎたりすることもあるでしょう。しかし、このような場合でも、細胞外液は常に一定に保たれる必要があり、進化の過程でこのような調節能力の大きな動物(人間も含めて)だけが生き残れたのでしょう。

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電解質とは?

ところで電解質とはなんでしょう?化学の時間に学んだことがあるでしょう。

電解質というと医者でも"ニガテ"という人が多いのですが、ここでは簡単に説明をします。血液に溶けている塩類(塩分、カルシウム、カリウムなど)を電解質と呼びます。体液に溶けると、電気的にプラス(+)かマイナス(−)の性質を持つためです。それぞれプラスイオン、あるいはマイナスイオンと呼びます。

例えば、塩(NaCl)を水に溶かすと、Na+とCl−に1本の手を持ちながら分かれます。一方、カルシウムはCa2+と書かれるように、2本のプラスの手を持っています。ある物質はほとんど手を離しながら水に浮かんでいますが、手をつないで水に浮かんでいるものもあります。たとえば、Ca2+の約半分は血液のタンパク質(マイナスの性質を持つ)と手をつないだ形で水に溶けています。いずれにせよプラスとマイナスの総数は等しいのです。

一般に水に溶けている物質の濃度を表す場合、例えば1リットルに何グラムというように表現されますが、電解質の場合、プラスとマイナスの手の数で表した方がわかりやすいわけです。つまり血液にはNaが1リットルに3.26g、Clが 3.62g溶けている、というより、Naが142本のプラスの手を持ち(142mEq/L;ミリイクイバレント/リットル)、Clが104本のマイナスの手を持っている(104mEq/L)というように、手の数で表現したほうがいろんな面で便利なのです。したがって通常、電解質の濃度は手の数(mEq/Lという単位)で表します。しかし、Caのように約半分がタンパク質とくっついている場合、残っている手が何本あるかがわかりません。そこでCaに関しては、1dlに何mg含まれているかという表し方と(正常では10mg/dl)、すべての手の数で表す方法とが(正常では5mEq/L)用いられています。

いずれにせよ細胞外液の電解質の濃度は細胞が生きていくために非常に重要な要素です。腎臓が正常であれば、飲み食いによって口から入る量に関係なくこれらの濃度も一定に保たれています。興味あることに人間の細胞外液の電解質濃度は、数十億年前に生命が誕生した当時の海水の組成(現在の組成はかなり異なっており、例えば塩分の濃度は約3倍になっている)に似ていると言われています。我々すべての生物は今でも体の中に同じルーツを持っているわけです。

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